Domani

働く40代は、明日も楽しい!

 

EDUCATION 子供の進路・学校

2024.07.18

<小学校受験>2024年度 小受・中受市場の最新傾向と対策をプロに聞く!【お受験ママの相談室 vol.21】

 

今回は、小学校受験の最新情報をお届けします。小学校受験市場の全体の傾向から、最近人気の高まっている学校のご紹介など、長年の業界人脈と客観的データの蓄積がある森上教育研究所・森上さんにご協力いただき、ここでしか得られない貴重な情報が満載となりました。なるほど!と驚き勉強になることばかり。お受験を控えたママにも、そうでない方にもためになると思います。中受編もぜひ併せてご一読ください。

Tags:

第21回:小学校受験生はついに微減!?
昨年人気が出た学校、今年人気が出そうな学校

〈お話を伺った方〉
森上教育研究所 代表取締役 森上展安さん
株式会社サイタコーディネーション代表取締役・教育学博士 江藤真規さん

聞き手・原稿:教育エディター 田口まさ美
Instagram:@masami_taguchi_edu

 

中学校受験2024年の最新傾向はこちらから▼

──小学校受験で、2024年の業界全体的な傾向はいかがでしょう?

森上:今年の小学校受験の変化として最も大きなことは、ついに少子化の影響が少しだけ出てきたことです。小学校受験の行われる首都圏では、以前は人口が増えていたのですが、幼児〜小2までの人口が今年はいよいよ減少カーブに入ってきたのです。

首都圏私立62校 5年間応募者数合計推移

資料提供:教育図書21

ですから、小学校受験者数は今後増えることはなさそうです。その代わり、郊外にある私立小学校が人気になりました。例えば神奈川県の【洗足学園小学校】や、埼玉県の【さとえ学園小学校】あたりは、昨年も大きく増加しましたし、今年も増えることでしょう。

都内の受験者数を見ると、わずかに減っていますが、その中でも堅調なのは、【東京農業大学稲花小学校】です。

英語学習を強化している学校も人気です。神奈川県で有名なのは、【精華小学校】、東京都で小中高一貫の都立の【東京都立立川国際】も、昨年の24倍と大変人気が高いです。その他、都内では、【昭和女子大附属昭和小学校】が、共学となって以降、英語に力を入れていて人気がありますね。

異変としましては、いわゆる”進学校”、高校や大学で外部受験しないといけない進学系の学校が少しだけ減少傾向にあります。例えば、【宝仙学園小学校】【国立学園小学校】【淑徳小学校】あたりが、やや減少に転じました。ただ、宝仙については、今年はまた増加すると思われます。そのことは後ほどご説明します。

──ということは、まとめますと?

森上:郊外の私立小学校は伸びてるけれど、都内の進学校は減少傾向となります。ただ元々小学校受験は枠が少ないですから、倍率が急に下がることはありません

具体的には、小学校受験の定員(合格者数)は、同学年全体の1%〜2%くらいです。とても狭き門ですよね。ですから、今後も倍率が急激に減るなどということは考えにくいのです。

また、令和3年の文科省の調査ですと、小学校受験家庭の平均世帯年収は約1200万円以上が51.8%です。対して中学受験の平均は800〜900万。受験される世帯も限定的ですから、倍率が大きく増えることもなく変わらないのではないでしょうか。

都内でも、附属系の小学校は相変わらず堅調と言えます。大きく増えても減ってもいないという状況ですね。

横浜では、近年青山学院大学への継続校となった【青山学院横浜英和小学校】などが、相変わらず堅調です。

──東京都23区内独自の傾向はありますか?

「中学受験・高校受験は難しい、ハードだ」という印象がついて、そこでの受験を避ける傾向が、特に都内では見られます。ですから、都内の親御さんは、大学の内部推薦の状況を気にされる方が多いです。「できるだけ受験をしないで大学まで」ということですね。

注目!新しく継続校になる小学校・新設小学校

先ほど挙げました【宝仙学園小学校】は、前年は減少に転じたのですが、来年は宝仙学園の理数インター中学校・高等学校が順天堂大学の系属校になるのです。医療系に強い順天堂大学の系属校なので、こちらの中高は今年は志願者が増えるでしょう。となると、小学校の人気にも影響があるのではないかと予想されます。

順天堂大学は、医学部生の定員が比較的大きく、これまでは付属校がなかったのです。今回初めての系属校となります。青山学院大学横浜英和と同じで、新たに大学への系属校となる小中学校は大変人気が出ます。ここにも「できるだけ受験をせずに大学まで」の背景が見て取れます。

