片岡千之助さん主演、『橋ものがたり「約束」』完成披露上映会
時代劇専門チャンネルの特別ドラマ『橋ものがたり「約束」』。藤沢周平の時代小説の映像化で、時代劇初主演の歌舞伎界のホープの片岡千之助さん、透明感と存在感を併せもつ北 香那さん、元宝塚歌劇団雪組トップスターで映像作品初出演の望海風斗さんら、注目の俳優が数多く出演。監督・脚本を『北の国から』シリーズや、他の藤沢作品の映像化を手がけた杉田成道さんが務めました。
完成披露上映会ではこの4名に加え、千之助さん(幸助)の子供時代を演じた小谷興会さんと、北さん(お蝶)の子供時代を担った今濱夕輝乃さんが登壇。中井美穂さんを司会に迎えた舞台挨拶を紹介します。
写真をもっと見る揺れる心情に美しい風景が重なる究極のラブストーリー。出演者と監督のコメントはこちら
主演の幸助を演じた片岡千之助さんは時代劇初主演。リハーサルを経ての撮影を行ったそう。
「歌舞伎の舞台が軸としてありますが映像の経験はまだまだ浅いなか、監督からいわれたのが『とにかく自然なお芝居を』ということ。それを常に念頭に置きながら、自分の中で試行錯誤しつつ挑戦させていただきました。歌舞伎と時代劇は近しい感じなので少しはできるかなと思ったのですが、例えば着物を着てお芝居をしようとすると“歌舞伎”が出てきてしまう感覚で…。そこが難しかったです」(千之助さん)
写真をもっと見る千之助さんのおじいさまは、映像作品にも多く出演されていた十五代目 片岡仁左衛門さん。
「撮影が始まる前日に電話をして、お芝居をするということに力が入ってしまうという悩みを話したところ『映像というのはカメラの前に立つだけで芝居やからな』と言われ、その言葉を受けてなんとかやらせていただきました。歌舞伎もまだまだ未熟ななかでの映像作品で厳しく見られると思いますが、とにかくやりきったよと報告したいです」(千之助さん)
幸助がずっと想いを寄せている幼なじみのお蝶を演じたのは、さまざまな作品で活躍されている北 香那さん。
「杉田監督の演出は、ひとことで言うと“ぞっこん”! 監督の演出のご提案に『こんなやり方があるんだ』と毎日ハッとさせられていて、そこにお蝶の心を寄せていく作業が楽しくてワクワクしていました。お休みの日が寂しかったくらい(笑) なにも考えず杉田監督にすべてを委ねて、夢中になってお蝶を演じていました」(北さん)
写真をもっと見る水の中での演技も注目したいシーンのひとつで、北さんは泳げないにもかかわらず楽しく演じることができたのだとか。そんな北さんを「怪物」と言う杉田監督。
「ひとつボールを投げると、さざ波が返ってくるどころではなく大波がくるという感じ。そのスケールはスタッフも驚くほどでした」(杉田監督)
幸助とお蝶の子供時代を演じたふたりのピュアな存在感も見逃せないところ。幸助の幼少時代を演じた小谷さんが印象深かったことを披露してくれました。
「カットがかかったときに杉田監督が『うん、そんな感じだな』とおっしゃったので、やっとOKが出たとホッとしたら『よし、もう1回いこう』ということが何回かあり、それが心に残りました。撮影は大変なことも多かったですが、先輩方と同じように指導をしていただけたことは自分にとって大きな宝です」(小谷さん)
小谷さんは千之助さんについて「自分にとってはお兄ちゃんみたいな存在」。千之助さんは「こんな出来のいい弟がいたらいいなと思うほど。学ぶことも多かった」と、なんとも真面目な幸助たちです。
お蝶の幼少時代を演じた今濱さんも撮影の思い出を話してくれました。
「木の棒を振り回しながら喧嘩をするシーンで、私は何度か棒を折ってしまって申し訳なかったです。力の加減が難しいなと思いました」(今濱さん)
さすが剣道上級者! 杉田監督作品に出られたこと、きれいな北さんの幼少期を演じられたことは本当にうれしかったそう。それを聞いた北さん、今濱さんを抱きしめてニコニコ。
「ここではこんなにかわいいですが、お芝居を見たらみなさんびっくりしますよ。幼少時代のふたりの助走に乗れてやり遂げられたと思っているので、感謝しています」(北さん)
映像初作品であり、宝塚歌劇退団後の時代劇出演も初めての望海さん。舞台では約1か月の稽古を経て本番を迎えるということから、今回も監督との話し合いの中で事前稽古をやることが決まったのだとか。
「でも実際に現場に入ったら、タイムスリップしたのかなと思うくらいすべてがリアルで。そんな世界に助けられ、そこにただ存在しているということが大事だということを勉強させていただきました。同じ場面、同じセリフを何回も撮り、いいものを繋げていく映像作品の作り方を経験したことで、これから映像を観るときに『大変な苦労をしてこの作品を作り上げたんだろうな』という視点になりそうです」(望海さん)
望海さんが演じられたのは、ちょっとワケありのおきぬという役。主人公の幸助とのシーンが多かったそう。
