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EDUCATION 教育現場より

2024.08.31

勉強のゴールは何?仕事とは?年商100億超の成功者が伝える幸せになる道 【お受験ママの相談室 vol.23】

運命の出会いと仏門への転身。金や肩書きの競争世界から離れ、利他の心で生きる

──企業のトップとしては、大きな旗を描き、この旗の向こうに何もないかもしれないと疑い、絶望しながらも、自分を鼓舞して旗を振り続けなければならない。そんな感覚に、いつしか耐えきれなくなった龍光さんは、自分で自分を消し去りたいくらいの苦しみを感じるようになった、と語ります。

龍光:「このままでは自分がもたない」と思ったので、わがままですが、突然会社を辞めました。そして、2022年、オーストラリアに移住しました。その時に、たまたま友人とインドに行くことになり、そこでインド仏教最高指導者の佐々井秀嶺上人と運命的な出会いをしたのです。

佐々井上人が、ビジネスとは全く違った形で、社会に大きく貢献し、大勢の人々を救っている姿に感銘を受け、気がづいたら自分も得度させていただく流れとなりました。

──ビジネスの世界から、世界を救おうとは、思わなかったのですね。

私の個人的な考えですが、例えば一兆円かけた新エネルギービジネスを立ち上げたとします。でも私の経験上、規模を求めた途端、そこには利権が発生し、パワーゲームが生まれ、格差や規模の競争が始まってしまいます。それも自然の摂理なのでしょう。ならば、一人ひとりに手が届く範囲で助け合う気持ちが広がっていくことこそ、重要ではと感じたのです

我の張り合いではなく、「自分が持っているもので分けられるものがあれば分ける」そういう他者と助け合う気持ちの人間が増えることの方が、世界を平和にする近道のような気がしているんです。お金や肩書きというような自分の外側に成長を追い求めるのではなく、譲り合いや助け合いのような自分の内側に成長を求めていく姿勢があれば、紛争や、格差、分断は減っていくのではないでしょうか。

私自身が得度したのは、こんな生き方をしている人もいるよ、というひとつのモデルとして参考にして頂ければと思ってのことです。私は、「求めるから苦しむ」ですとか「”我”という実体の無いものに囚われないようにする」ですとか、通常、人が頭では、分かっていてもなかなか実感し難いような感覚を、私は自らの経験から腹落ちし、身をもって実感いたしました。

ですから、今の私のお姿を、ひとつの在り方、あるいは社会実験のように、興味を持って見て頂ければ幸いです。今苦しんでいる人が私を見て、「こういうあり方もあるんだ」と思って少し楽になっていただければうれしいですし、「お金がなくても幸せに生きてる人もいる」という証になれればと思っています。

田口まさ美さんと小野龍光さん 会話の様子

幸せになるには、偏見を捨て感謝ポイントを増やすこと

──「我」という意識を小さくすることで、欲望が抑えられ、穏やかに幸せに生きられるという思想ですね。

龍光:自分という存在は、不確かなものです。自分という意識を小さくすると、感謝ポイントが増えます。今この瞬間、息を吸えていて、ありがたい。お話を聞いてくださる人がいて、ありがたい。などと感謝ポイントを増やしていくと、定常的な幸福感が増えますね。脳内でセロトニンやオキシトシンの分泌が増えるということなのかもしれませんが。

「絶対いい大学へ行ったほうがいい」「絶対お金はあった方がいい」など、自分が持っているあらゆる”絶対”は、絶対ではないかもしれません。人間は自分の脳を通して世界を解釈しているだけです。ですから“自分の解釈は偏見だらけだ”と自覚することが大切ではないでしょうか。同じ現実に対しても、どう解釈するかはその人次第なのですから。

例えば、私は新宿・歌舞伎町トー横界隈で過ごすことが多いのですが、そこで女の子たちの笑いのネタにされることがあっても「ありがとうございます」という気持ちです。「バカにされた」とは思いません。こんな自分に興味を持っていただいた、という解釈です。

無限の選択肢があることは幸せなのか?SNSを捨て“今ここ”に生きる

龍光:ソーシャルメディアで、こうであったならば、ガンにならない、しわにならない、などと情報が流れてきますが、現実には、人は老いていくし、朽ちて行きます。その中で生活し、幸せを作っていくのが人の実態です。選択肢は多い方が幸せと言われますが、本当にそうでしょうか?選択肢が無限にあることは、必ずしも幸せではないと思います。それどころか、どこまでも充足感が生まれず、かえって幸せを感じにくくなるのではと思います。

限られた環境の中で、手にできるものの中で、工夫して、周りと支え合いながら生きる中に、本当の幸せがあると私は思います。これからの時代は、自然資源が足りなくなって、物々交換したり、シェアしたりが当たり前になって行くのではないかとも思っています。

ただ難しいのは、インターネットの普及により、どこまでも比較対象が見えてしまうことですね。グローバルの中で、どこにいても遠い世界の、ピカピカに見える人々を目にしてしまうのですから。でもそれは、現実にはここにない架空の世界ですから、結論は見なければいいんです。

現在は、世界中で経済格差が広まり、それが教育格差になり、結果として治安の悪化が起きていると感じます。これは世界中どこにいても、避け難いかもしれません。紛争も増え、ニュースを見て心を痛めることもあります。何か自分にできることは?と思いますが、結局は、自分の周りのコミュニティが、少なくとも心満たされる環境を作ることが、まずは第一歩なのではないでしょうか。

