「みなし残業」という言葉をどこかで見聞きしたことは、ありませんか? 転職活動の際に聞いたことがあるという方もいらっしゃることでしょう。ですが、みなし残業は、意外と「詳しい意味や仕組みを知らない」という人も多い制度です。また、誤解やトラブルに発展してしまうケースもあることをご存じでしょうか?
そこで、この記事では、みなし残業の基本知識や、メリット・デメリット、違法になるケースなどを解説します。
「みなし残業」とは? 基本的な仕組みと定義
まずは、みなし残業の基本的な仕組みや定義を見ていきましょう。
みなし残業の定義と基本的な仕組み
みなし残業とは、あらかじめ一定の時間分の残業代(時間外・休日・深夜労働などの割増賃金)を毎月の基本給などと合わせて支払うという仕組みのこと。
例えば、みなし残業が10時間の契約の場合、実際の残業時間が10時間未満でも、毎月10時間分の残業代が支払われるという仕組みです。ちなみに、何時間分の残業があらかじめ支払われるかは、契約によって異なりますよ。

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固定残業代との違い
「固定残業代」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃることでしょう。では、みなし残業と固定残業代は、どう違うのでしょうか?
「固定残業代」とは、一定時間分の時間外労働、休日、深夜勤務の割増賃金をあらかじめ支払うこと。
基本的に、固定残業代は、みなし残業と同じような意味で使われることが多いですよ。ただ、どちらかと言えば、固定残業代は、オフィシャルな場面や雇用契約書などの文書で使われることが多い言葉です。一方、「みなし残業」は、口頭で説明する際などに使われることが多い表現かもしれません。
ただ、後述のように、みなし残業は、「裁量労働制」などの他の制度と混同されてしまうケースもあります。雇用契約時には、内容をしっかりチェックすることがおすすめですよ。
みなし残業のメリットとデメリット
みなし残業のメリットとデメリットを理解しておくことも重要です。ここからは、みなし残業の一般的なメリットやデメリットを見ていきましょう。
メリット|安定した給与と管理の効率化
みなし残業のメリットとして、社員側からよく耳にするのは、「安定した給与が見込める」という点です。実際に、筆者の知人は、「毎月の手取り額がある程度予想しやすいから、家計の計画が立てやすいと感じる」と語っていました。
また、「毎月残業代が変動すると、金額が合っているのか不安。その点、みなし残業だと金額の確認がしやすいことがメリットだと思う」という声も。さらに、会社側からは、「あらかじめ時間と金額が決まっているので、労務上の管理が楽になる」という点にメリットを感じるという意見もよく耳にします。
デメリット|働き方や権利への不安
みなし残業には、メリットがある一方、デメリットもありますので注意が必要です。まず、働き方や労働者の権利への不安を抱かれることがあるというデメリットがありますよ。
「残業が当たり前という意識になってしまい、働きにくさを感じている」という声も耳にします。もちろん、みなし残業とは、本来そういった趣旨の制度ではありません。ただ、残念ながら、「みなし残業代を支払っているのだから、残業があるのが普通」という雰囲気になってしまう職場もあるようです。

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また、「みなし残業代は、何時間働いても残業代が頭打ちになる」と誤解しているケースも。「結局残業代が正しく支払われないのでは…?」や、「みなし残業があるということは、長時間労働なのでは…?」などのさまざまな不安や憶測につながってしまうことがあるというのも、デメリットといえるでしょう。
みなし残業の違法性や注意点
ここからは、みなし残業が違法になるケースや、注意点もみていきましょう。
超過分の未払いと違法性
みなし残業の制度がある場合でも、あらかじめ決められた時間分以上に残業した場合、超えた分の残業代は支払う必要があります。
例えば、10時間分のみなし残業代が適用されている契約を結んでいる場合で、実際はもっと多く残業しているのに10時間分しか支払わないというのは違法となりますので、注意が必要です。みなし残業代であっても、超過分は支払うのが原則ということは、おさえておきたいポイントですね。