世界中で大流行中の「オレンジワイン」。耳にしたことある人もいれば、「オレンジワインって、オレンジからできるお酒のこと?」と、不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。オレンジという柑橘類の名を冠していますが、オレンジワインは正真正銘のブドウからできています。では、なぜオレンジワインという名前なのでしょうか? どうやって作られるのか、オレンジワインの特徴やおすすめの銘柄など、オレンジワインに関する知識をまるっとまとめてご紹介していきます。
本記事では、ワインの基礎知識について、京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目・吉田まさきこさんに教わります。後半では、吉田さんおすすめのワインの紹介も。ワインに関する基礎知識を身につけ、あなた好みのオレンジワインを見つける手立てとしていただけたら幸いです。
オレンジワインとは?
オレンジワインとは、白ワインと同じ白ブドウからつくられるワイン。白ブドウを使って、赤ワインと同じ製法で造られたものをいい、大きく分けて白ワインに分類されます。ワインの色がオレンジ色をしていることから、オレンジワインと言われるようになったそうですよ。地域によっては、「アンバー(琥珀)ワイン」と呼ばれることも。
オレンジワインの発祥は?
オレンジワインの発祥は、ワインの発祥地とされている国ジョージア。その歴史は古く、約8,000年も前から造られていたとされています。ジョージアではワインを造る際、「クヴェヴリ」という大きな素焼きの壺が使われていました。このクヴェヴリの中にブドウを入れ、地中に埋めて発酵を促すというのが、オレンジワインをはじめとする、ジョージアの伝統的なワインの製造方法。
この「クヴェヴリワイン製法」は、2013年ユネスコの無形文化遺産に指定されています。
オレンジワインはなぜ、世界に知られるようになった?
ワインといえば、赤ワイン・白ワイン・ロゼワインなどが有名です。世界にオレンジワインが知られるようになったのは、1990年代後半。オレンジワインは歴史あるワインなのに、なぜ後々になって世に知られるようになったのでしょうか? それは、オレンジワインの発祥地であるジョージアの土地柄に関係しているようです。
ジョージアは長い間、旧ソ連の支配下にありました。そのため、オレンジワインが国際市場に出回ることがなかったからだと言われています。しかし、ある自然派ワインの製造者によって、オレンジワインが注目されることになり、世界に広がっていったのです。
オレンジワインとロゼワインの違いは?
色味が似ているオレンジワインとロゼワイン。最も異なる点は、原料です。オレンジワインの原料は、白ブドウ。一方でロゼワインの原料は黒ブドウを用いて造られ、白ワインと同じ製造方法で造られます。
オレンジワインはどうやって造られる?
オレンジワインは、赤ワインと製造工程が同じ。破砕した白ブドウの果皮を果汁と一緒に発酵し、醸してつくられたものです。オレンジワインの造り方を、よりわかりやすくするために、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインの一般的な製造方法についてもあわせて見ていきます。
赤ワインの製造方法
赤ワインの原料は、黒ブドウ。破砕した黒ブドウの果皮、果汁、果肉、種子、すべて一緒に発酵、醸します。アルコール発酵すると、果皮に含まれるアントシアニン(赤や青の色素)やタンニンが溶け出して、赤い色のワインになるのです。
白ワインの製造方法
白ワインは、白ブドウを破砕し、果皮、種子などを取り除き、果汁のみを抽出。絞り出した果汁はタンクに入れてアルコール発酵し、清澄して瓶詰めします。そのため、白ワインにはほとんど色がつかずに、透明がかった黄色(品種や作り方によっては濃い黄色)になるのです。
ロゼワインの製造方法
ロゼワインは黒ブドウから造られ、製造方法は一般的に2種類です。1つは黒ブドウを圧搾し、果皮から色素が移った果汁のみを絞り出し、タンクでアルコール発酵させてピンク色のロゼワインに仕上げる方法。もう1つは赤ワイン同様、黒ブドウの果皮、果汁、果肉、種子、すべて一緒に発酵、醸しながら、途中で果皮などを取り除いて完全に赤色になる前のピンク色でロゼワインに仕上げる方法です。
オレンジワインの製造方法
上述したように、オレンジワインの原料は白ブドウです。収穫して破砕した白ブドウは、果皮や果肉、種子ごとタンクに入れ、アルコール発酵されます。白ブドウを使いますが、製造方法は赤ワインとほぼ同じ。しかし、ワインの色が赤くならないのは、白ブドウの果皮にはアントシアニンが含まれていないから。そのかわりに白ブドウの果皮に含まれる、黄色味がかった色素が溶け出ることにより、通常の白ワインより色が濃くなり、名前の由来である鮮やかなオレンジ色のワインになるんですよ。
わかりやすくいうと、オレンジワインは、「白ブドウ→赤ワインの製造方法」。ロゼワインは、「黒ブドウ→白ワインの製造方法or赤ワインの製造方法を途中まで」で造られると言えます。
オレンジワインの特徴とは?
