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2025.01.21

有給を使い切った後欠勤すると解雇される? まず知っておきたい基礎知識【社労士監修】

誰しも予期せぬタイミングで、体調不良ややむを得ない理由により、有給休暇を使い切った後に休暇を必要とする場面が出てくることがあります。この記事では、有給休暇を使い切った後の欠勤のリスクやトラブル予防策を紹介します。

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有給休暇は、体調を崩してお休みする時、プライベートな用事でお休みしたい時などに大活躍する、大事な制度です。では、この有給休暇を使い切った後、お休みしたい場合はどうしたらいいのでしょうか?

「休みます」と連絡すると、一般的には、欠勤扱いとなります。欠勤は、給与やボーナスが減るうえ、対応を誤ると、解雇につながるトラブルとなる可能性があります。この記事では、欠勤による解雇や、給与や評価への悪影響などの欠勤のリスク、欠勤によるトラブルを防ぐための対策について、詳しく解説します。

まずは自分の有給休暇の残り日数を確認しておきましょう

法律では、働き始めて6か月たつともらえることになっている、有給休暇。「半年以上働いているな」という方は、ご自分の有給休暇が残り何日あるか、すぐに確認できますか?

有給休暇が何日与えられているかの全国平均は、2024年12月に厚生労働省から公表された「就労条件総合調査」でわかります。2023年の1年間で、労働者1人あたり、平均16.9日となっています。

参考:「令和6年就労条件総合調査」(厚生労働省)

有給休暇は、週に何日働くことになっているか、どのくらい継続勤務しているかにより、与えられる日数が変わります。最初の6ヶ月間勤務して、最初に与えられる日数は、週5日勤務で10日、週1日勤務で1日です。

それから年1回、新しい有給休暇が付与されることになります。勤務期間が長くなるほど日数も増えていき、最大、6.5年以上勤務で週5日勤務は20日、週1日勤務は3日、付与されることになります。

この日数は労働基準法という法律で決められた最低限で、下回ることはできません。「あれ? 週5日働いているけど、そんなにもらっていたかな」と思う方は、まずはご自分の給与明細を確認してみましょう。最近では、有給休暇の残り日数を給与明細に表示している会社が多いためです。給与明細に表示されていなければ、会社に確認してみましょう。会社は、有給休暇の管理簿をつけることが義務となっていますので、回答がもらえるはずです。

仕事 休む

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欠勤で解雇される? 法律で定められた基準を確認

与えられた有給休暇を使い切ったあと、お休みする場合は、原則、「欠勤」という扱いになります。欠勤とは、働く約束の日に働かない、ということで、いろいろな面でマイナスがあります。どんなマイナスがあるか、見ていきましょう。

欠勤が続くと解雇になる?

一番心配なのは、欠勤が原因で解雇になるかどうか? という点でしょう。そもそも、欠勤とはどういうことでしょうか。会社と社員の「労働契約」は、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と、法律(労働契約法)で定められています。

つまり、会社がお給料を払う義務があることはもちろんですが、それとともに、社員は労働する義務があるのです。この「労働契約」に定められている勤務日数は、一般的に正社員ですと週5日程度、パート社員ですと週1~5日までさまざまです。

本来はこの「労働契約」で定められた日は「働く義務がある」ということです。有給休暇は、その働く義務のある日を休みにできるツール。ですから、有給休暇を使って休んでも、契約違反にはなりません。

しかし、有給休暇を使い切ってしまって、その後、働く義務のある日に休むとなると、それは、義務を果たしていないことになってしまいます。これが「欠勤」です。ここで念のため注意したいのは、あくまで「働く義務のある日に休む」ことが、問題だということです。

たとえば、週に3日、月曜・水曜・金曜に勤務することになっている方の、火曜・木曜はもともと「働く義務のある日」ではないため、問題ではありません。「働く義務のある日」に休む、つまり欠勤が続くと、解雇につながるリスクがあります。

法律では、「何日以上欠勤したら解雇」というような基準は特に定められていません。しかし、会社としては、働いてほしいから労働契約をしたのに、欠勤により、その契約の義務が果たされないとなれば、大問題です。したがって、その会社のルールである「就業規則」に、欠勤についてのルールが定められていることがほとんど。

