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「当社」
「当社」は尊敬語でも謙譲語でもなく、丁寧語です。そのため、自分の会社内の会議や社内セミナーなどで使用します。基本的に社内で「自分の会社」を表現する際は「当社」を使って問題ありません。上司が相手であっても「当社」で大丈夫です。
例文
・当社の新企画について、意見がある人は発言をお願いいたします
・当社製品をご利用いただき、誠にありがとうございます
・当社は、本日より新製品『〇〇』を発売いたします
「弊社」
自分の会社の顧客や、クライアントが相手の場合は「弊社」を使うのが望ましいです。「弊社」はへりくだった謙譲語なので、相手を高い位置に持ち上げ、敬うニュアンスが含まれます。
例文
・弊社のサービスをご利用いただき、誠にありがとうございます
・〇〇株式会社の者です。この度は、弊社の新サービスにご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます
・弊社は、貴社との業務提携を心より歓迎いたします
「自社」
「自社」は「弊社」のような謙譲語ではありません。「当社」と近い意味を持ちますが、基本的に「自社」は単体で使われることが少なく、付属的に使われます。「自社製品」や「自社サービス」など、「自社」の後ろに単語を付けて使う場合が多いです。
例文
・自社製品に関するご相談やお問い合わせはお電話にて受け付けております
・来期の目標達成には、自社の強みを再認識することが重要です
・競合他社と比較して、自社の〇〇に課題があります
「現職」「今の勤務先」
先述した「ビジネス等で使う時の注意点」のおさらいになりますが、転職時の面接などでは「弊社」や「当社」といった言葉に違和感を抱く面接官が多いので、使わないようにしましょう。また、履歴書に記載する際も「現職」や「今の勤務先」などと表現することをおすすめします。
例文
・現職では、マーケティング部に所属しております
・今の勤務先での経験を活かして、新しい分野に挑戦したいと考えています
【実際の体験談】ビジネス等で使う時の注意点
実際のビジネスシーンで「自社」「弊社」などを使い分ける場合、どのような点に気をつければよいのでしょうか。紹介する体験談を踏まえつつ、注意点を見ていきましょう。
【episode1】「自社」で信頼を勝ち取った、上司の鮮やかな駆け引き
Nさん(管理職、38)
若手の頃、私は上司に同行して、新規クライアントとの大きな商談に臨みました。商談が佳境に入った時、クライアントから厳しい価格交渉が入りました。u003cbru003eu003cbru003e私は頭の中で「弊社としては~」と答えを考えていましたが…上司は「自社の製品に絶対的な自信があるからこそ、この価格を提示させていただいております」と、毅然と答えました。会議後、私は「なぜ『弊社』と言わなかったのですか?」と尋ねると、上司はu003cstrongu003e「この商談は対等なパートナーシップを築くためのものだ。謙遜しすぎると、かえって弱腰に見られてしまう。相手に敬意を払いつつも、自社の価値を堂々と伝えることが重要だった」u003c/strongu003eと教えてくれました。u003cbru003eu003cbru003eこの経験が、私のキャリア観を大きく変えました。u003cstrongu003e言葉使いは相手への敬意を示すだけでなく、自社の価値や信念を伝えるための戦略的なツールにもなることを学んだのです。u003c/strongu003eそれ以来、私は言葉を選ぶ際、相手にどんな印象を与えるかを深く考えるようになりました。
【episode2】転職面接の落とし穴。「わが社」が招いた痛恨の失敗
Tさん(管理職、36)
今から10年以上前、私がまだ転職活動をしていた頃の話です。ある面接で、面接官に「前職での成果を教えてください」と聞かれました。当時の私は、前職への愛着が強く、ついつい「我が社では〇〇というプロジェクトを成功させ…」と答えてしまいました。u003cbru003eu003cbru003e面接官は私の話を聞き終えると、厳しい表情でu003cstrongu003e「『我が社』という言葉から、まだ前職への強い帰属意識を感じます。当社でのキャリアを本当に考えているのか疑問です」u003c/strongu003eと指摘。私はその一言で、面接が失敗に終わったことを悟りました。u003cbru003eu003cbru003e転職面接では、前職を語る際に「現職」や「前の勤務先」といった客観的な言葉を使うのがマナーです。u003cstrongu003eこの苦い経験から、私は状況や相手に合わせた言葉選びの重要性を痛感しました。u003c/strongu003e今では部下を指導する立場として、言葉の持つ力を正確に理解し、使い分けることの重要性を伝えています。
社外メールと社内メールでの自分の会社の呼び方
自分の勤めている会社を表す言葉の使い分け方は、会話もメールもほとんど同じです。
メールの相手が取引先の場合は「弊社」を使いますが、同じ会社の人が相手の場合は「当社」を使いましょう。社外向けの場合は「弊社」、社内向けの場合は「当社」と、相手との関係性によって使い分けます。
例文
【社外向け】
件名:資料送付のご案内
〇〇株式会社 営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。 株式会社〇〇の〇〇です。
先日は、弊社のサービスにご興味をお持ちいただき、誠にありがとうございます。
