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2023.08.03

「育児休業法」とは? 改正のポイントを、流れに沿ってわかりやすく解説【専門家監修】

 

2022年4月から3段階に分けて行われる「育児休業法」の5つの改正内容についてポイントを解説。新しく創設される「産後パパ育休(出生時育児休業)」のポイントも含めて施行順に紹介します。

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育児休暇、通称「育休」をこれから利用する方もいるかもしれません。実は「育休」には、会社が規定を定める「育児目的休暇」と、法律で定められている「育児休業」があります。

本記事では、2021年6月に改正された法律「育児・介護休業法」の「育児休業制度」について、改正のポイントをわかりやすく解説します。特に「育児」について焦点を当てますので、以下では「育児休業法」と略した形で表記します。

育児休業法

そもそも「育児休業法」とは?

「育児・介護休業法」は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。

何だか長くて難しい名前の法律ですが、つまりは働く人たちの「育児」や「介護」の福祉に関する法律です。「就労」と「結婚・出産・子育て」や「介護」を両立する難しさを解消し、一人ひとりが多様な働き方を選べる「ワーク・ライフ・バランス」の実現を目指して、1992年の施行以来何度も改正が行われてきました。

「育児休業法」の改正のポイントをわかりやすく解説

子育て世代が働きやすい環境を目指して何度も改正されている「育児休業法」ですが、実際には仕事と子育ての両立に難しさを感じている方は多いのではないでしょうか。

厚生労働省の調査によると、2020年度の育児休業取得率は、女性が81.6%なのに対して男性は12.65%。育休取得をする男性は、まだまだ少ない現状が伺えます。

参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~P5

そこで、さらに仕事と家庭を両立できる働きやすい環境づくりを目指し、2021年6月に「育児・介護休業法」が改正されました。

この法改正のポイントは、出産・育児による労働者の離職の防止と男性の育児休業取得促進です。これにより、2022年4月、2022年10月、2023年4月と3段階に分けて5つの改正が行われました。それぞれの改正内容について、段階ごとにみていきましょう。

育児休業法

2022年4月1日に施行された改正内容について

1:雇用環境整備及び個別周知・意向確認の措置

(1) 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
(2) 妊娠・出産を申し出た労働者への個別周知・意向確認の措置

まず1つ目は、従業員が育児休業を取得しやすいように、事業主はきちんと環境を整備しなければいけないということです。具体的には、「育児休業・産後パパ育休に関する研修を行う」「相談できる環境を整える」「今までの事例を集めて提供する」「育休を取得しやすくするための方針を周知する」のいずれかを実施しなければなりません。これは、男女ともに実施の対象となります。

2つ目は、妊娠・出産の届出をした一人ひとりに対して「育休制度」「育休の申し出先」「給付金に関すること」「負担しないといけない社会保険料」などについての説明を、面談や書面交付などで行う必要があるということです。また、「どのように休業取得したいのか」 についても確認しなければいけません。

参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~P19

2:有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

2つ目の大きな改正では、有期雇用で働く方たちが育児休業を取得しやすくなりました。2022年3月31日までは、「雇用継続期間が1年以上」「子どもが1歳6か月になるまでは契約満了しない」の2点が育児休業を取得するための条件でした。それが改正後は、「子どもが1歳6か月になるまでは契約満了しない」という条件だけで育児休業が取得できるようになりました。

つまり、引き続き雇用された期間に関わらず、育児休業が取得できるようになったということです。ただし、雇用継続期間が1年未満の場合は、労使協定で締結することが条件。心配な方は、事前に担当者などに確認してください。

参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~P23

2022年10月1日に施行された内容について

3:産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

今回の改正の最大のポイントでもある、「男性の育児休業取得促進」のために新しくつくられた制度が、この「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。男性労働者が、今までの育休制度にプラスして取得することができる休業制度になります。

子どもが生まれてから8週間以内に、4週間まで取得可能休業する2週間前までに申請が必要で、2回に分けて取得することもできます。ただし、分割して取得したい場合は、最初に2回分をまとめて申請しなくてはいけません。

また、育休制度では休業中に就業することはできませんが、「産後パパ育休」では労使協定を締結している場合に限り、申請者が希望すれば休業中であっても就業することができます

参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~P25

4:育児休業の分割取得

4つ目の改正では、今までの育休制度では原則として分割取得ができなかった育児休業を、2回まで分けて取得することが可能になります。

また、対象期間(1歳まで)を延長する場合の育休開始日も、柔軟化されます。今までは、対象期間延長の場合は、育休開始日は1歳もしくは1歳半の時点からと限定されていました。今回の改正では、期間の途中でも育休を開始できるようになり、夫婦で育児休業を交代して取得できるようになります。

参考:厚生労働省『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』P3

2023年4月1日に施行された内容について

5:育児休業等の取得状況の公表【大企業対象】

5つ目の改正は、常時雇用する労働者が1000人を超える事業主に対して、育児休業等の取得状況を毎年一回公表しなくてはいけないという義務付けです。

「男性の育児休業等の取得割合」か「男性の育児休業等と育児目的休暇」の取得割合のどちらかを、企業のホームページや厚生労働省運営のウェブサイト『両立支援のひろば』などを使用して、一般の方も見ることができるように公表しなくてはいけません。

参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について~男性の育児休業取得促進等~P33,34

『両立支援のひろば』は、デジタル庁が整備・運営するウェブサイト「e-Gov(イーガブ)ポータル」でも検索することができます。トップページの「行政サービス・施策に関する情報」から「雇用・労働」を選択し、「雇用環境」へと進むと見つかります。

「育児休業法」これまでの変遷

「育児休業法」は1992年に初めて施行されました。それまでも労働基準法では「女性の産前・産後休業」が認められていましたが、「育児休業法」が成立したことで、男女ともに子どもが1歳になるまでの育児休業取得が認められるようになったのです。

施行当時は、常時勤務する従業員が31人以上の事業所が対象でしたが、1995年にすべての事業所が対象になりました。

その後も「子どもの看護休暇の義務化」「育児休業期間の延長」など、両立支援のための改正が行われましたが、第一子出産後の離職率が減少しない、男性の育休取得率が増加しないなどの課題がありました。そこで、2010年に創設されたのが「パパ・ママ育休プラス」制度。2017年の改正では、「有期契約従業員の育休取得条件の緩和」や「マタハラ・パタハラ防止措置義務」など、誰もが育休を取得しやすい内容が加わっています。

このように、すべての労働者の「仕事と家庭の両立支援」を目指し、現在までに7回もの改正が行われてきました。2022年から2023年にかけて施工された段階的な5つの改正では、夫婦がお互いに仕事と育児を分担することで、出産・育児による離職の防止が期待されています。

育児休業法

最後に

「育児休業法」の改正内容について、ポイントは理解できましたか? なんだか難しそうで敬遠しがちな“法律”ですが、実は私たちの生活に身近で大切なことがたくさん定められています。厚生労働省や各行政のサイトでも、わかりやすく解説されていることがありますので、ぜひ色々な情報を集めて生活に役立ててください。

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監修

社会保険労務士 小田啓子(おだ・けいこ)

大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、 「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は美術鑑賞。
ライター所属:京都メディアライン

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