たとえば、厚生労働省が公開して、多くの会社が利用している「モデル就業規則」では、「正当な理由なく無断欠勤が__日以上に及ぶとき」となっています。

参考:「モデル就業規則について」(厚生労働省)

この「__日」とブランクになっているのは、「日数は会社で決めてください」という厚生労働省からのメッセージというわけです。そして、この内容は、「解雇」についての部分ではなく、「懲戒」という部分に登場します。

つまり、欠勤したから即解雇、ということではなく、まずは「懲戒」という、会社から社員へのイエローカードで注意する段取りが一般的ということです。26日間の欠勤を理由として懲戒解雇になった社員が、解雇は無効だと争った裁判例があります(従業員地位確認等請求事件、東京地裁H25.3.28)。

ここでも、会社から社員へ何度も注意があった記録や、会社が欠勤についての事情を聞こうとしたのに対して社員がきちんと対応しなかった、などの経緯をふまえたうえで、解雇は有効だという判決になっています。

「欠勤」は確かに「働く義務を果たさない」というマイナスの行為ではありますが、欠勤したから解雇できる、という単純なものではなく、その理由や経緯も重要になってくるということです。

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欠勤で解雇にならないためには

欠勤の理由や経緯については、「無断欠勤」かどうか、「正当な理由」があるかどうかが重要になります。有給休暇を使い切ったあと、働く義務のある日にお休みしたいというケースには、事前にわかっているものと、急病などにより突然必要になるものとがあると思います。

事前にわかっているものについては、まずは会社に相談して、承認を得ましょう。冠婚葬祭や家族の事情などはもちろん、旅行や推し活などのプライベートなものでも、最近は理解のある会社も増えてきています。

また、急病の場合は、できるかぎり早く会社に一報を入れましょう。メールでもやむを得ないと思います。落ち着いて連絡がとれるようになってから、事情をきちんと伝えましょう。そういった対応をとっていれば、解雇になることも、会社から注意(懲戒処分)を受けることも原則はないはずです。

ただし、注意したいのは、労働契約の期間が決まっている場合です。1年契約で働いている場合などは、その期間の欠勤が多いと、次の契約の更新が難しくなる場合があるためです。やはり、プライベートの予定による欠勤は、社会人としては最低限にしたいところ。では、体調不良などのやむを得ない場合はどうしたらよいでしょうか? 次の項で触れていきます。

体調不良で欠勤した場合の注意点と企業の対応

体調不良や病気での欠勤は正当な理由となりますが、それだけに法律的に保護される部分があります。会社とのトラブルを避けるためにも、確認しておきましょう。

体調不良で欠勤した場合の注意点と企業の対応
  1. 就業規則を確認しておく
  2. 傷病手当金などの制度を活用する

体調不良

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就業規則を確認しておく

体調不良による欠勤が長引く場合は、いろいろと対応が必要です。まず、お休みが始まった段階で、会社には、現在の状況と、いつまで休むことになりそうかについて、報告しておきましょう。

会社によっては、就業規則に「傷病のため継続して__日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない」と、厚生労働省のモデル就業規則のように定めているところもあります。

参考:「モデル就業規則について」(厚生労働省)

この基準にあてはまる場合は、医師に診断書の依頼も必要となります。さらに休みが長引きそうな場合は、就業規則の「休職」「復職」についての規程も重要です。

病気によるお休みが長期になると、「休職」が発令される場合があります。会社ごとに定められている休職期間を超えてしまうほど長引くと、「休職期間も満了をもって退職とする」という規程により、退職することになる場合もあります。この退職は「自然退職」といい、解雇ではありません。

また、体調がよくなって、休職から復職する場合も、診断書を提出する、会社の産業医と面談する、など、一定の手続きが定められている会社もあります。これは、病気が本当は治っていない社員が無理に復職して、さらに病気を悪化させることがないようにするためや、社員が休職前の仕事ができそうか、などを会社として判断するために設けられているものです。

