子どもには冒険活劇として、大人には哲学書として読める『ドラえもん』
新型コロナウイルスによる社会の変革、仕事の規模の縮小、SNSによる相互監視社会の窮屈さ……多くの人々が疲れ切っている今の時代。そこで、注目されているのが、藤子・F・不二雄の作品『ドラえもん』(小学館てんとう虫コミックス 全45巻)です。
1970年に小学館の学年誌6誌で連載が始まったこの作品は、今年50周年を迎えました。その魅力は歳月が流れるとともに、輝きを増す……読み直して〝すごさ〟に驚く人が多いんです。
ドラえもんの秘密道具を使用しても、人は結局変わらない。人が変われるのは自分の努力や、他者からの気付きであることなど、大人になってわかるメッセージが、『ドラえもん』には込められているんです。そして、人は結局「一人では生きられない」ということもわかります。子どもには冒険活劇として、大人には哲学書として読める作品なのです。
2019年11月に23年ぶりの新刊と話題になった『ドラえもん』の〝0巻〟は63万部という大ヒット!2020年8月6日に劇場公開された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の初週に動員ランキング1位を記録しました。
〝のび太〟は今の時代に求められている男子の理想形!?
『ドラえもん』は多くの魅力的な登場人物が出てきますが、多くの人が自分自身を投影するのが、勉強もスポーツもてんで振るわない〝のび太〟でしょう。
彼は人付き合いも、趣味も、何をやってもダメ。友達やドラえもんからも「やる気がない」「根気がない」などと言われ、親や先生からはよく叱られています。
それでも、性格は明るくのんびりとしており、細かいことにこだわらず、時にはずるいところもありながらも、基本的に優しさにあふれている……まさに、今の時代に求められている男子の理想形!?
そこで注目なのは、9月3日に発売された新刊『人生を変える『ドラえもん』セレクション おとなになるのび太たちへ』(1,400円+税、小学館)です。
これは、夢をかなえた10人の著名人が、これからおとなになる子どもたちへ、人生の道しるべにしてほしい作品を紹介するアンソロジー。
夢をかなえた彼らが、子どもに伝えたいエピソードの入った『ドラえもん』の作品を選び、作品に付随して、自身の生き方、この時代に生きる子供たちへのメッセージをエッセイにして掲載しています。
登場する著名人も、『ドラえもん』ならではの豪華さで、一例を挙げると、アート集団チームラボ代表・猪子寿之さん、俳優・菅田将暉さん、チャンネル登録者数168万人の人気YouTuber・はなお(はなおでんがん)さん、人気声優・梶 裕貴さん、宇宙飛行士・向井千秋さんなどなど。
彼らのおすすめ作品、そして若き日の思い出を知ることができるんです。コミックとエッセイと両方読めるので、一粒で二度おいしい一冊なのです。
他にも、中学生のなりたい職業の代表格である、eスポーツプレイヤー、小説家、プロラグビー選手も登場。もう私たちの子ども時代とは、子どもの夢も違う……子どもと夢を語り合うのにもピッタリ。
一方で、今、多くの子どもたちが生き方を模索しています。コロナ時代にはより顕著になっており、2017年に発売された『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス、吉野源三郎・原作、羽賀翔一・マンガ)は、4か月で100万部を突破し、今また人気が再燃。そして、今年発売の『なぜ僕らは働くのか-君が幸せになるために考えてほしい大切なこと』(佳奈・著、池上彰・監修、モドロカ・イラスト、学研プラス)がベストセラーになっています。
いずれも、押し付けられた幸せではなく、自分が心から幸せだと思って生きていきたい……という、親子の“願い”のようなものが現れています。
この、『人生を変える『ドラえもん』セレクション おとなになるのび太たちへ』は、自分の生き方を知り、夢をかなえ続けている人の思想に触れられる本。
きっとあなた自身の、そして子どもの幸せのヒントが見つかるはず。自由でのんびりしているのび太に自分を重ね、この窮屈な世の中と時代を、軽やかに生きていきましょ!
まんが/藤子・F・不二雄 小学館刊
本体1400円+税
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文/前川亜紀