また、埼玉では今年4月から【開智所沢小学校】が開校しました。昨年はこの学校、小1〜小6まで一気に募集したのです!埼玉はまだ私立が少ないせいか、こうした全学年での募集が認められていまして、埼玉に住んでいるサラリーマン層に人気です。中学受験を回避して、大学受験に向けてゆっくり準備していこうという考えが、このように東京郊外にも広まっています。

森上:県で言うと、茨城県の公立の中高一貫校は人気です。茨城知事が4年前から中高一貫校を11校作ろうという政策をとっていて、この数年で相次いで設立しました。塾も高校受験から中学受験にシフトして塾市場が燃えています。東京の感覚に近くなっていますね。子供たちに良い環境ができれば、ファミリー層が増えて、税制も安定します。茨城県は、そういう意味で積極的ですね。

千葉県流山おおたかの森あたりと似た状況が起きています。商業施設ができて東京からのファミリー層の流入が増えて、タワマンができる地域では、必ず受験がホットになる傾向があります。都心の湾岸地区で、その傾向が見られます。

2024年度の入試傾向の変化は?

──入試内容に変化はありますか?ペーパーの重要度はどうでしょう。

森上:入試傾向はあまり変わっていないと思います。ただ、世の中的には非認知能力が強調されるようになりましたが、一方で小学校受験界ではペーパー試験で認知能力をしっかり見る傾向が強まっているのではないかとも言われているんです。

これは、受験生のペーパーの成績が、全体としてわずかながら低下してきていることに起因しています。この流れはどうなっていくのか?私も注目しています。

一方で少子化に直面して、入試を緩和しペーパーなしの私立小学校も今年は増加します。子供の人数から申し上げて、倍率は穏やかには緩和していくだろうと思いますが、先ほども申し上げましたように、急には変化しないでしょう。

──幼児教室の現場ではどんな変化が?

江藤:今の30代の保護者には、ひと頃に比べて子供の自主性を尊重しようと思う人が増えましたよね。親自身が実際に社会に出てみて「勉強だけじゃないな」などの実感が強いのではないでしょうか。

だからか、ペーパーのお勉強を無理強いしない親も増えました。それによってガミガミ言われ、まるで調教されるかのごとく、勉強をさせられている子どもは減少傾向にあるかもしれません。

ただエリアによっては依然として加熱していて、特に首都圏ではまだまだホットです。そこには計り知れない親御さんの苦労、ストレスがあります。

親が「どこまで手をかけていいのか、どこまでやらせるのか」という葛藤を抱えているのを感じます。実際に弊社の幼児教室の保護者さま、一番多い悩みは「どこまで手をかけていいかわからない」です

──親たちもどの価値観で子供を育てて良いのか、悩んでいるんですね。中受と違う、小受の難しさはありますか。

江藤:小学校受験では子供に自覚はないので、いかに子供を楽しく乗せていくか、その仕掛けが大事です。中受とは異なる親の覚悟も必要です。

小学校受験の子供は、年齢的に嫌いなことはやらないです。親に言われても、やらない。大人が何も仕掛けていかなければ、嫌いなことは、基本やらないわけです。お教室に入った途端に泣き出す子もいる。子供への関わり方が、本当に難しいですよね。

ですから、ストレスは絶対にあるので、覚悟を決めるしかないのだと思います。小学校受験をするのならば、入るまでのプロセスも含め、「ストレスはあるのだ」という覚悟を親自身がすること。そのストレスが小さいうちに発散する工夫や、頼れる人を見つける、また受験のサポートを家族内でどう分担していくか、ルールを決めることも大切ですね。

自分の感情のコントロールができるように、感情リテラシーを高める必要がありますね。自覚と早めの対処、これが悩みの渦に巻き込まれないコツです。

──他にコツは?

江藤:ペーパーなど、受験に向けてやらないといけないことには罪悪感を持たず、良い面に目を向けることも大事です。あとは、知らないことを減らしていく。弊社の幼児教室でも、子供が受験当日知らないことが出てびっくりしないように、という目的で、知識や経験の幅を広げる授業を行っています。スキルを高めることもそうですが、受験当日に「あ、これやったことがある!できる!」と子どもが楽しく取り組めるように、知らないことをできるだけ減らすこと。そうすれば緊張せずに、自然体で能力を出せるようになります。

実際に、ペーパーも大好きな子はあっという間にやります。親の罪悪感は、プラスに転じることがあまりないので、良い側面に光を当てて乗り切っていくことがコツだと思います。

小受か?中受か?は、子供の適正より、親の適性

左から田口さん、 江藤さん、森上さん

森上:親の罪悪感ということで言うと、先祖代々小学校受験を経験しているようなご家庭では、「この学校が良い」「小学校受験はこうすべきだ」「受験した方が良い」という確信を持っていらっしゃいますよね。ブレません。

このようなご家庭の親は、我が子がその学校へ行くことが当たり前と思っていらっしゃるので、ブレない。そこが受験に向かうには強みなんです。逆に、よく分からないけれど、なんとなく始める時には、リスクが伴いますので注意が必要だと思います。

江藤:ブレない、は大事ですね。お父さんお母さんの関わりも重要です。ワンチームになっていれば良いですが、ご両親で意見が違う場合は子供が混乱します。家庭の方針を1つに束ねることもキーになるので、家庭の中での議論も必要だと思います。

──子供の受験の向き不向きはありますか?