ご要望いただきましたサービス概要資料を、本メールに添付いたしました。 ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【社内向け】
件名:新プロジェクト進捗のご報告
関係各位
お疲れ様です。〇〇です。
先日より始動いたしました新プロジェクトの進捗についてご報告いたします。 当社の技術チームが、すでにプロトタイプの開発に着手しております。
来週には、改めて全体会議を開き、今後のスケジュールについて共有する予定です。 ご多忙の折、恐縮ですがご参加いただけますと幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
また、メールでのやり取りなので書き言葉を使うようにしましょう。したがって、相手の会社について述べる際は「御社」ではなく、「貴社」を使います。
自分の会社の呼び方は、取引先など社外向けは「弊社」、社内向けは「当社」を使います。
相手の会社の言い方もチェック
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自分の会社だけでなく、相手の会社の言い方も正しいかどうか不安になることはありませんか? この機会に、相手の会社の言い方までしっかりと押さえて不安を解消しておきましょう。
御社
「御社」は「おんしゃ」と読みます。「御社」の「御」は尊敬を表す接頭語です。「御社」が使われる場面ですが、「御社」は、主に話し言葉で用いられます。面接などで相手の会社について述べる際は、マナーとして「御社」を使うようにしましょう。
例文
・御社の事業内容に深く感銘を受け、志望いたしました
・御社のご担当者様は、本日いらっしゃいますか
・御社が抱えている課題を、ぜひお聞かせいただけますでしょうか
貴社
「貴社」は「きしゃ」と読みます。「御社」と違うところは、「貴社」は主に書き言葉として使われるという点です。「貴社」という言葉は、「汽車」や「記者」「喜捨」など同音異義語が多く、会話で使うと混乱することから、話すときには使わない方がいいでしょう。
しかし、この言葉の使い道は会社に限定されません。組織や団体などについて述べる時にも使うことができるので、汎用性の高い言葉といえます。
例文
・貴社のサービス資料を拝見し、ぜひ一度お打ち合わせのお時間を頂戴したく存じます
・本契約書は、貴社と弊社との間で締結されるものとします
貴館
「貴館」は「きかん」と読みます。「貴館」は「御社」や「貴社」と使う対象が異なるのです。「貴館」は、相手が会社ではなく、美術館や博物館、水族館など主に「館」のつく建物に尊敬の意味を込めて使うことができる言葉です。
「館」がついても、「御社」や「貴社」が使える場合もあります。例えば旅館の場合、敬称は「貴館」ですが、旅館経営の多くは会社組織ですので「御社」や「貴社」を使っても間違いではありません。
例文
・貴館で開催される特別展について、詳細を教えていただけますでしょうか
・貴館の蔵書検索システムを、より使いやすくするために改善を提案いたします
よくある質問
「自社」や「弊社」など、自分の会社を表す言葉は、使う相手や状況によって使い分ける必要があります。それぞれの言葉が持つニュアンスや、適切な使い方を解説します。
Q. 「自社」と「弊社」の違いは?
「自社」は、社内外問わず使える客観的な表現です。一方、「弊社」は社外の人に対してのみ使う、自社をへりくだる謙譲語です。したがって、取引先や顧客に対しては「弊社」、社内会議や同僚との会話では「自社」を使うのが一般的です。
Q. 「自社」と「当社」の違いは?
「自社」が客観的な表現であるのに対し、「当社」も社外の人に対して使う謙譲語です。「弊社」と同様に自社をへりくだりますが、より公式な文書や硬い場面で使われることが多い「弊社」に対し、「当社」は話し言葉でも書き言葉でも広く使われる、やや柔らかいニュアンスを持ちます。
Q. メールで自分の会社の言い方は?
取引先宛ならば「弊社」、同じ会社の人宛なら「当社」です。つまり、メールの相手が社外か社内かによって言い分けるだけで、誤解なく丁寧に自社を表現することができます。また、文章の中で自社製品やサービスを客観的に紹介する場合は、「自社」という表現を使うことで、謙譲や丁寧のニュアンスを抑えて中立的に伝えることも可能です。
最後に
- 「当社」と「弊社」は社外向けの謙譲語。「弊社」は「当社」より丁寧なため、初対面の際や重要な場面で用いる
- 「自社」は社内外で使える客観的な表現で、製品やサービスを指す際によく使われる
- 転職活動では「現職」や「今の勤務先」を使い、「当社」「わが社」は使わないのが適切
今回は、自分の会社や相手の会社の表し方や、使い分けについて解説しました。それぞれ少しずつニュアンスが異なるので、使う相手や場合によって使い分けることが大切です。ビジネスシーンでは信用や印象に関わる非常に重要なマナーですので、これを機に正しく使えるようになりましょう。
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けた「明日」も楽しむライフスタイルをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれも美容も仕事も楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッションのみならずライフスタイルやビジネス・デジタルスキルにも関心が高いエディターたちを通して発信中。https://domani.shogakukan.co.jp/