この休職の定義や、休職期間の制限、復職等については、労働基準法で定められていないため、会社で決める内容となります。したがって、会社のルールである就業規則を見ておくことが重要になるのです。

傷病手当金などの制度を活用する

「欠勤」は、それが病気などやむを得ないものであっても、お給料やボーナスが減らされる理由となります。給料やボーナスが満額もらえるのは、「働く義務のある日」に働くという約束に基づき、「働く」という価値を提供するからです。理由はどうあれ、それが提供できないとなれば、減額されるのはやむを得ないということになります。

正社員など、月給(基本給◯◯円と原則定額で支払われている場合)の場合は、欠勤した日数分がそこから差し引かれます。パート社員などの時給の場合は、働いていない分お給料が発生しません。ボーナスがある場合は、ボーナスの対象となる期間のうち、欠勤した日数分が差し引かれたり、ボーナスの金額を決めるときにマイナスの評価がされたりする可能性が高いです。

では、減ってしまった分、生活費はどうしたらいいでしょうか? 健康保険に入っている人(給与明細で「健康保険料」が天引きされている人)であれば、「傷病手当金」という制度が利用できます。これは、4日以上、傷病により働けずお休みになった場合に、健康保険から、お給料のおおよそ3分の2が支給される制度です。

1週間程度の休みであれば、有給休暇がある人は、傷病手当金より金額の高い有給休暇を利用することが多いですが、有給休暇のない人にとっては、傷病手当金は救いとなる制度です。お休み始めてから4日目より支給となるため、3日間は待つことになりますが、1週間程度の休みでも、手続きをすれば利用できます。

有給休暇がなく、インフルエンザやコロナに感染して1週間近く休まざるを得ない時は、会社に相談してみましょう。勤務としては「病欠」などの欠勤扱いになるため、お給料やボーナスが減ることは避けられません。ですが、傷病手当金からは税金も社会保険料も引かれないため、手取りの額としては、毎月のお給料の手取りとあまり変わらない計算になります(※ただし、前年の収入による個人住民税が高額な場合等、当てはまらない場合があります)。

最後に

この記事では、有給休暇を使い切ったあとの欠勤による解雇や、給与や評価への悪影響などの欠勤のリスク、欠勤によるトラブルを防ぐための対策について、解説しました。おすすめしたいのは、今のうちに、会社の就業規則に目を通しておくこと。就業規則には、いろいろなお休みについての記載があるからです。

たとえば、体調不良のうち、月経が重いときのためには「生理休暇」というお休みが法律で決められており、就業規則にも載っているはずです。この「生理休暇」は無給でもよいことになっており、お給料が減ることは避けられませんが、「欠勤」よりは望ましいといえます。

会社も、欠勤は承認しないことができますが、請求された生理休暇を拒否することは法違反になるため、拒否できないからです。このような法律で決められたお休み、また、会社が独自に法律を超えた休暇制度を設定している場合なども、就業規則で知ることができます。

また、実際、有給休暇を使い切ってしまって欠勤せざるを得なくなった場合は、わかった段階で、なるべく早く会社に伝えましょう。社員から会社への報告がしっかりできていて、会社と対応について相談できていれば、これまで説明したように、お給料が減ることや、評価でマイナスを受けることはやむを得ないとしても、懲戒処分をうけたり、解雇されたりすることはないはずです。

転ばぬ先の杖が、未来の自分を救います。まずはご自分の有給休暇の残り日数を確認しておきましょう。そして、残りが0になった時、プライベートな用事は諦めるのか、会社に相談するのか、体調不良のときにはどうやって会社に連絡するか、あらかじめ検討しておくことをお勧めします。

TOP画像/(c) Adobe Stock

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執筆

わく社会保険労務士事務所代表 和久 明(わく・めい)さん

社員12万人超の会社で社会保険、給与計算、社内研修講師を15年以上経験した後、社会保険労務士開業。 常に忙しく手が足りない中小企業の、就業規則作成や法改正フォロー、業務の見える化による社員の働きやすさ実現に取り組んでいる。褒め言葉インストラクター。趣味はサウナ。

事務所ホームページ:https://waku-sr.com
ライター所属:京都メディアライン

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