〝女性軽視は許さない!〟声を上げる女子高生たちへの共感度120%
物語は、新学期早々アメフト部の主将・ミッチェルをはじめ男子達が女子生徒に対して「一番ヤリたい女子」や「最高のおしり」などランク付けしているのを、シャイな女子高生のヴィヴィアンと親友のクラウディアが目の当たりにするところから始まります。
そういった学校での性差別や女性軽視、生徒たちの顔色を伺う男性教師にうんざりしているヴィヴィアンですが、控えめな性格のため黙ってやり過ごす日々を送っていました。ところがある日、ミッチェルに対して堂々とした態度で歯向かう転校生のルーシーや、フェミニズム運動をしていたという母の思い出話などに感化されたヴィヴィアンは、匿名で性差別問題などを提起する内容を書いたZINE(冊子)「モキシー」を作成し、コピーしたものを学校のトイレに置きます。すると、「モキシー」を読んで賛同した女子生徒達が少しずつ連帯し始め、これまで黙って見過ごしてきた性差別問題に声をあげていき……と、あらすじを書いてるだけでめちゃくちゃ元気が出てきました(笑)。
この作品の好きなところは沢山ありますが、ネット社会の現代で、革命のきっかけが手作りのZINEというところが一番グッとくるんですよね。そのZINE(モキシー)をヴィヴィアンは匿名でやっているので、みんなモキシーの主導者が誰か知らないまま校内でのフェミニズム運動が盛り上がっていく展開にもワクワクです。
そういえば筆者が学生の頃、同級生の女の子で好きなバンドやアイドルのZINEを作ってた子がいたんですが、今で言う“推し”を学校中にプロモーションしていて素敵だなと思った記憶があります。“ZINE=青春の想い出”とか最高ですよね!
シュワちゃんの実の息子が最低最悪のクズ男を熱演
フレッシュなキャスト陣も魅力的で、主人公のヴィヴィアンを演じるのはAmazon Prime Videoで配信中のドラマ『ユートピア~悪のウイルス~』や映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』に出演したハードリー・ロビンソン。内気なキャラからだんだん自分らしく生き生きとした表情に変化していくヴィヴィアンを好きにならずにはいられません!
親友のクラウディアは『テラスハウス』で一躍有名になり、外国語ドラマ『レギオン』にも出演したモデルで女優のローレン・サイが演じています。そして転校生のルーシー役を期待の新人女優アリシア・パスクアル=ぺーニャ、声をあげる女子高生の一人キエラ役を『ウォーキング・デッド』でシンディを演じたシドニー・パーク、そしてアメフト部キャプテンのミッチェル役を、なんとアーノルド・シュワルツェネッガーことシュワちゃんの息子パトリック・シュワルツェネッガーが演じているんです!パトリック自身は爽やかなハンサムガイですが、最低最悪のクズ野郎ミッチェルを熱演しているせいで全く魅力的じゃないのが残念…。
ちなみにYUIさん主演の『タイヨウのうた』のハリウッドリメイク版『ミッドナイト・サン〜タイヨウのうた〜』でベラ・ソーンと共に主演を務めていて、この作品のパトリックは間違いなくカッコいいです。
本作にはダメダメ男子ばかりが登場しますが、唯一素敵だったのが、ヴィヴィアンの一番の理解者で、自身もフェミニズム運動に賛同するセス。演じているのは日本人&白人の両親をもつスケーターで俳優のニコ・ヒラガ。彼の優しい眼差しと紳士な態度にめちゃくちゃ癒されます。Netflixで配信中の映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』にもスケーター役で出演しているのですが、そちらも面白いのでオススメです。
そして、ヴィヴィアンの母リサ役を演じたのは、コメディ映画『ミーン・ガールズ』や『俺たちフィギュアスケーター』などに出演しているエイミー・ポーラー。彼女は本作の監督も務めているのですが、シングルマザーのリサと難しい年頃の娘ヴィヴィアンとの関係性をきっちりと丁寧に描いているところに彼女の誠実さを感じました。
フェミニズム運動やシスターフッドを描いた他の作品も要チェック!
世界的に#MeToo運動が広がるなか、日本でも少しずつフェミニズム運動に賛同する人達が増えていて、最近だと某人物による発言に対して「#わきまえない女」と呟くことで連帯するなど“これ以上、女性への失礼で差別的な発言には黙っていないぞ!”という声も沢山あがっていました。
筆者は若かりし頃に一般企業で派遣社員をしていた経験があり、上司(男性)のお茶を入れるのは当たり前、セクハラ発言は笑ってスルーなど、いま思えば“なんであのとき声をあげなかったんだろう”と過去に我慢してしまったことをめちゃめちゃ後悔しています。そんな思いを女の子達にさせないためにも“いつだって声をあげてもいいんだよ”と応援する気持ちで本作をご紹介しました。
これまでにも酷い扱いを受けていた女性達が連帯して凶悪な支配者に立ち向かう『マッドマックス 怒りのデスロード』や、様々な境遇の女性達が男たちに立ち向かっていくDCコミックの映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』、アメリカで実際に起きた女性キャスターへのセクハラ騒動を描いた『スキャンダル』、アメリカ合衆国最高裁裁判所の判事として女性の地位向上に貢献したルース・ベイダー・ギンズバーグの生涯を描いた『RBG 最強の85歳のドキュメンタリー』など様々なフェミニズム映画が作られていて、どれも大好きな作品です。
ただ、本作のような高校が舞台の青春ものは凄くパワフルで、観るだけで元気を貰えるんですよね。日本でもこういう映画やドラマがどんどん作られたらいいなと思います。きっと学校や会社で性差別にうんざりしている女性も多いと思うので、この映画を観て日々のモヤモヤを吹き飛ばしてみてはいかがでしょうか。
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奥村百恵
音楽誌・映画雑誌の編集部を経て、現在はフリーのライターとして年間300本以上は観ている映画や海外ドラマなどのコラム執筆や海外・日本の俳優のインタビュー記事などを担当。愛犬と一緒にNetflixの作品を観るのが至福の時間!!