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LIFESTYLE インタビュー

2024.08.24

「不思議な経験が日常茶飯事…」〝事故物件住みます芸人〟松原タニシさんの実話怪談〈前編〉

 

あの世にいる魂が、この世に帰ってくるお盆が過ぎましたが、9月のお彼岸あたりまでは、あの世とこの世の境目が曖昧になる雰囲気は続いています。いないはずの人が見えたり、聞こえないはずの声が聞こえたりすることも…。「霊感が全くない僕であっても、お盆は“あれ?”と思うことが増えます。まあ、お盆に限らず、場所やモノのについた気のようなものが、生きている私たちに何かを訴えるようなことはよくあるんですよ」と言うのは、“事故物件住みます芸人”として活躍する松原タニシさん。実話怪談の作家としても高い評価を得ており、 7作目となる怪談本『恐い怪談』(二見書房)は、続々と重版して4刷出来。運営するYouTubeチャンネル『松原タニシのぞわぞわチャンネル』では、全国各地の心霊スポットを訪ねています。「最新刊、『恐い怪談』には、僕が聞いた100の怪談を収録しています。事故物件に10年以上住み、心霊スポットでも怖い思いをしてきましたが、そんな僕でも怖いと思う話を集めています」そんな松原さんに、怖い話を伺いました。

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不思議な経験が日常茶飯事に

人が殺されたり、自ら命を絶ったアパートやマンションは“事故物件”と言われています。そこに12年以上住み続けている松原さんは、「不思議な経験が日常茶飯事になっています」と語り始めました。

夜のマンション

(c)AdobeStock

誰かが外からドアを開けようとノブを回す音が聞こえたり、入居したばかりなのに、排水溝にごっそりと髪の毛が絡まっていたりなど、枚挙にいとまがありません。ラップ音や、電気製品の不調などは“当たり前”になっています。

僕が借りている17件目の事故物件は、幽霊が出る物件です。ここを教えてくれたのは、このリフォームを担当した業者のYさん。彼は作業中に「誰かがいる」と人の気配を感じます。すると、その瞬間に、キッチン横の浴槽の扉が開き、黒い人影がのっそりと姿を現した。その影がだんだんYさんに近づいたので、慌てて外に出て、自分の車に戻ります。

取り乱しながらも管理事務所に連絡すると、担当者は「そこは203号室ですか?」と冷静に言う。そうだと伝えると「そこね、事故物件なんですよ。3か月間に孤独死がありました」と。亡くなった直後、管理事務所は祈祷師を呼び、お祓いをしようとしたら、当の祈祷師が取り憑かれてしまい、突然怒り出してお祓いにならなかったそうです。

これは遺族が来ないとダメだと連絡をすると、遺族はそこにくる途中事故に遭い、来ることができませんでした。その緊急措置として、祈祷師は風呂場に大量の塩を撒いたそうです。

僕はYさんの話を聞き、「確実に幽霊が出る物件だ」と、契約します。何度か寝泊まりしていますが、黒い影が現れることはありませんでした。しばらく家を空けて、数ヶ月ぶりに訪れると、インターホンに履歴があり、それを見ると訪問者らしき人の体の一部が画面に残っていました。その訪問者は真っ黒でした。

その部屋に思いを残して亡くなると、幽霊になって生きている人に姿を現す。

そうかもしれませんね。今、全国の心霊スポットを巡っていますが、あえて周囲に人がいない深夜に訪ねています。だいたいのスポットは人がいないのですが、丑の刻参りで知られる、愛知県名古屋市の尾張戸神社に行ったときは、そこで僕は、まだ乾いていない泥の手形を見てしまったのです。

手形

(c)AdobeStock

丑の刻参りは、人に見立てたわら人形に五寸釘を打ち、相手に呪いをかけるお参りです。その姿を見た人を殺さなくてはならないという掟もあります。泥がしたたり落ちる手形を見て、“誰かがお参りしている”と思った僕は、慌てて山を下りましたが、後ろから誰かが追いかけてくる気配がある。捕まったら殺されると、必死で逃げました。

