Summary
- 「慰留」とは、退職や異動を申し出た人に、思いとどまるよう働きかける行為のこと。
- ビジネスでは、相手の意思を尊重しつつ選択肢を提示する姿勢が重要。
キャリアを重ねるほど、退職や異動の相談に向き合う機会は増えますよね。そんな場面で欠かせないのが「慰留」という言葉です。「詳しい意味や使い方を聞かれると、実はあいまい…」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこで、この記事では、慰留の意味や使い方、慰留の際の注意点やトラブルケースなどを、実例を交えて解説します。
慰留とは? ビジネスでの正しい意味と読み方をわかりやすく解説!
慰留という言葉は、日常生活ではあまり使わない表現かもしれませんね。また、誤解されやすい言葉なので、正確な意味を押さえておくと安心ですよ。まずは基本からみていきましょう。

慰留の正しい意味と読み方
「慰留(いりゅう)」とは、退職や異動を申し出た相手に対して、引き続き在籍してほしいと伝える行為を指します。例えば、仕事を辞めようと思っている社員を慰めなだめて、留まってもらうというイメージでとらえるとわかりやすいでしょう。
「遺留」との違いを簡潔に解説
「慰留」とよく間違われる言葉が、「遺留」です。「遺留」は、遺産や荷物の置き忘れなどで使われる言葉ですよ。同じ読みでも意味が異なるため、漢字を間違えないよう注意したいですね。
職場でよくある「慰留」のシーン別・具体的な使い方
実際の職場では、立場や状況によって慰留の伝え方が変わってくるでしょう。ここでは、上司側・本人側それぞれのケースを整理していきます。
部下を「慰留する」ときの伝え方と例文
部下が退職を申し出た場合、まずは理由を丁寧に聞き取る姿勢が大切です。改善できる点があるなら、環境調整を提案するのも一つの方法でしょう。例えば、次のようにコミュニケーションを取るのもおすすめ。
「今までの貢献に感謝していますよ。もし少しでも退職に迷いがあるなら、どんなサポートができるか一緒に考えたいと思っています。よかったら、少し気持ちを聞かせてもらえますか?」
このように、部下の選択を否定せず、気持ちを尊重して聞き取りをすることで、部下が「やっぱり続けようと思います」と退職を思いとどまるケースも少なくありません。

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自分が「慰留された」ときの適切な返答例
慰留される側は、急に気持ちを決める必要はありません。冷静に状況を整理して自分の考えを伝えることで、建設的な会話がしやすくなります。
例えば、気持ちに迷いがある場合は、無理にその場で返答せず、「お気持ちに感謝しています。少し考える時間をいただけますか?」などと伝えるのも手でしょう。
退職するか、今の仕事を続けるかというのは、キャリアや人生において大きな分岐点になる可能性大。「こんなはずでは…」と後悔することは避けたいですよね。迷っている場合は、いったん返答に時間をもらい、慎重に進めることをおすすめします。
慰留するとき、されるときの注意点とコミュニケーション術
慰留は相手のキャリアに関わる場面だからこそ、慎重なコミュニケーションが求められます。ここでは、トラブルを避けるためのポイントを確認しておきましょう。
慰留が逆効果になる言葉とは?
引き止めたい気持ちが強くても、相手の負担になる表現は避けたいところです。例えば、「ここでやめたらもったいない」や、「あなたがいなくなると、みんなに迷惑がかかる」という言葉は、プレッシャーにつながる可能性がありますよね。
相手が抱えている悩みや背景に配慮しながら、選択肢の一つとして在籍のメリットを提示するくらいがちょうどよい距離感でしょう。
「感情的な慰留」が退職トラブルを招くケースとは?
慰留の場面で特に気を付けたいのは、ネガティブな言葉遣いや相手を否定するような表現です。何気ない上司の一言がきっかけで、関係が一気に悪化してしまうケースも。
例えば、「あなたのキャリアにとってマイナスになる」や、「うちが無理なら他では通用しない」といった言葉は、ハイリスクです。上司からのネガティブなコメントや慰留の仕方が、思わぬトラブルにつながってしまうことも。
あるIT系企業で働いていたSさん(30代後半 女性)のエピソードは、その一例でした。この企業はかなり残業が多く、職場全体が疲弊ムードだったといいます。そんな中、Sさんはついにキャリアチェンジを決意。退職を申し出たところ、上司から返ってきたのは、こんな言葉でした。
「そんな甘えた考え方だと、この先苦労するよ。みんな我慢して働いているのに、あなただけやめるって、ずるいと思わない?」
そして、退職のための面談のはずが、いつのまにかお説教の時間になってしまったとSさんは振り返ります。たしかに、退職時の引き継ぎや後任の採用などを考えると、戸惑う人がいるのも理解できますよね。とはいえ、相手を責めるような伝え方になると、受け止め方が大きく変わってしまうおそれもあります。
また、そもそも、法律上、労働者には退職の自由があり、会社側が退職の申し出を拒否し続けるという行為は認められていません。状況によっては、「退職を違法に引き止められた」などとトラブルになってしまう展開も起こりえますよね。さらに、退職者が転職サイトの口コミに体験を書き込むことで、企業の評価や採用に影響が出る可能性も。
慰留はあくまでも、相手の選択肢を広げるコミュニケーションであり、圧力をかける場ではありません。だからこそ、まずは相手の気持ちを尊重しながら対話を進めたいですね。

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慰留されても退職や異動を決断する際のスマートな対応
慰留を受けても気持ちが変わらない場合は、丁寧な言葉で意思を伝えることが大切です。感情的にならず、前向きな理由を添えると関係性も穏やかになりやすいですよ。
法律系の企業で長く働いていた A さん(40代 女性)は、周囲から「あなたがいないと業務が回らない」と慰留され続けてきた方でした。退職の話し合いでは感情が揺れる場面もあり、時には「会社を辞めても苦労するだけでは?」などと、心がざわつく言葉をかけられたこともあったというAさん。
それでも A さんは、否定的な言葉に反応せず、自分の意思を落ち着いて伝える姿勢を大切にしたそうです。Aさんが実際に伝えた言葉も例としてみていきましょう。
例文:「ご配慮いただき本当にありがとうございます。熟考の結果、次のステップに進みたい気持ちが固まりました。これまでの経験を大切にしながら、新しい環境で頑張りたいと思っています」
このように、感謝と前向きな意志を組み合わせて伝えることで、相手の感情が和らぎやすくなりますよね。退職時は衝突するよりも、誠実な姿勢を貫くことで、スムーズに次のキャリアに進みやすくなりますよ。
最後に
- 「慰留」は引き止める行為だが、強制や圧力は許されない。
- 上司の言葉次第で、慰留は信頼回復にもトラブルにもなりうる。
- 慰留される側は、その場で即答せず考える時間を持っていい。
慰留は、一人の退職問題にとどまらず、組織全体にも影響するテーマと言えます。慰留する側もされる側も、建設的に話し合いを進める意識が大切。キャリアに大きく関わるキーワードですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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