——舞台俳優としてのキャリアもかわれての『AD-LIVE』出演ですが、実際のところ『AD-LIVE』での演技っていかがですか? 役者に任される〝自由度〟が一般的な舞台とは格段に違いますよね。
小野:誰かの指示があったほうが、正直ラクではあります(笑)
鈴村:確かにそういう側面もある(笑)。即興劇って、完全に〝こっち〟に委ねられるもんね。準備されたキャラクターや脚本をもとに、作品側の意向に沿って演じていくのが基本的な役者の仕事。演技だけじゃなくて、いつもなら準備されるはずのものまで自分でつくらなきゃいけないのは大変だよね。
小野:『AD-LIVE』でいろいろなキャラクターをつくってきたことで、〝生み出すことの大変さ〟を痛感しました。演じるキャラクターを大切にしようという気持ちがより強くなったと思います。すごく面白いキャラクターをつくっていったはずなのに、本番でアドリブが重なっていくうちに「このキャラ、なんてかわいそうな人生を送っているんだ…」というバッドエンドが『AD-LIVE』では起きてしまったりもするので…(苦笑)。
鈴村:それ、めちゃくちゃさみしいもんな〜! それはちなみに、どのキャラのこと?
小野:2018年公演の〝シモニーヌ・サダハル〟ですね…。(※『AD-LIVE 2018』に登場した「ティッシュ」というロックバンドのボーカル。気になる方はこちらをチェック!)
鈴村:あぁ〜!シモニーヌはかわいそうだった!どう頑張っても長生きエンドが見えないというか、死亡フラグしか立ってないキャラで(苦笑)。
小野:どうにかしてあげたいのに、あの時はもうどうにもしてあげられなくて(苦笑)。そういう〝どうにかしてあげたかった〟キャラは、未来の『AD-LIVE』で再登場させたいなとも考えますね。「今度こそハッピーエンドを迎えさせてあげたい!」と思っちゃうんです(笑)。もちろん、『AD-LIVE』やそのキャラクターをはじめて観る方がちゃんと楽しめることが前提ではありますけどね。
▲使用する小道具をふたつに増やして…こちらは「バケツ」&「定規」をお題にしたアドリブ撮影。おふたりの瞬発的な創造力と阿吽の呼吸で、『たたいて・かぶって・ジャンケンポン』が突然スタートしたのでした…!
——『AD-LIVE』の経験が普段の演技に与える影響って、やはり大きいんでしょうか?
小野:演技をする上で〝おさえるべきポイント〟に対するアンテナの感度が高くなると思います。『AD-LIVE』は、掛け合いをする相手がどんなキャラクターなのか、次にどんなセリフを出してくるのか分からない状況で芝居をし続けるので、共演者の言動に対する集中力が自然とすごく上がるんです。セリフや行動を通して、相手が次に何をしようとしているかをキャッチして、その後の展開に生かしながらストーリーのゴールを考えていく。頭をフル回転させないと対応できないんですけど、「あ、この人はこのキーワードを重要だと思っているんだな」とか芝居のポイントを掴む感覚がだんだんわかってくるんです。相手が何をしたいか理解できた瞬間が、『AD-LIVE』をやっていて一番気持ちいい!
鈴村:役同士が理解し合った瞬間って、その空気がお客さんにも伝わるし、すごく面白いよね。
小野:自分が相手の考えをどれだけ掴めるか、逆に自分が相手に考えをどれだけ伝えられるか…芝居って結局はコミュニケーション。その基本をリアルに体感できるのが『AD-LIVE』だなぁ、と。
鈴村:最近、声優になりたい人たちに向けたYouTubeチャンネルを始めたこともあって、芝居の基本について改めて考えたりしてるんだけどさ。セリフを上手に〝言う練習〟をする人がすごく多いんだけど、それよりも何故そのセリフを言うのかを考えることが大事なんだよね。セリフも演技も、相手の言動に対する〝反応〟だから。即興劇はその〝反応力〟がすごく鍛えられるんだよね。
小野:芝居がうまくなりたい人は、無理やりでも『AD-LIVE』にでたほうがいい(笑)! それくらい芝居の基本がつまっていると思います。
▲『AD-LIVE』はもちろん、さまざまな作品で共演されてきた鈴村さんと小野さん。お互いを深く信頼しあっていることが自然と伝わってくる、とても素敵な〝先輩&後輩〟の姿がそこに在りました。