汗は美容液にもトラブルの元にもなる
「汗は臭う、恥ずかしいなどマイナスのイメージがありますが、実は汗の成分には、乳酸や尿素など天然保湿因子が含まれ、天然の美容液ともいわれています。しかし、じわっとかく程度の汗なら、天然の美容液になりますが、汗をダラダラかきすぎて、さらに、あとのケアをきちんとしないと肌トラブルの元になりますから注意が必要です。特に気温差が激しい今年は汗との正しいつきあい方が重要です」(吉木伸子先生 以下同)
汗は付き合い方によって美容液にもなるし、トラブルのもとにもなることから、正しい汗の知識を得ておくことが皮膚の健康につながるようです。
「汗のトラブルというとあせもを想像しますが、あせもと汗あれは違います。あせもは子どもに多く、汗を出す管が詰まった状態になりブツブツが出る症状で、かゆみはほとんどありません。大人に多くかゆみを伴うのは、汗あれです」
「汗あれ」は塩分など汗の成分によってかゆみなどの炎症を起こす
「『汗あれ』は、汗の成分が肌に刺激を与えることで起こります。乾燥や間違ったスキンケアによって皮膚のバリア機能が落ちているところに汗をかくと、自分の汗が刺激になってかゆみ、痛み、赤みを生じます。汗をかきやすい部分は首、髪の生え際、関節の内側(ひじの内側、膝の内側)、お腹のベルト周り、下着のあたる部分、背中、太ももの後ろなど。汗あれを防ぐには衣類を工夫して通気性をよくすると同時に、肌を清潔にし、保湿をすることも重要です」
「あせも」と「汗あれ」の違い
【あせも】
運動などで大量の汗をかいた際に、汗を排出する管が詰まったもの。
【汗あれ】
汗をかいた後、汗に含まれるアンモニアなどの成分が刺激になり肌があれ、チクチク・ピリピリと感じるもの。
「汗あれ」「あせも」危険度チェック
✔️ ほかの人より汗をかきやすい
✔️ 敏感肌だと思う
✔️ 日中は外回りが多い
✔️ 激しいスポーツをする
✔️ 冬でもよく汗をかく
✔️ 暑いところで作業する
✔️ サウナ等、汗をわざと出すことを頻繁にしている
✔️ 肌がかぶれることがよくある
✔️ 汗をかいてもそのままにしてしまう
✔️ 制服等で蒸れたり擦れたりしやすい服を着る
ひとつでも当てはまる場合は、注意が必要。
「マスク汗あれ」にも注意
マスクの着用によっても、汗あれが起こりやすくなっています。間違いやすいのはムレと肌の潤い。マスクの中は湿気が多いので保湿されていると思いがちですが、肌が潤っているということではありません。
「マスクの着脱でこすれるところや、マスクで覆われた部分にも、汗あれが起こりやすくなります。マスクをすることで、皮膚の角質層はふやけた状態になっています。マスクを外したとき、角質層の水分が蒸発して皮膚が乾燥し、皮膚のバリア機能の低下につながり、そこにマスクの繊維や汗の成分が刺激になり、マスク肌あれが起こります。マスク汗あれはケアを行わないと、ますます助長され、マスク汗あれスパイラルに陥ります」
対策1:汗をかいたらやらわかい布でふく。汗の放置はトラブルのもと
汗あれは、きちんと対策を行えば予防や改善が可能。まずは、汗をかいたときの対処法が大切です。「汗をかいたまま放置しておくと、水分が蒸発し濃度が濃くなった成分が残ります。塩分やアンモニアといった成分が凝縮され、皮膚に刺激を与えます。汗をかいたら、こまめに拭き取りましょう。そのとき、ガーゼやハンカチなど吸水性がよくやわらかい素材を使い、軽く押さえるようにして汗を吸い込みます。硬いタオルなどでゴシゴシこすると、皮膚のバリア機能が失われ、汗あれが起こりやすくなります」
対策2:皮膚は清潔に保ち、体や顔は泡でやさしく洗う
夏は汗をかきやすいことから、冬よりお風呂やシャワーの回数が増えるかもしれません。清潔に保つことは重要ですが、体や顔の洗いかたにも注意が必要です。
「体や顔を洗うときに、その刺激で皮膚のバリア機能が低下させることがあります。顔も体も優しく洗うことが大切で、石けんを泡立て手でなでるように泡で洗います。ナイロンタオルなどでゴシゴシ洗うのは厳禁です。汗は水溶性でお湯だけでも落ちますので、体全体に石けんを使う必要はありません。頭皮、顔、体の中心部は皮脂腺が多いので石けんを使いますが、毎日でなくてかまいません。顔は洗顔料を使い、2度洗いを行います。最初は少なめの洗顔料で顔全体を洗い、2度目はテカリが気になるところだけ洗います。ただし、洗い過ぎには気をつけましょう」
対策3:夏でも洗ったら必ず保湿!保湿を怠ると皮膚のバリア機能が低下
「汗あれ対策で見落としやすいのが保湿です。汗あれの予防には、夏でも入浴や洗顔後に必ず保湿をしましょう。夏は湿度が高いことから保湿を怠りがちになりますが、汗あれ対策で最も重要視したいのは保湿。保湿剤は、ベタつかずサラッとした使い心地のジェルタイプかローションタイプがおすすめです。これらの対策を行っても改善せず、かゆみや痛みがひどい場合や続く場合は、皮膚科を受診してください」
よしき皮膚科クリニック 銀座 院長
吉木伸子
横浜市立大学医学部卒業し、慶応義塾大学病病院 皮膚科学教室に入局。平成6年、浦和市立病院(現さいたま市立病院)皮膚科勤務。平成8年、埼玉県大宮市(現さいたま市大宮区)のレーザークリニック勤務。日本美容学校皮膚科非常勤講師を兼任。その間、米国オハイオ州クリーブランドクリニック形成外科、日本漢方研究財団附属渋谷診療所にて、美容医療および東洋医学の研修を行う。平成10年、よしき皮膚科クリニック銀座を開業。
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