ミャンマーの国内難民の集落やロスの麻薬中毒者が集うストリートなどにも行きましたが、ニュースにすらならない悲劇、世界には、あります。今この瞬間も、大量に苦しんでいる人がいるわけです。ですが、とにかく自分が目が届く、手が届く範囲で、やれることをやっていこう。そう、思える人が増えればいいですよね。それにより、不幸な人が減りますから。

小野龍光さん 横顔

子供や若者に伝えたいこと5つ

──龍光さんのご経験から、親はこれからを生きる子供に何を伝えたらよいと思われますか。

龍光:子供たちには、お金とは「ありがとう」の代わりにもらえるものと伝えてあげたらよいのではないかと思います。

私たちは、ご飯を食べて生きています。それは、命をいただくことであり、誰かに作ってもらったことの結果です。ただ生きているだけで、誰かのお世話になっているのだから、自分も誰かにありがとう、と言ってもらえることをしないといけない。それが、お金という形に変わって、もらっているんだよ、と伝えたいですね。

また、私は前世ではインターネットに関わってきましたが、くれぐれもYouTubeや動画を見て、何かをわかったつもりにならないでほしいとも思います。

インターネット上の動画を見てわかったつもりになると、リアルに体験して本当の意味で「わかる」チャンスを失うことにつながってしまいます。インターネット上の体験は、目と耳しか使っていなく、制限された体験です。人間には五感があり、鼻や、触感や、体を使って体感することが大事です。できるだけ、リアルに体験をして、心揺さぶられる経験をしてください。男子高校生には、「告りまくれ!」と言ったりします。LINEじゃなくて、会いに行け、と。自らの体を使って体験をすること以外に、本当の経験はないのだと思います。

また、自然の中で不便を感じましょう。引きこもりのお子さんにお会いさせていただくこともございますが、そんな時は、散歩に連れて行ったりします。自然の中を歩く。そうすると心が軽くなるものです。自然の中で体を動かす生き方は、人間にプログラムされた生き方なので、幸せを感じやすいのではないでしょうか。

お母さんは、自然の中に家族で遊びに行き、わざとバッテリーを忘れてみてもよいかもしれません(笑)。ネットのない環境で、生きていく上で必要な、泥臭いことを体験することが大事だと思うのです。私は今、モノをほぼ手放し、カバンひとつに入るモノ以外は何も所有せず生きておりますが、無いなりに生きています。泊まる家がなければ、公園のお世話になりますし(笑)、移動はできるだけ歩きます。私の話は極端ですが、「何も無い中でどう生き抜くか?」を考え、なんとかする力を鍛えることが大切だと思うのです。いわば、「心の筋トレ」です。

残念ながら、心を成長させるのは、楽ではありません。筋肉と同じですね。心に負荷がかからない限り、心は育たないのです。

そして人は皆、生きていればいずれ苦しみに出会います。苦しみから逃れられる人は一人もいません。何かしらの苦しみに対して乗り越える心の筋力をつけるしかないのです。その子の適性を見ながらも、思い通りにいかないことも学ぶこと。苦しい時は、チャンスタイムです。「苦しい」「悔しい」と子供が感じている時にも、子供を信じて、「あなたなら大丈夫!」と、そう言ってあげてください。

お子さんの悩みを聞いていて注意すべきだと思うのは、親子は別人格という点です。親の「こうあるべき」という価値観が強すぎると、子供が苦しむケースがあります。子供は、自分とは違う価値観で生きてる可能性が高いです。ですから、親が「このほうが絶対幸せだと思う」という、その絶対は絶対じゃないかもしれないのです。

生物学的にも、子供は親に見捨てられたら生き残れないと思うので、違和感があったとしても、親を喜ばせようとしてしまう。子供のためと思ってやってることが、実は子供を苦しめていることもあります。とにかく子供を信じて、黙って見守っていただきたいなと思います。「大丈夫?」より、「大丈夫だよ!」と言ってもらえることに、人は癒されるものですから。 

──親は子供に幸せになってほしいと願うものです。ですが、人の幸せとはなんなのでしょう。現代社会において極限の経験をされた龍光さんだからこそ語られる言葉には、説得力がありました。成長意欲自体は、決して悪いものではありません。子供にも備えてあげたい資質のひとつです。ですが、同時にその先にある達成(成功)とは手にした瞬間に消えていくものです。人と助け合って生きる過程の大切さや、成長とは自分の内側にこそあるものだという価値観については子供にも伝えたいと思いますし、また自分自身も常に忘れずにいたいと思います。龍光さん、ありがとうございました。

———

●龍光さんから子供に伝えたいキーワード

1. お金は、ありがとうの対価

2. SNSではなく五感を使ったリアルな体験を

3. できるだけ自然の中に身を置こう

4. 親の価値観を押し付けない

5.「あなたなら大丈夫」

 

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教えてくれたのは…

小野龍光さん

東京大学卒業。地元密着型アプリ「ジモティー」や共同購入型クーポンサイト「グルーポン」などの立ち上げに関わり「17LIVE」のグローバルCEOを勤めるなど数々の成功の後、2022年にインド仏教最高指導者佐々井秀嶺上人のもとで得度、仏門へ。現在は、一生分の所持金を39万7676円を上限とし鞄ひとつに入る物以外所有せず、悩みや相談のある人よりお声がかかればどこへでも出向く生活を送る。
龍光ポスト

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Interview&Writing

教育ジャーナリスト 田口まさ美

株式会社小学館で編集者として初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子供の心の育ち、非認知能力・海外の教育などの取材を経験。同社にてファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年以上)携わり2022年独立。現在教育ジャーナリスト・編集者として留学・進路などの情報を発信、本連載を担う。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。
▶︎Instagram:@masami_taguchi_edu

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