【お受験ママの相談室 |第26回】「つい子どもにイライラしてしまう」「子ども目線になるコツは?」に、てぃ先生のアンサー!
〈お話を伺った方〉
保育士 てぃ先生
聞き手・原稿:教育ジャーナリスト 田口まさ美
Instagram:@masami_taguchi_edu
──第三弾の今回も、気になる働くママの子育てに関する質問を、どんどんお答えいただきます。現場にいたママたちからは深〜いため息が漏れる瞬間も。現役保育士としての、豊富な経験と深い知見からのアドバイス、最終回です!
Q:言うこと聞いてくれない子どもについイライラしてしまう自分。そんな瞬間、てぃ先生ならどういう思考回路になるの?
てぃ先生:僕がどういうことを大事にしているか?というと、保育士としては1つしかないです。それは「目の前の子どもを1人の人間として捉える」ということです。
例えば、僕が田口さんに目の前にあるコップをとってもらいたいとします。そしたら、まずは、田口さんの様子を伺って、今取れる状態かな?と察して、大丈夫そうだったら「申し訳ないですが、コップをとっていただけますか?」と聞きますよね。子どもにも同じことをしていますか? 子どもの様子を観察もせずに、強制的に「12時になったら終わりね!」などと行動を指定していませんか?ということです。
どこかで親は、子どもは親の言うことを聞くものだという思い込みがあるのではないでしょうか。子どもは親の所有物ではありません。多くの場合は、それも、子どもにこうしてあげたい、という親の愛からくるものなんですけれどね。
そして、大事なことがもうひとつ。多くの親は、子どもにイライラしているわけじゃないんですよ。1分後に家を出ないと保育園に間に合わない、なのに子どもが靴を履いてくれない、という「状況に」イライラしているわけです。時間に余裕がいくらでもあったら、同じ状況でも、多分イライラしていないと思うんです。つまり、「子どもに」イライラしているというのは認識違いのような気もするんです。
ですから、自分がイライラする状況や環境を作らないですむ改善点がないか?を探ってみることも大事ですね。
本当のイライラの矛先は、子どもではなく、その状況!
Q:子ども目線になれるコツ・子どもの心理を理解するコツってありますか?
てぃ先生:やっぱり基本は「自分だったらどうだろう?」と考えることです。「今この状況で、どう声をかけてもらったら、自分ならやりたくなるかな?」という当事者目線を持つことです。
例えば、パパはテレビを見ながら、子どもはタブレットを見ながら食事をしているとします。もし、お母さんとして、その状況が好ましくない、子どもにはきちんと食事に興味を持って食べてもらいたい、と思うならば、まず、どうやったら子どもがタブレットよりも食事に興味をもってらえるかな?と考えてみる。
〜1つのお皿にソーセージを乗せて、もうひとつにブロッコリーを乗せ、それぞれの上にグラタンをかけて、中身を隠します。「どっちにソーセージが入っているかな!? 」とゲーム方式にしたら?〜 これなら、子どももタブレットを置いて、食事に興味を持ってくれるかもしれませんよね。
こうしたアイディアが思いつくようになるには、その子を観察して、どういう状態だったら、興味をもってくれるかな?と常に考える癖をつけることです。特別な才能なんて要りません。自分の子どものことなら、よく観察して考える癖をつければ、絶対に誰でもわかるようになってきますよ!
もちろん、考えたことを毎回試さなくてもいいんです。日常生活の中で、そんな暇はありませんから。ただ普段から、こうしたら子どもってどうなるかな?と想像する、いわば”妄想癖”をつけておいて、自分の心の余裕がある時に、そのアイディアをやってみたらいいかもしれませんよ。
子どもが、どうしたら心が動くか?妄想癖をもってみて!
Q:てぃ先生にとって、どんな保護者が素敵だなと思いますか?
