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EDUCATION 教育現場より

2024.08.31

勉強のゴールは何?仕事とは?年商100億超の成功者が伝える幸せになる道 【お受験ママの相談室 vol.23】

 

今回はお受験とは少し離れ、小野龍光さんをお呼びして、子育てにおいても大切だと思う概念をお伺いしました。東大・大学院卒業後、ITベンチャー界で目覚ましいご活躍をされ、地元密着型アプリ「ジモティー」や共同購入型クーポンサイト「グルーポン」など年商100億越えの事業を世に送り出した有名経営者でしたが、突如として仏門へと転身。何もかもうまく行っているかのように見えていた経営者が、いかにして成功を手にし、その後に何が待ち受け、どんな決断をされたのか。
そのドラマチックな人生から、私たちは何を学べるのでしょう。

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第23回:これからを生きる子供たちに問いかけたい幸せ

〈お話を伺った方〉
小野龍光さん

聞き手・原稿:教育ジャーナリスト 田口まさ美
Instagram:@masami_taguchi_edu

 

──今回はお受験とは少し離れ、小野龍光さんをお呼びして、子育てにおいても大切だと思う概念をお伺いしてみたいと思います。

龍光さんは、2022年にインド仏教最高指導者 佐々井秀嶺さんのもとで得度なされました。現在は、見た目の通りでいらっしゃいますが、前世(得度する前の人生)では、東大・大学院卒業後、ITベンチャー界で目覚ましいご活躍をされた有名経営者でした。

地元密着型アプリ「ジモティー」や共同購入型クーポンサイト「グルーポン」などの立ち上げに関わり、年商100億越えの事業を世に送り出すなど、華々しい成功を手にし、ライブ配信会社「17(イチナナ)LIVE」のグローバルCEOへ。まさに現代の親たちが一度は子供に夢見るであろうサクセスストーリーを、体現した人とも言えるのではないでしょうか。

そんな何もかもうまく行っているかのように見えていた経営者が、突如として仏門へ──。そこに何があったのか。小野さんがいかにして成功を手にし、その後に何が待ち受け、どんな決断をされたのか。様々な経験を経て、これからを生きる子供たちに伝えたいことを、お伺いいたします。

話すことが苦手で登校拒否も経験した子供時代

──小野さんの前世は、社会的成功を収めた経営者でした。そんな未来を夢見ている若者も、たくさんいると思いますが、どんな子供時代や学生時代を経て、そこに至ったのでしょうか。

龍光:私の前世(得度する前の人生)での子供時代は、今思いますとコミュニケーション障害とも言えるような、自分が何かを発したり、自分を表現することが苦手な面がありました。

小学校低学年の時には、いわゆる登校拒否を起こし、引きこもりを経験しました。学校の先生には、「他の子供が100喋れるとしたら20しか喋れません」などとも言われていましたね。自分でも、あまり覚えてはいないのですが、思ったことを言語化することがうまくできないという、もどかしさを感じていたと思います。

登校拒否になり入院までしたのですが、両親は、3人目の子供だったこともあり、良い意味で淡々と対応してくれていまして(笑)、それが良かったのか、小4くらいからは、自然に学校に戻れた記憶があります。親に干渉されずに育ったことは、ありがたかったと思います。

ごく普通の家庭でしたし、子供心に経済的余裕は無いと感じていました。ですが、父は知的好奇心の高い人で、父の購読していた「Newton」などを読み、宇宙や化学に興味を持ち、望遠鏡で星を眺めたりすることが好きでした。読書好きと、知的好奇心は、この頃に育まれたのかもしれません。

中学に入ってからは、徐々に活動的になり、高校で出会ったクラスメイトに、突然「日本で一番いい大学はどこか知ってるか?だったらそこを目指そう!」と言われ、東大を目指すことに。現役の時は塾にも行かずに落ちまして(笑)、一浪して「理科2類」 に入学しました。

「未知なるものを知りたい」から「未知なるものを作りたい」へ 

──幼い頃は、本が好きで好奇心は旺盛でありながらも、特に目立つ存在ではなかったという小野さん。東大では、生物の研究をされました。

龍光:物理学は、思い描いていたような理想とは違い、当然ですが、毎日望遠鏡を覗き込むわけではなく、現実にはコンピュータの中で論理分析し続けます。その姿に、小さな挫折を味わいました。そして、もっと実体を感じたいと、生物学へ転籍したのです。

「人間がまだ知らぬ世界」と言う意味では、生物も、宇宙のようです。人間が、未だ理解しきれていないものを研究するのは、面白いと思ったのです。

生物学部で修士まで行ったものの、当時研究室にあったコンピュータに触れ、今度はプログラミングの面白さに開眼しました。 それまでは、「未知なるものを知りたい」と思ってきましたが、プログラミングは自分が設計側になれます。つまり、「未知なるものを作る側になれる」その面白さにハマりました。 

気づけばコンピュータ漬けに。当時ちょうどアイ・モードが世界に広がった時期で、「これは、とんでもない面白いことが起こるに違いない!」という直感があり、ITの世界に、どっぷりとのめり込んでいきました。周りからは、かなり浮いている存在だったと思います。

田口まさ美さんと小野龍光さん

──就職は、IBMに新卒入社も、5ヶ月で退職し、サイバーエージェントのシーエーモバイルに転職されました。

龍光:サイバーエージェントさんからシーエーモバイル(現:CAM)の話をいただき、「モバイルは、大きなムーブメントになる!」と確信したのです。

実際に、日に日にユーザーが伸びていき、テクノロジーの進化スピードも早く、待受画面は白黒がカラーになって、通信速度が上がって。できることがどんどん広がっていきました。常に新しいサービスを作ることができるという環境に恵まれたのです。何をやっても数字的な成長があり、毎日がお祭りのようでした。

