「上役」は自分より地位や役職が上の人を指し、正しい読み方は「うわやく」です。
Summary
- 「上役」とは自分より地位や役職が上の人を指す言葉で、読み方は「うわやく」です。
- 「上司」よりも広い意味を持ち、立場が上の人全般に使われますが、場面や社風によっては不適切な場合もあります。
- ビジネスメールなどで「上役」を用いる際は、相手との関係性に注意し、より具体的な肩書きで表現する方が安心です。
ビジネスシーンで、さまざまな職場用語に出会うことがありますよね。その中でも、意外と意味があいまいな言葉のひとつが「上役」ではないでしょうか?
時折耳にするけれど、なんとなく曖昧なまま使っているという方も多いかもしれません。また、読み方や意味、使うべき場面を間違えると、思わぬ誤解を招くことも…。
そこで、この記事では、「上役」の正しい意味や使い方、ビジネスマナーとしての注意点を紹介します。
「上役」とは? 正しい意味と読み方を解説
一見して古めかしく感じる「上役」という言葉ですが、ビジネスの場では今でも使われることがあります。その読み方や基本的な意味をまず確認しておきましょう。

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「上役」の読み方と意味
「上役」とは、自分よりも地位や役職が上の人を指す言葉です。読み方は「うわやく」で、漢字のイメージから「じょうやく」や「うえやく」と誤読されがちですが、正しくは「うわやく」ですよ。また、古い文章では、「うはやく」と読み仮名が記載されていることもあります。
「上役」は、「上司」と似ていますが、「上役」はより広く、自分よりも立場が上の人全般を表す際に使われるのが一般的。「上役」は、具体的な役職を指す言葉ではなく、あくまで相対的な関係性を表す用語ともいえます。自分よりも地位や役職が上の人を指す言葉ととらえるといいでしょう。
「上役」はどのような場面で使われるのか?
「上役」は、特に公務員や銀行、保険業界など、階層構造が比較的明確な組織で使用されやすい言葉です。製造業の本社部門やいわゆる老舗企業でも使われることがありますよ。
例えば、「その決定は、上役の判断次第ですね」など、会議などで聞く機会があるかもしれません。
「上役」を使わない方がいいときも
筆者の知人である40代の女性が、長年勤めた企業からIT系のスタートアップに転職した際のこと。前職で当たり前のように使っていた「上役」という言葉を、新しい職場で何気なく使ったところ、直属の上司から「その言葉はやめてほしい」と言われたそうです。
驚いて理由を尋ねたところ、「上役って言葉、なんだか堅苦しい響きがあるし、先進的な印象を出したいうちのブランディングに合わないんだよね」と返されたとのこと。
つまり、他社では日常的に使われる言葉でも、フラットな文化を重んじる会社では、ネガティブに受け止められる場合があるということですね。この女性は「そんなに反応されるとは思わなくて、びっくりしました」と戸惑いを隠せない様子でした。
上役は、悪い言葉ではないものの、最近では、あえて使わないという選択をしている企業や人もいることを知っておくと安心でしょう。

「上役」と「上司」「役員」の違いとは?
似たような場面で使われる言葉に「上司」や「役員」がありますよね。ただし、それぞれの言葉には微妙なニュアンスの違いがあります。ここでは「上役」との違いを見ていきましょう。

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「上役」と「上司」は同じ意味なのか?
辞書的には、「上役」は「上司」と同じ意味として記載されていることが多く、厳密に区別されているわけではありません。
ただ、実際には微妙にニュアンスが違うこともありますよ。まず、「上司」は直属の指揮命令者を指す一方で、「上役」はより広く、立場が上の人全般を指す表現です。
また、「上司」は、ビジネス上一般的な言葉ですが、「上役」は、業界や社風によってはあまり使われないこともあり、上司と比べると、解釈に差が出やすい表現ともいえそうですね。
「上役」と「役員」はどう違う?
「役員」は会社法上の立場を持つ取締役や監査役を指しますが、実務上は「執行役員」なども広く役員と呼ばれることがありますよ。執行役員は会社法上の役員ではありませんが、職責の大きさから、社内外では役員的に扱われるケースも多いでしょう。
一方で「上役」は、そのような法的・制度的な枠を超えて、自分より立場が上の人をまとめて指す言葉。つまり、課長も部長も執行役員も、部下にとっては「上役」になり得るということですね。
「上役」と「管理監督者」の違い
「上役」は、労働基準法上の「管理監督者」とは必ずしも一致しない点にも注意が必要でしょう。「上役」は、ビジネスシーンにおいて口頭でよく使われる表現で、自分より立場が上の人を広く指す言葉です。
一方、「管理監督者」とは、労働基準法上、会社の経営に近い立場で働く人を指し、労働時間や休憩、休日などの規定が一部適用されない特別なポジションを指す言葉。
ただし、「部長」や「課長」といった肩書があるだけでは、必ずしも管理監督者に該当するとは限りません。実際には、労働条件の決定に関わっているか、働き方に裁量があるか、出退勤が自由にできるかなど、実態で判断されますよ。
つまり、「上役」と呼ばれている人たちでも、「労働基準法上の管理監督者」とは限らないということですね。
参考:厚生労働省リーフレット「しっかりマスター労働基準法|管理監督者編」
「上役」の適切な使い方とビジネスマナー
「上役」という言葉は便利な一方で、使い方を間違えると相手に違和感を与えることもあります。特に敬語表現やメール文面での使用で気をつけたいポイントも見ていきましょう。

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「上役」という言葉は敬語表現として適切?
「上役」という言葉は、一見すると丁寧に聞こえますが、敬語表現としてはやや注意が必要な言葉でしょう。確かに目上の人を指す言葉ではありますが、本人に対して直接使うにはやや形式ばっており、他人行儀な印象を与えることがあるからです。
また、目の前の相手に直接使うのは、人によっては失礼と感じられることもあるかもしれません。
なお、最近では、「部長」「マネージャー」「〇〇さん」など、より具体的かつフラットな呼び方のほうが好まれることもありますので、社風に合わせて使い分けることをおすすめします。
ビジネスメールで「上役」を使うときの注意点
ビジネスメールで「上役」という言葉を使う場合は、相手との関係性や文脈をよく見極める必要があります。
たとえば、「上役の判断を仰いでおります」などと記載すると、あいまいな印象を与えてしまうことも。「どの上司のことか不明瞭」「責任回避している印象」と受け取られることもあるので注意しましょう。
特にフォーマルなやりとりでは、「社内で協議のうえご連絡いたします」などの表現のほうがスマートですよ。

「上役」は、社風や相手に合わせて使い分けることが大切です。
最後に
- 「上役」は立場が上の人全般を指す相対的な表現で、「うわやく」と読みます。
- 「上役」はビジネス用語として便利ですが、本人に直接使うと違和感を与える場合があります。
- 業界や企業によっては、堅苦しい・上下関係を強調しすぎるなどの理由で使わない場合もあります。
この記事では、「上役」の意味や読み方、ビジネスマナーなどを解説しました。スムーズなビジネスコミュニケーションにも重要なキーワードですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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塚原美彩(つかはらみさ) 塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサルの傍ら、ポジティブ心理学をベースとした研修講師としても活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン
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