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EDUCATION 教育現場より

2024.02.02

実は誤解がいっぱい!? 英語教育にまつわる〈嘘と本当〉確実に英語力をつける道はこれ!【お受験ママの相談室 vol.18前編】

 

「自分は英語を話せないけれど、子供には!」と思っている保護者は多いですよね。けれども自分も英語話者ではないのに、どうしたら正解なのか?よくわからない・・・。今回は人気急上昇中の英語塾キャタルの三石社長をお招きし、親たちにありがちな英語教育に関する疑問や誤解を解きながら、英語学習において本当に大切なことを教えていただきます。

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第18回[前編]:子供が英語を話せるようになるために知っておこう!
英語教育のあるある〈嘘orホント!?〉

 

英語の絵本の表紙

「自分は英語を話せないけれど、子供には!」と思っていながら、どうしたら正解なのか?よくわからない…。今回は人気急上昇中の英語塾キャタルの三石社長をお招きし、親たちにありがちな英語教育に関する疑問や誤解を解きながら、英語学習において本当に大切なことを教えていただきました。

〈お話を伺った方〉
キャタル代表取締役社長 三石郷史さん

聞き手・原稿:教育エディター 田口まさ美
▶︎Instagram:@masami_taguchi_edu


田口:
今回は、英語塾キャタルの代表取締役三石郷史さんに、おいでいただきました。“ABCからスタートしてTOEFL100点まで!”をモットーに日本にいながら本物の英語力を育成するという三石さんのお話は、ぜひ知っておいていただきたい内容が盛りだくさん!まずは、次から始まる「英語教育にまつわる、あるあるな嘘orホント!?」に対して、三石さんのご意見をいただきます。あなたは、いくつ答えられますか?

Q1「英語学習スタートは早ければ早いほどいい」は嘘orホント!?

三石:幼少期からの英語教育のメリットは、否定しません。インターナショナルスクールやプリスクールなどで体験することも良いことだと思います。ただ、そうした早期の英語教育は日本人の誰もが選択できることではありませんし、早くなければダメなわけでもないとお伝えしたいと思います。

キャタルでは小学校3年生から生徒を募集していますが、英語に関してはそこから始めても十分間に合うと思っています。逆にいうと、それまでの幼少期は脳の発達において一番大切な時期なので、五感を鍛える原体験をたくさん持つことと学力の根幹となる日本語に目を向ける時期だと思います。

例えば、第二外国語としての英語学習の鍵は「読書」にあると僕は思っています。その読書においては同じ本を読んでも、その人によってイメージできる世界には違いがありますよね。そして、その違いは原体験と国語力の個人差により生まれます。「ジャングルの奥深くに~」という物語の一文を読んだ時に、実際の森林に入ったことのない人には、その鬱蒼と茂った草木の様子やむせかえる緑と土の匂いなどを想起することはできません。

でも、この場合の“森林に入る”のような世界と言語が繋がる原体験と、国語力が備わっている状態であれば、そのイメージがしやすくなります。

将来的に長い英語を読んで、その言葉をイメージに繋げたり、逆にイメージを言葉に紡ぐような力が必要になるわけですが、全ては五感の鋭さと、思考力の基礎となる母国語力に依存します。しかし、これを鍛えられる時期は小さいうちです。ですから早期の英語教育に手を出す前に、その時期にしかできない能力開発は何なのか?も考えていただきたいと思います。

逆に、小学校3年生までにやっておくといいのでは、と思うもう一つのことは楽器の演奏を通じて音楽に親しむことです。言語習得において聴覚が鋭いことは非常に有利ですが、耳と体の動きを一致させる楽器の演奏は、五感、つまり脳を鍛えるのに最適です。五感が鋭ければ何をやらせても「カンが良い」子になってくれると思いますが、特に音を真似することから始まる英語習得においては有利に働くのではないでしょうか。

ただ、英語学習のスタートが小学校3年生からと中学生からとを比べると、ちょっと違います。「耳の発達」が著しい年齢は現実的にあり、それが終わった年齢からだと、聞いた音をそのまま自分の口で表現できるような力が弱くなり、ネイティブと同じ発音をするのはハードルが高くなります。

発音がネイティブに近ければ、スピーキングはもちろん、リスニングにおいても有利になるので、その後の英語学習の効率がよくなります。

英語学習はいつからでも遅くない、むしろ中高大での努力の方が重要なのですが、小学生のうちに始められれば随分有利だなとは思います。

Q2「英検3級を目標にすることで幼少期から英語力アップ!」は嘘orホント?