──探究心や好奇心の赴くままにビジネスにのめり込み、「今まで世の中になかったものを作っていく!」という面白さ、数字的に反映される面白さ、そして、組織を育てたり、大きくするというやりがいなどを感じられたということですね。

龍光:その時は、まだ体験したことのない、未知なるものへの面白さ、楽しさに溢れていました。今思えば、先行者メリットも大いにあったと思いますが、何をやってもユーザーの支持を得られ、自分自身もユーザーとして、熱中したのです。

インターネットの魅力は、人とのコミュニケーションの在り方が変わることにあります。インターネットが誕生し、さらにモバイルになって、いつでもどこにいても誰かと繋がれ、誰もが発信できるようになった。そこが面白かったのです。自分にとっては世界が広がり、今まで会えない人と会えるようになった有意義な体験でした。

──それが、いつからかビジネスという世界の持つ魔力に引きずり込まれていった──、と。

”数字を伸ばすことが正義”のビジネス界で味わった絶望

龍光:ビジネスは、数字が拡大することが正義の世界です。会社の従業員、ユーザーの数、売上、それらをいかに伸ばすかの競争です。しかし、私は、物理学的に、永遠の拡大はないというのが真理ではないかと考えていました。永遠の拡大はないのに、拡張し続けるには、奪い合いが生まれてくる。マーケットの取り合い、ユーザーの取り合い、あるいはユーザーの時間の取り合い──。取り合い、奪い合いである以上、技術の進化ではあれど、どこまで行ってもその競争に、終わりはないのです。

個人としても、数字的な目標を立てて、それを達成する喜びはありますが、目標は達成と同時に霧のように消えてしまうので、また次のフラグを立てて、より高みを目指して行くしかありません。次から次へと目標が入れ替わり、気持ちが焦っていきました。

今でこそ冷静に理解できますが、もはやドーパミンの快楽を求めるジャンキーのように、より強い刺激を求める脳状態になっていたのだと思います。

──当時は、数字を伸ばすことこそが正義であり、自分の能力を示し、自分のやっていることに意味があると確認する証明だったと語る龍光さん。一方で、永遠の成長は無いと頭で理解しているという矛盾。いかにたくさんの消費欲を喚起できるか?と追い求めながらも、「ひょっとしたら、自分は、しなくてもよいことをしているのかもしれない」と悩み始めました。

龍光:よく「龍光さんは、大きな成功を手にしたからこそ、捨てられたのでしょうね」と言われることがあります。ですが、私自身は当時も、成功しているという実感は全くなかったのです。成功という言葉の定義もないままに、成功を求めていたのでしょうね。ただ、成功すれば幸せになるんだと信じていました。それは、雲を掴むような気持ちだったと思います。雲を掴んでも、その手にしているものが何かわからないままに、それが正しい道だと信じ切っていたのです。売り上げや資産など、お金の規模が大きくなることが幸せにつながると妄信してしまい、まるで、金融カルト宗教を信じ切ってしまっていたようでした。

「あらゆる負の感情が、欲から生まれる」と仏教では言うのですが、「こうしたい」と願えば、思い通りにいかないことが、必ず生まれる。「目標が達成できない」「こうであるべきなのに」と、苦しみが生まれるのです。

ワクワクするものを追い求めることや、欲望を持つことが、決して悪いわけではありません。そこから個人の成長も生まれると思います。ただ、欲は大きくなればなるほど、満たされない時の苦しみが生まれます。誰の人生も思い通りにはいきませんから、どこまで行っても満たされない。虚無感になっていきます。

例えば、3000億の資産を持っていても、「死にたい」と言う社長も現にいらっしゃいます。むしろ、成功者と言われる人ほど、苦悩は深いのかもしれません。常にプラスアルファを求めていくビジネスの世界では、より強い刺激を求める状態に傾きがちですから。一度その状態に陥ると、頭でわかっていても脳が欲してしまう。刹那的な喜び以外に、自分を満たせるものがなくなってしまい、それが苦しくて「早くこれを終えたい。死にたい。」となってしまうのです。

本来、動物としては、腹を満たせば、肉体的な欲望は満たされるはずです。ですが、名声や、欲望、通貨などは、人間が作り出した概念であり、実体がなく目に見えないものです。いわば妄想上の価値観ですから、例え手に入れたとしても、それは身体的実感を伴いません。ですから、より多く、高く、求める。でも、いくら求め続けても永遠に満たされることはないのです。

死んだ時に残せるのは自然と次世代。このままの生き方でいいのか。

龍光:人間と自然の距離感は、変えていかなければならないと、切に思います。

あらゆる地球上の生命体のうち、重量ベースで見ると、人間は実は0.01%に過ぎない存在なのです。8〜9割は植物です。ですから、極論ですがホモサピエンスが自然環境や気候変動に真剣に取り組まずに享楽に耽り続け、仮に人類が厳しい自然の変化で絶滅してしまったとしても、この星は、変わらず「緑の星」のまま存在するのかもしれません。

ですが、私たちは知能や技能をもっているのですから、人類の幸せのために今舵を切るべきですよね。私が元々持っていた死生観として、自分が死んだ時に、残せるのは「自然」と「次世代」ということがあります。

ですが、ビジネスを拡大し、上場させ、世界の金融市場の仕組みを学びながら見えたことは、「これは経済成長の名のもとで、経済格差を加速させているだけで、必ずしも次世代にハッピーな未来を残すことになっていないのでは?」「むしろ、人々の不幸を生み出し、消費目的の過剰生産によりゴミが増え続け、次世代に汚れた地球を残すことになっているのでは?」という疑念でした。

このままでは、自分は満足して死ねない──。やがて絶望に近い、やるせなさを感じたのです。

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