なんか意外だったね
【登場人物】
あん(私)…メーカー勤務のシングルマザー。8年前に離婚し、実家に出戻り。39歳。
蓮…生意気盛りの小学生。11歳。
臣斗くん…あんの会社の後輩・海斗くんの大学の同級生。34歳
【前回までの話】
シングルマザー歴8年目にして、子連れ再婚を果たしたあん。しかし、事実婚で結婚指輪も婚姻届も、新居もない「ないない尽くし」からのスタート。挨拶の席で義母に蓮の中学受験をゴリ押しされるも、金銭的にも蓮の性格的にも無理だと判断したあん。
Season1『シングルマザーの恋愛』はコチラから。
前回の話▶︎息子、突然の中学受験宣言!? ママ友に調査するもそんな簡単には…【39歳、子連れ再婚の365日 vol.3】
蓮の受験勉強は順調! 一方私たちは家の購入で意見の食い違いが。
こんにちは。バツイチ子持ちで再婚をしたあおいあんです。
前回は息子の蓮から「結衣ちゃんと一緒の中学へ行きたいから受験する」と、6年生になってからの中受宣言をされて慌てふためいた様子をお届けしました。
すぐに「もう無理~」「やっぱや~めた」と中受を投げ出すかと思っていた私に反し、蓮は水を得た魚のように塾の勉強に夢中になっていた。週末は父親になった臣斗くんの家に泊まることになっているので、分からないところは臣斗くんにしつこいほど聞いて、なんとかついていかれていた。
臣斗
蓮が部屋に篭りテキストを解いている間、私たちはリビングで一休みしていた。
私
今からこんな調子だと、2月まで持つのかどうか。でも臣斗くんが勉強教えてくれるから、授業でもしがみついていられるんだと思う。ありがとう
蓮は平日でも、分からないところがあるたび臣斗くんへ連絡し、臣斗くんもできる限り早いレスポンスで対応してくれている。仕事で忙しいにも関わらず、私にはできないことを担当してくれて、再婚して良かったなと素直に感謝の気持ちで溢れた。
臣斗
ここ何日か考えていたんだけど、あんの実家の近くに俺たちの家を買うのはどうかな? マンションでもいいけど
私
えっ? 買うの?
臣斗
家族になったわけだし、蓮の受験勉強を見てあげるためにも、やっぱり一緒に住むのがいいのかなって? でもあんのお母さんのこともあるから、実家の近くにと思ってる
いやいやそこではない。家を購入するってことだよ。今のこのご時世で買うのはどうかと思う。私は一人っ子だから一軒家の実家は残るし、もし実家を出ることがあっても賃貸で十分だと思ってる。
私
蓮の受験を考えれば今は臣斗くんと暮らすのがいいかもしれない。すぐに勉強を教えてもらえる環境はベストだと思うよ。でもいずれは実家の一軒家は私が引き継がなきゃいけないから、家を購入するのはもったいないかなって。それに臣斗くんの実家だって一軒家だし…
臣斗
俺の実家は両親が住まなくなったら売ることに決まってるんだ。姉も結婚して出ていったし、古い家を相続しても、税金を考えるとあまり得にはならないらしいから。だからいつかは家を購入しようと思ってたんだ。今がその時なのかなって
臣斗くんはずっと考えてきたのかもしれないけど、私にとっては初耳なこと。
私
賃貸じゃダメなの?
臣斗
住宅ローン組むにも年齢的にそろそろリミットが見えてきたし、賃貸で同じ金額払うなら、資産として手元に残る方が良くない? 最近、子育て世帯への金利引き下げ案も政府から発表されたし
私
うーん、賃貸なら好きな地域に住めるし、部屋の大きさも変えていかれるよ。でも購入しちゃうと、例えば隣の家が意地悪な人だったり、ゴミ屋敷になってもなかなか手放せないよ。ずっと先だけど私たち2人になったら部屋が広いと寂しいし、掃除も大変になると思う
臣斗
そうなったら売ったらいいよ
私は言葉に詰まった。家の購入って、私にとっては大きな買い物。適さなくなったら売ればいいって、なんか違和感を感じちゃう。臣斗くんと私の考えは真逆にあるっぽい…この話題は平行線な気がした。
蓮
臣斗くん、また分からないところがある
臣斗
OK! 今行く
タイミングよく蓮が部屋から出てきた。もしかしたら聞いていたのかもしれない。私は夕飯の買い物へ出かけた。勉強を頑張ってる蓮のために大好物の餃子にしようと思い、食材を買っていると、隣の親子の会話が耳に入ってきた。
「このキャベツは群馬でしょ。はい、群馬のどこが有名で、なんて言う農法でしょう」と話すお母さんに女の子は「そんなの簡単! 嬬恋村で高冷地農業」と答えている。すかさずお母さんは「ではなぜ高冷地農業をするのでしょうか?」と質問していた。
この女の子も受験するんだな。このお母さんみたいに私は熱心になれるだろうか。本当のお父さんじゃない臣斗くんの方が、蓮のことをしっかり支えている気がする。私は中受も家の購入も、固定概念にべったりで積極的な考え方をしていない。思考停止状態。臣斗くんの方が、その時必要なものを柔軟な考えで提案してくれている。スーパーでひとりぼんやりと自分の不甲斐なさに気づいた。
私
ただいま
臣斗
おかえり。夕飯作り手伝うよ
私
蓮はまだ勉強してるの?
臣斗
うん。さっき分からないとこ教えたら、やる気スイッチ押されたみたいで笑
餃子の皮に餡を包む作業を臣斗くんがやってくれた。餃子を作るときはいつも蓮が手伝って一緒にやっていたのに、受験勉強が始まると、そんな些細なこともできなくなるのか。ちょっと寂しい気持ちになった。
蓮
お腹すいた~
私
もうできるから、ちょっと休憩してて
急いで用意をし、3人で夕飯を食べているとき、ボソッと蓮がつぶやいた。
蓮
おばあちゃんも今頃夕飯食べてるかな。俺、包んでないけど餃子持って帰ろうかな
餃子を包めなかったことを悲しく思ったのか、母のことを思い出したのか分からないが、蓮の顔がちょっと切なそうに見えた。食後に蓮と臣斗くんの仲を深めようと持ってきたカードゲームで遊んだが、それに反し、私と臣斗くんの間には家の購入問題で小さな溝ができたように感じた。明日は月曜日、蓮の学校があるため、息子と私は実家へと戻った。
家に戻ると、父が落ち着きなく玄関の前を右往左往していた。話を聞いてみると…。
あおいあん
契約社員でメーカー勤務、現在38歳のシングルマザー。高学年になりちょっと生意気になった10歳の息子と実家に出戻り。40歳を前に「もう一度、女としての人生を!」と一念発起。離婚をしてから7年という恋愛ブランクを埋めるべく奮闘し、5歳年下の彼氏と再婚を決めた。
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