英検のために英語を頑張らせる親が多いですが、これについては、「順番を逆に考えてみましょう」とアドバイスしたいですね。英検のために英語力を上げるのではなく、英語力を上げていく過程で、読める本のレベルが上がって、書けることも増えてきた、そのレベルが英検だと3級くらいかな?ということで力試しに受けてみる、というのなら良いと思います。

ただ、「子供が3級を受かるために何をすればいいですか?」となってしまうと、それは違うのではないでしょうか。まだ子供が小学生のうちに英検を取る必要性は本来ありません。

大学受験や留学のタイミングで、小学校時代の英語力はどのくらいでしたか?なんて聞かれることはありませんから。英検のために英語を学ぶ、になってしまうと、どうしても合格にこだわり、英検に最適化した学習になってしまいます。

英検は、何万人もの受験者の実力判定に特化したテストであり、実力養成のために作られたテストとは言えません。テストですから、効率よくいい点数を取ろうと思ったら過去問対策などをやることが一番ですが、そのためにストーリーのない短文などから学習するのは、子供たちが楽しみながら取り組める学習と言えるでしょうか。

楽しい物語を読んだり、人に自分の意見を伝えたりと、本来子供たちがするべき言語習得体験とは相当異なるものになってしまいます。

また、英検は、〈合格・不合格〉の世界になってしまうので、ともすると不合格になってしまう可能性がありますよね。小学生のうちに、学習面での失敗体験なんて必要ないし、させたくはないなと僕は思います。そういったネガティブなことが発生しかねないので、十分留意しつつ英検が目的化しないように注意しましょう。

Q3「親の悪い発音での読み聞かせは子供の耳に悪影響」は嘘orホント?

まず、英語も日本語同様、絵本など簡単なものから読書体験を始めることは、非常に有効です。子供たちは親と本を読むのが好きなので、日本語英語に限らずたくさん一緒に本を読んで欲しいです。

そして英語の本を読むときに問題になるのが、親の発音です。「英語の絵本を発音の悪い私が読んで聞かせてもいいの?」というのはよく聞く質問ですが、正しい発音が録音されている音源と一緒であれば問題ありません。

例えばアメリカのインド人2世、韓国人2世の方が、両親が訛りのある英語を話しているからといって子供たちも訛っていません。子供たちは元来ネイティブの発音を聞き分ける力があるんです。子供は、お母さんとネイティブの発音の違いを聞き分け、ネイティブの方を真似します。なので、ぜひ一緒に本を読み聞かせてください。
 
最近ではAmazonのAudibleなどでも英語の本の音源にアクセスすることができますし、YouTubeなどでも本のタイトルを入れればネイティブの朗読を見つけることができます。

また「Oxford Reading Tree」などのテキスト系の絵本にも音源がありますので活用するといいと思います。ぜひ英語の音源のある本を手に入れて、それを聞きながら一緒に読んでみてください。親が読み聞かせをする時間は、子供も楽しめ、本を読むことが好きになっていくために、とても有意義な習慣です。

田口まさ美さんと三石郷史さん

Q4「小学6年生で英検4級を取っていれば安心!」は嘘orホント?