“出る”と噂がある神社の階段では、誰もいないはずなのに、複数の人が追いかけてくる足音が聞こえたこともありました。階段を登り始めると「ザッ、ザッ」と足音が聞こえる。振り返ると誰もいないんですよ。あれは、いったい何なんでしょうね。

今、多くの番組やイベントに出演しており、“見える人”にお会いする機会も多いです。ある方は、死期がわかる能力があり、「黒い影が見えた人は、まもなく亡くなるんです」とおっしゃっていました。

事故物件に住んでいると、病気、事故、事件などであっけなく命は消えていくことが身をもってわかります。その女性は生命が消える気配がわかるんでしょうね。幼い頃からその力があり、お母様から「人には言ってはダメよ」と言われていたとおっしゃっていました。

土地や場所にある力と、人の思いが重なると、生きている人に、不思議な体験をもたらします。

人でないこともあるんですよ。屋久島には山姫という妖怪がいます。美しく若い女性の姿をしており、訪れる人に微笑みかけるのだそうです。しかし、そこに笑顔を返してしまうと、荷物を引きちぎって投げられ、命まで奪われてしまうのだそう。

屋久島の縄文杉

(c)AdobeStock

ある女性から「父が山姫に会った」という話を聞きました。両親と3人で屋久島に行き、無事に縄文杉を見ることができたそうです。問題は、帰りのルートです。途中のトイレにお父さんだけが行き、帰ってくるとヘラヘラと笑っており、明らかにおかしい。

女性は「お父さんどうしたの?」と聞くと、「何でもないよ」と返答したそうです。そうするうちに、霧が出てきてたちまち濃霧になった。道の目印になる、木に結ばれた紐も見えなくなり、ガイドさんともはぐれてしまった。

山は、日が落ちる前に下山しないと、命の危険があります。動物に襲われるかもしれませんし、雨が降ってしまえば、低体温で命を落とす可能性もありますから。どこに向かって進めばいいかわからなくなり遭難状態に。「このままでは3人とも死ぬ」と感じた彼女は、両親を待機させて、ガイドさんを探しに行きます。

しばらく歩くうちに霧が晴れ、幸運にもガイドさんと救助隊に出会えた。両親がいる場所に戻り、3人で無事に下山をしました。お父さんは遭難している間も、ずっとヘラヘラと笑っていたそうです。

下山して正気に戻ったお父さんに、「トイレで何があったの?」と聞くと、全く覚えていない。それどころか、下山するまでの記憶がなかったのです。その時、女性は「父は山姫に会ったんだ」と確信します。

山では多くの方が命を落としています。妖怪に限らず、人の無念の思いが集まっているのでしょうね。

「命に関わることが、いちばん怖い」と語る松原さんは、新刊『恐い怪談』(二見書房)でも、多くの怖い話を紹介しています。見えない世界は、私たちのすぐそばにあるのかもしれません。

「背後に誰かがいる…」〝事故物件住みます芸人〟松原タニシさんの実話怪談〈後編〉

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『恐い怪談』

松原タニシ著 1650円 二見書房
“百怪談”を収録した実話怪談集。すべて“実話”という読み応えたっぷりの一冊です。事故物件怪談、間取り図、心霊写真、呪われた絵、心霊スポット、見たら死ぬ夢など、読み応えたっぷり。

二見書房:松原タニシ特設サイト

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インタビュー

松原タニシ

1982 年兵庫県神戸市出身、松竹芸能所属のピン芸人。「事故物件住みます芸人」として活動。2012 年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまでに大阪、千葉、東京、沖縄、香川など 17 軒の事故物件に住む。事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演。著書に『事故物件怪談 恐い間取り』『異界探訪記 恐い旅』『恐い食べ物』(以上、二見書房)ほか多数。YouTubeチャンネル『松原タニシのぞわぞわチャンネル』も好評。

◆YouTubeチャンネル:『松原タニシのぞわぞわチャンネル』

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