そもそも「内申点」とは?
内申書とは
「内申」とは、読んで字のごとく、成績を上の学校に内々に申し伝えることで、高校受験の際は中学3年間の総合的な成績のことを指します。「内申」を記載したものを「内申書」といい、学校によっては「調査書」と呼ばれることもあります。生徒の学習や学校生活について中学校が記載し、生徒が受験する高校に提出します。公立高校の一般入試・推薦入試はもちろん、私立高校入試にも選考資料として用いられることが多い、重要な書類とされています。
内申書に記載される成績が「内申点」
「内申点」とは、内申書に記載される点数のことです。中学校での9教科(国語、社会、数学、理科、英語、音楽、技術・家庭、美術、保健体育)の成績を5段階で評価し、合計45点満点の点数を評定として記載します。
高校入試で内申書を評価対象とするのは、中学校での学習の成果をきちんと評価するためです。中学校生活が反映される内申書と、入試当日の学力検査の2つをもとに選考することで、高校入試を一発勝負で終わらないようにしているのです。
内申書に記載される内容
内申書の内容には、各教科の成績の他に、一般的に次のような内容が含まれます。
1:出席日数
2:学級・生徒会の委員経験
3:学校行事での活動状況
4:部活動や課外活動での実績
これらの具体的な記載内容や実技4教科の扱い、何年生の成績を使うかなど、都道府県によって算出方法は異なります。
「内申点」の計算の仕方は?
内申点の計算の仕方は、各都道府県によって違います。ここでは、東京都を例に見ていきましょう。
東京都の「内申点」の計算方法
東京都の都立高校一般選抜では中学3年生の評定(成績)のみを使い、実技教科の評定は2倍にします。たとえば評定がオール5だった場合、5×5教科+5×4教科×2=25+40=65 この65点が満点となります。実技4教科の評定を2倍とするのは、入試でテストが行われない実技の成績も公正に評価する、という考えからです。東京都以外にも、宮城県、京都府など、実技教科の評価に配慮する都道府県はいくつかあります。
高校入試への内申書の影響は?
内申書の情報は高校入試にどう使われるのか、与える影響について見ていきましょう。
「内申書」:「学力検査」の比率
内申書と入試当日の学力検査をどのくらいの比率で加算するかは都道府県、各学校によって異なります。例えば、東京都の場合、2023年度から当日の学力検査の点数と内申点を合計したものに、公立中学校3年生に実施される、中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の結果を加え、総合得点を算出します。学校によっては面接、作文、小論文が課せられる場合もあり、それらを加え、総合成績として合否判定されます。学力検査を5教科で実施した場合、学力検査:内申点の比率=7:3となります。
体育科および芸術科では、実技検査が必ず実施されます。その場合、学力検査は3教科(国語・数学・英語)で行われ、学力検査:内申点の比率=6:4となります。
これらの計算方法は各都道府県によって違いますので、お住まいの地域の教育委員会のホームページなどをチェックして情報収集をしておきましょう。
私立高校の推薦入試を受ける場合
私立高校の推薦入試を受ける場合は、その学校の出願基準を調べておきましょう。各学校には、たとえば「5教科の評定値の合計23以上、9教科合計39以上で2以下がないこと」などと、3年次の成績を足し合わせた内申点の基準を示されます。この条件を満たさなければ受験できません。また、調査書に記される「特別活動の記録」に応じて、内申点に加点する学校も数多くあります。たとえば部活動での全国大会出場経験やコンクール入賞、生徒会や課外活動、ボランティア等での活動、英語検定、漢字検定などの資格取得等です。
内申点の評価はどのようにつけられるの?
内申点の評価は、どのようにつけられるのでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
観点別評価とは
2023年度から、中学校で新しい学習指導要領が全面実施となりました。新しい学習指導要領では、各教科の目標や内容を「知識・技能」「思考・判断・表現」「学びに向かう力、人間性等」といった資質・能力についての三つの柱で再整理しています。学習評価のしくみも変更になり、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つに整理されました。
主体的に学習に取り組む態度とは
文部科学省のホームページにはつぎのような記載があります。
「主体的に学習に取り組む態度」については,各教科等の観点の趣旨に照らし,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組の中で,自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価することとしたこと
「学習を調整する」とは、自分の学習を見直し、試行錯誤を繰り返していくということです。「主体的に学習に取り組む態度」は、例えば「授業中の発言が多い」ということだけを取り上げて評価するのではなく、それが「知識・技能」の獲得や「思考力・判断力・表現力」を身に付けることにどうかかわっているのかということが評価されるということだと解釈できます。
参考:小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)【文部科学省】
内申点を上げるには
では、内申点を上げるにはどうしたらよいのでしょうか? 「知識・技能」をベースに、それを活用した「思考・判断・表現」、そしてこれらの力を身に付けるための学習を進化させる取り組みが「主体的に学習に取り組む態度」というように3つの観点は相互にかかわりあっています。ですから、「何かをしたら上がる」という感覚は捨て、日々の学習を怠らず、中学校生活を有意義に過ごす姿勢が大切です。
日々の授業への積極的な取り組み、忘れ物をしない、提出物の期限を守る、といった生活をしていれば自ずと定期テストの成績も上がってきて、内申点が上がるという結果に繋がります。
最後に
高校入試で重要な要素となる内申点。それは当日の学力検査だけでなく、中学校での学習の成果をきちんと評価した上で合否を判断するためのものでもあります。内申点を上げようと何かを特別に頑張るのではなく、バランスよく中学校生活を送ることが肝要です。なお、学校や地域によって内申点の基準が本記事とは異なる場合があります。一つの参考にしていただけたら幸いです。
※本記事は2023年6月の情報をもとに作成しています。
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執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。