こちらも英検絡みで、よく聞かれることですが、まず英語教育は、長距離走と捉えましょう。小学生のうちには、まだ焦る必要はなく、「何年生で英検◯級」のような指標は必要ありません。ゴールは高校3年生の時の英語力です。

その時に海外留学にも挑戦できるし、大学受験でも英語を武器にできるような英語力が身についていれば問題ないはずです。あくまでも目安ですが、英検で言うと準1級、TOEFLで言うと80点から100点がそれに相当する英語力になります。

このように先の長いゴールを目指すには、むしろ、途中の時点での英語力に右往左往しないでいただきたいと思います。楽しみながら英語を学び続け、あくまでも英検はそのプロセスの中で現在地を確認するために使う。そうして高校3年になるくらいのタイミングでこのくらいの実力があれば、受験をするにも留学をするにも選択肢が増えるでしょう。

ただ、小学生のうちの英語学習のゴールとしては、中学入学までにフォニックスが終わっていて、音を聞いて綴りが書けるようになっていれば、それはすごいアドバンテージです。

中学から英語を学び始めた生徒は、大体がローマ字とは全く違う綴りと発音のルールにつまづきます。小学生のうちにフォニックスを終わらせておいて、それに加えて、家庭でフォニックスレベルの英語の本を月に1冊くらい読んでいれば、中学生から本格的に英語を始めても高校3年生までにTOEFL100点を達成することも夢ではありません。十分に可能ですよ!

Q5「中学校受験をするより英語を続ける方がいい」は嘘orホント?

いろんな価値観がありますので、一概には言えませんが、中学受験は4教科全てを頑張らなければならないのが、なかなか大変ですよね。言語である「国語」と数字の概念を学ぶ「算数」は小学生のうちにしっかりと学ぶことはとても大事だと思うのですが、僕個人の意見としては、「理科・社会」の代わりに「英語」をやっていれば本当は効果的な気がします。

中学受験が本格化する小学校4、5、6年生は、英語習得のゴールデンエイジとも重なるので、どれを選択するかは非常に難しい課題になると思います。

小中高大の役割はそれぞれ違います。“小学生のうちは、たくさん遊んで五感を鍛え、まずは言語と数の概念を自分の中に入れる。中学では理科や社会も含めた世の中の神羅万象を学び、世界を理解する。高校は、その中で自分が勉強したいことを強化する。そして大学で専門を学びながら社会と繋がりを持ちつつ大人になっていく”。

こうした流れが本来のあるべき姿だというのが、僕の考えです。

この意味から、理科・社会は、より深い理解ができるようになる中学校からスタートでも本当は間に合うのではと考えています。

最近は英語を中学受験の科目にいれる学校が増えてきて、理社の代わりに英語を学ぶことも選択肢になりつつあります。中学受験時の成績順位が、社会に出てもそのままだとか、他のエリートよりも何倍も優秀だとかいうことは、現実にあるでしょうか?このことは正しく効果検証する必要がありそうだと思っていますが、小学生のうちに注力すべき科目としては、国語・算数・英語の3つではないかというのが僕の意見です。

Q6「YouTubeの絵本を読んで英語が上達!」嘘orホント!?

YouTubeは便利ですよね。ただYouTubeもいいのですが、できれば手元にアナログな紙の絵本もあった方が良いと思っています。

言語は概念です。目に見えるものではありません。ゆえに、本という具体的なモノが手元にあるということで、脳内で言語(概念)と世界(モノ)を結びつけやすくなるのではないか、ということが近年の研究で言われているのです。これが、僕がキャタルで電子辞書を使わせない理由でもあります。五感をフルに使うこと。手に触れられるものを媒介することに意味があると考えています。

児童文学書「Oxford Reading Tree」とか、「Magic Tree House」とかの音声は、YouTube上にたくさんあるので、それを流しながら、手元で実際の本を読むアナログな体験をする。こうしたダブル使いをすると、とても効果的だと思いますので、本を取り寄せるのは少し手間ですが、ぜひ試してみてくださいね!

Q7「海外に長くいればいるほど英語力は当然高くなる」嘘orホント!?

これは、実はそうとも限りません!起業して、帰国子女たちを大勢面接するうちに、同じ帰国子女でも、その人たちの英語力にはかなり差があるということに気づきました。そしてその差は、海外で過ごした期間の長さには必ずしも比例していなかったんです。驚きですよね。では何によってその差が生まれているのか?