受験への子供の向き不向きは、基本的にはないと思いますが、小受は、「本人と家庭」「本人と生活」が見られるので、本人だけではありません。家庭が大事。家庭と学校がどう連携して行けるか、同じ価値観かどうかがすごく見られています。

家庭の価値観、親子の関係性、家庭が子供に向ける眼差し、そこが一番見られるところだと学校側も伝えていますし、実際にそうなのだと思います。

とはいえ当日大人の指示を聞いて、理解して動かなければいけないので、最低限問われることへの練習準備は必要です。その準備を受け入れられないと難しいということになるのかもしれませんが、日々子供も成長しますので、最初から最後まで向いていないのかどうか?その判断は難しいですよね。

森上:子供より親の属性、つまり小学校受験に向いているご家庭、中学受験に向いているご家庭、ということはあるかもしれませんね。親御さんが、ご自身の才能でキャリアを積み上げたタイプのご家庭は、どちらかというと中受が向いているかもしれません。

また、私立小学校と一言で言っても、最近出来た新しい学校と、伝統的な附属小学校とは違います。学校によって子供や家庭に求めている姿が違いますから、相性があるんです。学校との相性が一番重要です。家庭の教育方針と学校が合わないと子供が不幸なので、そこの見極めはとても大切です。

江藤:子供を被害者にしないように向き合っていってほしいと思います。もしもご縁をいただけなかったとしても、それを子供の落ち度としないこと。親も引きずらない覚悟が大切ですね。

──小学校受験では「相性」が大切ということは、頭に入れておきたいですね。

中学校受験2024年の最新傾向はこちらから▼

<こんな情報も>森上氏・江藤氏より「この小学校も素敵です!」

【啓明学園初等学校】

帰国生教育の草分けとして三井家が創設した学園で、三井高維がオックスフォード大学の研究生として海外生活を送った後に、自身の子供を入れるためにイギリスの教育をモデルに創設した学校。

【学びの城 菅生学園初等学校】

広大な土地に畑やビオトープ、清流があり、自然豊かな環境の中で積極的に探求学習を展開している。英語教育にも強い。校長の布村浩二先生も素晴らしい人格者とお二人のお墨付き。

画像ALT

教えてくれたのは…

森上教育研究所 代表取締役 森上展安さん

森上教育研究所を主宰。中学受験や中高一貫教育、学習塾の問題に詳しく公正な立場での信頼あるデータ提供に定評があり私立業界での人脈も広く深い。NHKテレビ出演や著書多数。「わが子が伸びる親のスキル研究会」を主宰し、保護者向けの公開講演会を20年に渡り継続している。

画像ALT

教えてくれたのは…

教育学博士 江藤真規さん

東京大学大学院教育学研究科 博士課程修了。一般社団法人小学校受験協会理事や㈱サイタコーディネーション代表取締役として子育て・家庭教育に関する講演や執筆活動を行う。「子どもの主体性」を伸ばすコーチングスクール、学びの土台作りを目指したクロワール幼児教室を主宰。著書「子どもを育てる魔法の言い換え辞典」「母親が知らないとツライ女の子の育て方」他。娘2人は中学受験を経て東大に現役合格。
▶︎子育てコーチング:サイタ・コーディネーション

画像ALT

Interview&Writing

教育ジャーナリスト 田口まさ美

株式会社小学館で編集者として初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子供の心の育ち、非認知能力・海外の教育などの取材を経験。同社にてファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年以上)携わり2022年独立。現在教育ジャーナリスト・編集者として留学・進路などの情報を発信、本連載を担う。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。
▶︎Instagram:@masami_taguchi_edu

「お受験ママの相談室」他の記事はこちら



Read Moreおすすめの関連記事







スマートフォンプレビュー

【登録無料】
Domaniメルマガ会員募集中

管理職世代の通勤コーデ、明日は何を着る?子供の受験や習い事、
どうする?人気モデル、ハイセンスなDomani読者モデル、教育のプロたちから
発信されるタイムリーなテーマをピックアップしてお届けします。
プレゼント企画やイベント参加のスペシャルなお知らせも!