続いては、オレンジワインの特徴について、クローズアップします。
1:白ワインと赤ワインの魅力を楽しめる
オレンジワインは、白ワインのようなフルーティーな香りと、赤ワインのような渋味やコクを併せ持つのが特徴です。原料に白ブドウを使っているため、果実味が豊か。そして赤ワインと同じように果皮や種子も一緒に発酵するため、渋みや苦味も感じることができます。オレンジワインは白ワインと赤ワインの魅力を楽しめるワインなのです。
2:自然派ワイン
白ワインには酸化を抑制するタンニンが、ほとんど含まれていません。その理由は、白ワインを造る工程で、タンニンを多く含む果皮や種子を取り除くから。そのため、赤ワインに比べて白ワインには、どちらかというと酸化防止剤を少し多めに使う必要があります。しかし、オレンジワインは、赤ワインと同じように果皮や種子と一緒にアルコール発酵されるため、タンニンが含まれます。
このことから、オレンジワインは、酸化防止剤の添加を抑えて造ることが可能なんです。だから、自然派ワインとして注目されているんですよ。
オレンジワインのおすすめの銘柄
おすすめのオレンジワインの銘柄を京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目・吉田まさきこさんにお聞きしました。
デラタイト ヘルズ・ウィンドウ 2022
くせが強すぎるオレンジワインも多い中、こちらは華やかな香りとしっかりした味わいがあるのに、嫌味がなくとっても美味しい! と人気の、芳醇でジューシーな果実味のオレンジワインです。
ゲルノット&ハイケ・ハインリッヒ グラウエ フライハイト 2020
世界一位に輝いた実績を持つオレンジワイン! 金柑やオレンジなどを思わせる果実味に、ジャスミンや紅茶を思わせるような風味が複雑に絡み合います。(数量限定)
オレンジワインに合う料理
赤ワインと白ワインの魅力を併せ持つオレンジワイン。そのため、オレンジワインと相性の良い料理は幅が広いといわれています。爽やかな甘さがあり、軽すぎず飲み応えがあるオレンジワインは、インド料理や韓国料理、タイ料理など、ワインとの相性が難しいとされていた香辛料が効いた料理にも良く合いますよ。
また程よい甘さを感じるため、魚卵や味噌を使った和食などとも相性が良いワインです。
最後に
長い歴史を持ち、白ワインと赤ワインの魅力の両方をあわせ持つオレンジワイン。料理との相性も幅が広く、今まで知らなかった方や、気になっていたという方も、飲まれてみてはいかがでしょうか?
監修
吉田まさきこ
京都で100年以上続く老舗ワイン商「ワイングロッサリー」の3代目。
J.S.A.認定ソムリエ
シャンパーニュ騎士団公認 オフィシエ(将校)
アルザスワイン騎士団公認 シュヴァリエ(騎士)
アカデミー・デュ・ヴァン講師
ヨーロッパを中心に世界各地のワイン生産地を幾度も訪問し、ワインを学ぶ。それら一流の生産者たちとワインイベントを開催し、交流のコーディネイトを行なう。ショップでは世界各地の地域のワインを多種取り扱うが、特にブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザスでの滞在が長いためこの地域のワインは日本有数の品揃えを持つ。初級~専門分野までのワインセミナーも多く実施し、中でも京都の持つ和の食文化とワインのマリアージュを強みとしている。
構成・執筆/京都メディアライン
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