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「省みる」の読み方や意味とは
訓読みで「省(せい)」の字を使う「省みる」は、「かえりみる」と読みます。意味は、自分のしたことをもう一度考えることです。そのうえで自分の行動が良いことだったのか、悪かったのかを考える「反省」の意味も含まれます。
そもそも「反省」とは、自分の良くなかった点を認め、改めることです。「反省」という意味もある「省みる」は、素直な気持ちで過去を振り返り、自分のおこないを見つめ直すことを表しています。
「省みる」と「顧みる」や「鑑みる」の違い
「省みる」には、「顧みる(かえりみる)」という同訓異字があります。同訓異字とは、読みが同じで表記が異なる言葉のことです。

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また、間違えやすい言葉として「鑑みる(かんがみる)」が挙げられます。ここでは「省みる」の正しい意味をふまえ、それぞれの違いを確認していきましょう。
かえり・みる〔かへりみる〕【省みる】
[動マ上一][文][マ上一]《「顧みる」と同語源》自分のしたことを、もう一度考えてみる。反省する。「わが身を―・みて恥じる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「省みる」と「顧みる(かえりみる)」の違い
「顧みる」とは、過去を思い出すことです。物事を気にかけたり、後ろを振り返ったりといった意味もあります。
過ぎたことを振り返る点は、「省みる」と同様です。異なるのは、そこに「反省」する気持ちが含まれているかどうかという点にあります。
前述したように、「省みる」は自分のおこないを見つめ直し、悪かった点は改めようと意識することです。一方、「顧みる」は物事を気にしたり過去を思い出したりするだけで、そこに反省の念は含まれていません。
日常会話やビジネスシーンでは、以下のように活用してください。
- 久しぶりに大学時代の仲間に会い、食事をしながら当時を顧みた。
- 彼は自分の危険を顧みず、困っている人たちの救助にあたった。
- 彼女は、仲間の声掛けに後ろを顧みた。
かえり・みる〔かへりみる〕【顧みる】
[動マ上一][文][マ上一]
1 過ぎ去った事を思い起こす。回顧する。「半生を―・みる」
2 心にとどめ考える。気にかける。「妻子を―・みない」
3 振り返って見る。「後方を―・みる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「省みる」と「鑑みる(かんがみる)」の違い
「鑑みる」は、過去の例や手本をもとに現状を見直すことです。何かを参考にする様子を表し、「調査結果に鑑みて」のようにビジネスシーンにも登場します。
「省みる」が自分のおこないを見つめ直すのに対し、「鑑みる」が見直す対象はさまざまです。ビジネスシーンでは、以下のように活用できます。
- 原材料の高騰が続く現在の情勢を鑑み、販売価格の値上げを決定した。
- 最新のトレンドに鑑み、商品の改良にあたった。
かんが・みる【鑑みる/×鑒みる】
[動マ上一][文][マ上一]《「かがみる」の音変化》過去の例や手本などに照らして考える。「時局に―・みて決定する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「省みる」の使い方と例文
「省みる」は、自分を見つめ直す場面に適した言葉です。以下のように、ビジネスだけでなく日常生活でも使用できます。
- 失敗を成功につなげるためには、過去を省みる意識が必要だ。
- 他者に意見する前に、自分の言動を省みてはどうだろうか。
- 取引先への対応に問題があると指摘を受け、それまでの発言を省みた。
- 健康診断の結果に問題があり、乱れた食生活を省みるきっかけになった。
- 多くの人と意見を交わす研修会は、自らを省みる絶好の機会といえる。
- 忙しい毎日に追われていると、自らを省みることを忘れてしまう。
- 周囲を羨ましいと思う前に、自分にできることはないか省みる意識を持ちたい。
「省みる」の類語や言い換え表現
「省みる」には、さまざまな類語や言い換え表現があります。

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それぞれ「省みる」と似た言葉ですが、正確な意味や使用時のニュアンスが異なります。類語や言い換え表現を知っていると、状況に応じた語句を使い分けでき便利です。
ここでは、「省みる」との違いや正しい意味、具体的な使い方についてみていきましょう。
「内省」
「内省(ないせい)」は、「省みる」と同様に「反省」という意味を持つ言葉です。主に、自分の心の中を観察することを意味します。
「省みる」は、失敗や誤りなどをきっかけにおこなうことが多いですが、「内省」は必ずしも悪いことを起点におこなうわけではありません。
あくまでも、これまでの自分のおこないや考えを深く考え直すことを表します。
- 久しぶりに会った友人の活躍ぶりを目の当たりにし、これまでの自分を内省する機会を得た。
- 転職を決意し、一体自分は何がしたいのだろうと深く内省した。
ない‐せい【内省】
[名](スル)
1 自分の考えや行動などを深くかえりみること。反省。「過去を内省する」
2 「内観ないかん」に同じ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「顧慮」
物事をしっかりと考えることは、「顧慮(こりょ)」と言い表します。人や物事に対する気配りを表す言葉です。
物事を考える点は、「省みる」と同様です。「顧慮」には、そのうえで気配りするという違いがあります。使用時は、「省みる」のような「反省」という意味が含まれない点も理解しておきましょう。
- 会議では、自身の立場を顧慮し発言した。
- 彼は周囲の意見を顧慮することなく、自由気ままに振る舞った。
こ‐りょ【顧慮】
[名](スル)ある事をしっかり考えに入れて、心をくばること。「相手の立場を顧慮する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「自省」
「自省(じせい)」は、「省みる」と非常に似たニュアンスの言葉です。主に、自分の言動を反省する際に使用します。
同じ読みの語句に「自制」がありますが、こちらは感情や欲望を抑えることです。「省みる」の類語である「自省」とは、まったく意味が異なります。文書にする際は、書き間違いに注意しましょう。
- 彼女は何度注意しても態度を改めない部下に対し、自省を促した。
- 自分のミスで周囲に迷惑をかけてしまい、自省の念が起きた。
じ‐せい【自省】
[名](スル)自分の言動を反省すること。「深く自省する」「自省の念」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用