会話をしているだけでは、その違いはほとんど分かりません。ただ長い文章を書いてもらうと、その差ははっきりします。つまり発音の綺麗さや流暢さではなく、文章力なんです。日本語も同じで、その人の言語能力は文章力に出るわけです。

そして、その文章力の差を生み出す差が、英語の能力は滞在期間の長さではなく文章力を育む「読書量」によると結論づけました。高度な英文を書ける人は、たいてい「Magic Tree House全巻読んでました!」「Roald Dahlはかたっぱしから読みました」などと言ってくれて、幼少期の読書体験が豊富という共通点があったのです。ということは、日本においても、読書を通して英語力を高めることができるはずだと考えました。これが弊社の基本概念になっています。

それとセットで、自分で書いたもの、話したことを添削してもらうことも重要です。自分の英語の何が欠点なのかを、その都度教えてもらわないと改善していけませんから。英語力を高めるには、個別の質の高いフィードバックも必須です。今後学校や塾など、お子さんの英語教育をどこに任せようかと悩まれることがあると思いますが、その際に生徒への個別のフィードバックがどのくらいあるかを基準に考えるといいかもしれません。

Q8「英語の音読をしない子は英語が上達しない」 嘘orホント!?

本当です。日本の英語教育は、音を軽視しすぎていると思います。

日本語でも、考えてみてください。赤ちゃんはお母さんが話す音声を真似することから言葉を学びますよね。最初から書ける赤ちゃんはいません。

音をたくさん入れることで、物や現象とその音声を結びつけられるようになる。
→それを文字に変換できるように少しずつ勉強していく。
→すると今後は、文字を見たときに、脳内で音に変換できるようになる。

これが言語習得の順番です。学習のファーストステップは、「音声」なのです。

ですから、フォニックスが大事なんです。現実に実在する“りんご”と、耳で聞くアップルという音と、Appleという文字をつなげていく。これがフォニックスです。これをちゃんとやっていくと、英語は綴りを覚えるのも簡単です。

例えば、キャタルでテキストとして使っている「Peter Pan」にこんな一節があります。

“How old are you Peter?”asks Wendy. Peter thinks for a moment and says, “I don’t know. But I’m young, and I don’t want to grow up. I don’t want to become an adult. I want to be a boy forever and have lots of fun!”

ピーターパン症候群の元ネタになるような一節ですが、これを小さい声で字面だけを読むのと、WendyとPeterの気持ちになって、感情を込めて音読をするのとでは、英語の入りかたが変わってきます。

英語が好きじゃない子は、たいてい音読をあまりしていなかったりします。黙読だけだと音声情報と結びつきませんよね。ですから、正しい音声を聞くことと同時に、自分でも大きな声で発音することは非常に大事です。日本人はシャイな人が多いですが、恥ずかしがらずに大きな声で発音しましょう!

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教えてくれたのは…

英語塾キャタル 代表取締役社長 三石郷史さん

群馬県桐生市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、メリルリンチ証券会社に入社。2020年、マサチューセッツ工科大学大学院卒業。

幼い頃から感じていた英語コンプレックスの悔しさと、外資系の企業で英語ができずに苦労した経験から「次世代に同じ思いをさせてはいけない、正しい英語を正しい方法で学べる場所を作ろう」と決意し、「英語塾キャタル」を創立。延べ10,000人以上の生徒が学ぶキャタルは、世界一生徒の英語力が伸びる塾を目指している。

生徒たちに海外滞在歴がなくても世界に挑戦できることを示そうと、海外留学に挑戦。2017年にTOEFLで102点を取得し、マサチューセッツ工科大学大学院に合格。日米を行き来しながら、2020年に修士号を取得。

福岡に開校するなど教育から地域の活性化にも力を入れている。2024年にはバンコクにはじめてとなる海外教室を開校予定。

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Interview&Writing

田口まさ美

〈教育エディター〉
小学館で教育・ファッション・ビューティ関連の編集に20年以上携わり独立。現在Creative director、Brand producerとして活躍する傍ら教育編集者として本連載を担う。私立高校に通う一人娘の母。Starflower inc.代表。Instagram▶︎@masami_taguchi_edu

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