「熟せる」(こなせる)の意味とは
「熟せる」(こなせる)は、「熟す」という言葉の可能形です。「熟す」を「~できる」という形に変化させています。

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例えば、「買う」の可能形は「買える」、「待つ」の可能形は「待てる」です。
- 買う→買える
- 待つ→待てる
- 読む→読める
- 書く→書ける
- 話す→話せる
また、「熟す」には以下のような複数の意味があります。
こ‐な・す【▽熟す】 の解説
[動サ五(四)]《粉 (こ)に成す、の意》
1 食べた物を消化する。「胃腸で食物を—・す」
2 かたまっているものを細かく砕く。「畑の土を—・す」
3 技術などを習って、それを思うままに使う。また、身につけた技術でうまく扱う。自在に扱う。「数か国語を—・す」「新型の機器を—・す」
4 与えられた仕事などをうまく処理する。「ノルマを—・す」
5 売りさばく。「在庫品を—・す」
6 見下げる。けなす。
「這入れませんと恐れ入ったら、それ見ろと直ぐ—・されるに極っている」〈漱石・坑夫〉
7 動詞の連用形に付いて、自分の思いのままにする意を表す。うまく…する。完全に…する。「使い—・す」「乗り—・す」「読み—・す」
[可能]こなせる
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
日常生活やビジネスシーンでは、上記の「3」や「4」の意味で用いるのが一般的です。
主に、仕事をうまく処理できることや、身に付けた技術を思いのままに使えることを「熟せる」と言い表します。
「こなす」「こなせる」を使った例文
「こなす」や「こなせる」は、日常生活やビジネスシーンで以下のように活用できます。
- 彼女は営業から経理まで、すべてをこなすスキルがある。
- 彼は、先週導入したソフトをすでに使いこなしている。
- 彼女は、与えられた仕事をいつも1つひとつ丁寧にこなすと評判だ。
- 今日も起床後は朝日を浴び、ストレッチをしてコーヒーを淹れるという朝の日課をこなした。
- 英語を仕事で使いこなすため、週に1度英会話教室に通っている。
- 彼女は、どんな役でもこなす俳優として注目を集めている。
- 食材を混ぜる、刻む、砕く、おろすと1台で4役こなす調理器具を開発した。
- 周囲の協力なく、1人でなんでもこなせると思ったら大間違いだ。
- 経験を重ねた彼女なら、新しい仕事でもこなせると信じている。
- 短期間でなぜこれほど膨大な仕事がこなせるのか、いつか教えてもらいたい。
- 諦めずに鍛錬を重ねれば、難しい仕事もいつかこなせるはずだ。
- 新居のキッチンは、料理を楽にこなせる動線に設計されている。
「こなせる」の類語や言い換え表現
「こなせる」はシーンに応じ、以下のような語句に言い換えられます。

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ここではそれぞれの意味とともに、使用例について確認していきましょう。
「扱える」
「扱える」は、「扱う」の可能形です。「扱う」には「こなす」と同様に、仕事を処理したり、道具を取り扱ったりといった意味があります。
また、「扱う」は「取り扱う」と言い表すこともあります。いずれも「こなす」や「こなせる」と似たニュアンスで、以下のように使用してみてください。
- 新しいソフトを扱えるようになったのは、先輩の指導のおかげだ。
- 最新機種をスムーズに扱えるようになるまで、まだまだ時間がかかりそうだ。
- その問題をうまく取り扱えるのは、部署内で彼女だけだろう。
- 宅配便で取り扱える荷物のサイズや重さについて、確認しておいてください。
「計らえる」
「計らえる」の原形は「計らう」です。「計らう」も「こなす」のように、物事を処理するという意味があります。
異なるのは、相手の事情を考えたり、相談したりといった意味が含まれる点です。特に、物事がうまく運ぶよう、よく考えたうえで処理することは「取り計らう」と言い表します。
- さまざまな経験を重ねたおかげで、チーム内の仕事がスムーズに進むよう、物事を取り計らえるようになった。
「さばける」
「さばける」は「さばく」を可能な形にした言葉です。「さばく」には「裁判する」という意味のほか、物を思いのままに扱ったり、複雑な物事を適切に処理したりといった意味があります。
また、商品を売りつくすことや、食材を包丁でばらばらにすることも「さばく」と表現されます。
- 仕事量が多すぎて、1人ではさばけない。
- 大量に用意した商品が、午前中の間にすべてさばけた。
- 何度も練習したおかげで、魚が上手にさばけるようになった。
「切り回せる」
「切り回す」は、集団の中心になって物事を処理することです。「こなす」とは、主要人物として仕事を処理する点が異なります。
また、「切り回す」には「巧みにやりくりする」というニュアンスも含まれます。
集団の中心として、物事をうまくこなせた際は「切り回せる」という言い換え表現を検討してみましょう。
- オープンの慌ただしさが落ち着き、店舗を1人で切り回せるようになった
- まだまだ、リーダーとして仕事を切り回せる自信がない。
「こなせる」をビジネスシーンで正しく使おう

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「こなせる」には、物事を処理できたり、身に付けた技術をうまく使えたりといった意味があります。「こなす」を可能形に変えた言葉です。
類語や言い換え表現には「扱える」や「計らえる」などが挙げられます。シーンによっては「こなせる」より、これらの表現のほうが適しているかもしれません。
それぞれの正しい意味を知り、日常生活やビジネスシーンでぜひ活用してみてください。
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