てぃ先生:誤解を恐れずに言うならば、「良い意味で、子どもの幸せより自分の幸せを優先してる人」ですね。
僕の講演会終わりに、出待ちのご家族がいて、お子さんも僕と喋りたそうだったとします。でも、子どもを差し置いて(笑)ママが先に出てきてサインを求めてくるような保護者さん、僕は好きです(笑)。「子どもに先に話させてあげなよ」と言う人もいるでしょう。でも、ママが自分の気持ちを我慢しないで最初に自分が出てくる人は、その後に必ず子どもを送り出してきますよ。先にママが幸せになるって、僕は大事だと思うんです。
多くの親は、子どもを愛しているので、例えばディズニーランドに行っても、自分の気持ちが、どうか?ではなく、子どもが笑顔でいるかどうか?ばかりを優先しがちですよね。もちろん、その優しさも素敵なことです。ですが、もし親がミッキーを見て飛び上がって喜んでいたら、それを見た子どもも絶対にうれしいんですよ。
「親が幸せなら子も幸せ」という言葉自体は、よく耳にしますよね。散々聞いた言葉だと思います。でも、実際に実行できているか?というと、意外と忘れてしまっている気がします。
「シャンパンタワーの法則」というものがありまして。シャンパンは幸せの象徴だとして、シャンパンの一番上のグラスは、ご自身で、その下の二段目にあるのが、家族や子どものグラスだとします。その二段目に先に注ごうとするのではなく、まずは一番上にある自分のグラスにシャンパンを注いでください。自分のグラスから溢れ出た幸せが、一番身近な人に、そして周りの人へと注がれていくのです。
子どものために、家族のために、ももちろん良いのですが、それが長期間継続してしまうと、無理が生じてしまいます。そして自分が満たされていないことに気づいた途端、子どものせい、家族のせいになってしまう危険さえ、はらんでいます。そのことを、自分で選択したにもかかわらず、です。
ですから、まず自分のグラスから満たす。そこから溢れたものが2段目3段目にいく。それを忘れないでいただきたいなと思います。お母さんこそ、その意識が大事だと思います。それを「自分ばっかり」なんて言う人もいますが、僕は気にしなくていいと思いますよ!
自分を幸せで満たしている親の子どもは幸せです
田口:ハッとする言葉をたくさん、ありがとうございました。出産をし、乳児を育てる時間は、どうしても自己犠牲の連続だと思うのです。自分の体と一体感のある赤ちゃんを抱きながら、時に自分の欲求さえも無視して子どもに捧げなければならないシーンも多いですよね。
そんな時間を通過して、少しずつ子どもが成長していく時に、母親も上手に気持ちを切り変えていくことができれば良いのですが、なかなかに難しいものだとも思います。
生まれて初めて、自分の命よりも子どもを大切に思う気持ちを知り、次にその大切な存在を自分と切り離して一人の人間として尊重し、さらに自分自身のことも大切にしながら子どものことも見守っていく。ーー言うは易しですが、私もできませんでした(笑)。
でも、だからこそ、てぃ先生の言葉は、価値があるのだと思います。今も、働きながら、子育てもして、日々自分をすり減らしているな、と感じているママさん、お疲れ様です! てぃ先生の言葉を、時々読み返しては思い出し、ご自身を満たしてあげてくださいね。
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教えてくれたのは…
保育士 てぃ先生
現役の保育士でありながら、SNSの総フォロワー数が200万人を超え、幅広い分野で活躍中。その具体的な育児法は斬新なアイディアに溢れ、世のママパパから圧倒的な支持を得ている。著書は累計70万部を突破、全国での講演活動は年間50本以上で、他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。

Interview&Writing
教育ジャーナリスト 田口まさ美
株式会社小学館で編集者として初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子どもの心の育ち、非認知能力・海外の教育などの取材を経験。同社にてファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年以上)携わり2022年独立。現在教育ジャーナリスト・編集者として留学・進路などの情報を発信、本連載を担う。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。
▶︎Instagram:@masami_taguchi_edu
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