歯ぐきからの出血は歯周病の予兆
厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によれば、歯磨き中に歯ぐきから血が出る人の数は20代から少しづつ増加し、40代になると約4割に達するのだとか。また“30〜40代の女性の約半数は、歯を磨いた後にフロスや歯間ブラシを使っていない”という気になるデータもあります。この時期、働く女性は歯の健康についてどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
「一般的な歯ぐきからの出血は“今、歯ぐきが歯周病菌と闘っています”というサインです。歯周病の初期は痛みもないので気づきにくいのですが、歯を磨いている間に自然と血が出てきたら、注意信号だと思ってください。口の中は見えにくいので、どうしてもケアがおろそかになりがちです。しかし、そのまま放置しておくと、歯周病といわれる状態まで悪化します。口臭がきつくなり、歯ぐきが腫れ、最終的には歯を失うことになってしまいます」
フロスは1日1回、自分のタイミングで
「では、歯磨き中に歯ぐきから血が出たら、どうすればよいのでしょう。血が出ると驚いて、その部分を磨くのを避けてしまう人がいますが、それは逆効果です。まず、血が出た箇所の歯ぐきほど丁寧にやさしく、時間をかけて歯ブラシでブラッシングしてください。そして歯を磨いた後に、1日に1回で良いので出血している箇所の歯ぐきの根元から丁寧にデンタルフロスをかけましょう。出血した歯と歯の間にやさしくフロスをかけて丁寧に汚れを落としていくと、歯の間に付着しているプラーク(歯垢)が徐々に取れていきます。これを何日間か根気よく続けていくと、出血が少しづつ減って状態が改善されます」
●デンタルフロスの効果的な使い方(おすすめはロールタイプのフロス)
(1) ロールタイプのフロスを、ケースから30〜40センチほど取り出します
(2) 左右の人差し指に、フロスを巻きつけて安定させます。人差し指に巻きつけるのが難しい場合は、端と端を2回結んで輪っかにすると、簡単に安定させることができます
(3) 歯と歯の間にフロスをやさしく差し入れます。力強く入れると歯ぐきを傷つけてしまうので要注意
(4) 歯の根元から、歯の側面に沿ってやさしく横に動かしながら、上下にゆっくりと移動させて汚れを落としていきます
(5) 逆側もフロスで汚れを落としてから、次の歯と歯の間に移動します
(6) 上下すべての歯にかけ終えたら、使ったフロスは捨てましょう
※もし、ロールタイプのデンタルフロスを使うのが難しいと感じる人は、市販のやわらかい歯間ブラシなどを使って、上記の(3)〜(5)を行ってもOKです。
「歯周病を招くばい菌は、プラークと呼ばれる汚れの中に潜んでいます。プラークは細菌のかたまりで、1gのプラークには約1000億個の細菌がつまっていると言われています。出血は、体のもつ免疫反応がプラークの中のばい菌と闘おうとして起こるのです。忙しい方も1日1回、夜だけでも、全ての歯にフロスをかけていただくと口内環境が少しづつ改善されます。
ちなみに、プラークは目には見えにくく、イメージとしては浴室のバスタブに付くぬめりのようなイメージです。プラークは歯を磨かないことで蓄積されますが、ミネラルが付着すると2日ほどで歯石に変わります。そうなると歯ブラシだけでは簡単に取れなくなってしまうので、早めのケアが大切なのです。
私は夜寝る前の歯磨きの後に、フロスをかけるようにしています。人は眠っている間にだ液の分泌がストップし、口の中で細菌が増えやすい状態になるからです。
フロスをかけずにいることで、歯と歯の間に生ゴミを放置しているのと同じ状態になっている方がいるかもしれません。今はまだ“歯磨き中に歯から血が出ていないから大丈夫”という方も、1日1回のフロスで歯と歯の間をしっかり掃除する習慣を取り入れてみてください。マスクを着けていても、口の中がいつもすっきりした状態で過ごせるようになります」(古舘さん)
取材・文/谷畑まゆみ
教えてくれたのは…
口腔外科医・歯科医師 古舘 健さん
歯科医師・博士(医学)・国立大学法人弘前大学医学部附属病院歯科口腔外科助教。全米トップのがんセンター、MDアンダーソンがんセンターに博士研究員として留学。がんゲノミクス解析に挑戦し、帰国後も兼任予定。北海道大学卒業後、青森労災病院、つがる総合病院などに勤務し、故郷青森の地で地域医療に従事する。口と体を健康に保つ方法を体系化し、発信している。
『万病・突然死を遠ざける近道「口がきれいだと、健康で長生きできる」』(古舘 健著 KADOKAWA刊 1200円+税)
▶︎https://www.kadokawa.co.jp/product/321803001676
フリーエディター・ライター・キャリアコンサルタント
谷畑まゆみ
働く女性のインタビュー企画がライフワーク。カウンセラーやキャリアコンサルタントとしての“聴く”スキルを活かして「YeLL」のクラウドサポーターとしても活動中。Domaniオンラインサロンでは、これまで「女の時間割」にからめた配信に4回登場。執筆協力した書籍、『わかる!伝える!視線の心理術』(造事務所編・メディアパル刊)が10月7日に発売されたばかり。マスク着用やオンラインでの画面越しという、新たな状況の中でのコミュニケーションにおける“人の気持ちを察するための手掛かりの不足によって生じる悩みや不安”の対処法について紹介している。