「家の中にいることが多く、おきぬの内面にある孤独感や寂しさがそのセットの中にいると自然に流れてきたように思います。監督が『こうしてほしい』ということを都度都度伝えてくださったので、それに素直に、自然に乗り切ることを大事にしていました」(望海さん)
写真をもっと見る作り込む舞台とは違い自然に存在することが求められる映像作品で、「思い返してみると、もっとこんなことができたんじゃないかと後悔ばかり」と話す望海さんでしたが、監督も思うところがあったようです。
「芝居をしないで立つということが難しいんですよね。望海さんは、すでに存在感が備わっているから、それだけでよかったんです」(杉田監督)
杉田監督が考える藤沢周平作品の魅力や、登場人物の心情に重なる美しい風景映像のこだわりについてのお話も。
「藤沢先生の作品のいちばんの魅力は人情の機微。時代劇はどうしてもアクションに寄りがちななか、日本人の根底に流れている大事なことをうまくすくい取ってくれるように思います。風景の中に人間が立って自然に溶け込むからこそリアリティが生きるというか、絵空事でないことが伝わるのではないでしょうか」(杉田監督)
写真をもっと見る「橋ものがたり」ということでポイントになっているのは、橋。幸助とお蝶をつなぐ橋のシーンのロケでは山口県にある錦帯橋が使われています。
「本当にすごい橋。ずっと同じ場所で撮影しているのに、風の吹き方や水の映り方の違いでまったく世界が変わっていくような不思議な感覚があって、大好きになりました」(北さん)
「日本三名橋のひとつ。見た瞬間、スケールの大きさに圧倒されました。江戸時代にこんな立派な橋が作られたことに驚きましたし、その後の歴史も興味深い。あそこでのシーンはお蝶さんの見せ場ですよね。錦帯橋=お蝶さん、というイメージです」(千之助さん)
最後に、この作品の見どころと意気込みをうかがいました。
「宝塚歌劇団雪組以来の三味線で、あの歌を歌っています。男役でやったのとは違う、今回のおきぬという役の生きざまや優しさ、寂しさが表れていると思います。あとは幸助さんとお蝶さんのストーリーの、いいスパイスになっているのではないでしょうか」(望海さん)
「錦帯橋でのシーンは、場所の力も借りて見応えのあるものになっていると思います。あと、他のキャストのみなさんも本当に素晴らしくて、幸助とお蝶をみなさんにきれいな円で囲んでいただいたような感じ。こうちゃん(幸助)との美しい青春を見ていただいて、笑顔になるのか涙するのかは、みなさんの感情におまかせします」(北さん)
「ポスターになっているお蝶さんのシーンです。そして、監督のものすごいパワーと、その監督に“怪物”と称された北さんの圧倒的な存在感、タカラヅカのトップスターからの振り幅が大きな望海さんの演技、ちび幸助とちびお蝶の頑張り。自分もなんとか出せたかなと感じており、それぞれの捉え方ができる美しい話になっておりますので、多くの方に観ていただきたいです」(千之助さん)
「世の中でいちばん美しいものは人を思いやる心。…と藤沢周平先生はおっしゃっているのではないかと思いながら、ずっと撮影をしていました。全員で生み落としたこの作品を育ててくれるのは観る側のみなさん。なんとか育てていただけたらと願っています」(杉田監督)
(C)日本映画放送 藤沢周平(R) 構成・文/淡路裕子
橋ものがたり「約束」
【あらすじ】
錺(かざり)職人のもとに奉公していた幸助は、ようやく8年の年季が明けることになった。幸助には想いを寄せる幼なじみのお蝶という娘がいた。5年前、幸助とお蝶は年季が明けるその日、刻は暮六ツに、萬年橋で会う約束をしていた。互いに想いながらもこの5年の間、幸助は人には言えない秘密を抱えていた。また、お蝶の身にも幸助には話せない辛い思いがあった。橋が見渡せる近くの境内からそっとお蝶を探す幸助。懐にはお蝶のために作った簪(かんざし)が入っている。果たして二人は萬年橋で再会することができるのか……。
【作品概要】
原作:藤沢周平「約束」(新潮文庫/実業之日本社『橋ものがたり』所収)
出演:片岡千之助、北 香那、望海風斗
山口紗弥加、春海四方、藤田朋子、浅野和之、余 貴美子
武田鉄矢、風吹ジュン、橋爪 功
監督・脚本:杉田成道
脚本協力:池端俊策
音楽:加古隆
製作:宮川朋之
プロデューサー:秋永全徳 荒瀬佳孝
制作:日本映画放送
制作協力:松竹撮影所
【放送日時】
「時代劇専門チャンネル」にて2月3日(土)よる7時 TV初放送
※リピート放送は2月25日(日) ひる12時
【期間限定特別上映】
1月26日(金)より新宿ピカデリー/MOVIX京都にて期間限定特別上映
※新宿ピカデリーにて、片岡千之助・北 香那・杉田成道監督登壇の初日舞台挨拶を開催(1月26日(金)10:00の回上映後)