「目を通してください」は丁寧語ですが、敬語としては不十分な場合があります。
Summary
- 「目を通してください」は丁寧な依頼表現ですが、動詞自体は敬語ではありません。
- 目上の人や取引先には「ご確認いただけますと幸いです」などがより適切です。
- 「お目通し」「ご一読」などの敬語表現と場面ごとの使い分けが重要です。
Contents
「目を通してください」という表現を職場で使う機会は多いものです。しかし、「この言い方で本当に丁寧なのか?」「上司や社外に使っても失礼ではないか?」と不安を感じる人も少なくありません。
この記事では、「目を通してください」が敬語として適切かどうかを文法と実務の両面から解説し、適切な言い換えや使用する際の注意点、実務で信頼を得られる表現方法を具体的に紹介します。
「目を通してください」はビジネス敬語として適切か?
職場で日常的に使われる表現であっても、相手との関係や場面によっては不適切になる場合があります。ここでは、「敬語」としての正しさを文法面と実務面の両面から検討します。
「目を通す」は敬語か? 文法的背景と敬語分類
「目を通す」は「ざっと読む」「一通り見る」という意味の語です。文法上は尊敬語・謙譲語・丁寧語いずれにもあたらず、敬語の性質を持つ動詞ではありません。ここに「~してください」を付けると、依頼の形として丁寧にはなりますが、動詞自体は敬語ではないため、敬意が十分に伝わらないケースもあります。
つまり、「見てください」とお願いする丁寧な言い方ではあるものの、相手の行為を高める尊敬のニュアンスは弱いのです。そのため、目上の人や取引先など、敬意を払うべき相手に使うと、ぞんざいな印象や「見下している」という印象を与えかねません。

上司や社外に使っても問題ない? 誤用と判断基準
社内の同僚や後輩、比較的親しい上司には「目を通してください」でも問題ありません。しかし、取引先や目上の方、「失礼のない表現」を重視したい場面では、より丁寧かつ敬意を表す表現が適しています。
例えば、メールで「お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです」や「ご査収ください」「お目通しいただけますと幸いです」など、ワンランク上の敬語を使うと印象がよくなります。
「失礼にならない」ための前提知識とは?
敬語は、単に言葉を丁寧にするだけのものではありません。相手への敬意や配慮を形にするためのコミュニケーションツールです。大切なのは、「この表現は文法的に正しいか」だけでなく、「相手がどう感じるか」を想像すること。
特に、確認を依頼する際は相手の時間や労力を使うことになるため、言葉選び一つであなたの印象が大きく変わります。

表現が変わると印象も変わる|「目を通してください」の言い換え表現
同じ依頼でも、言葉の選び方ひとつで相手が受ける印象は大きく変わります。シーンや相手によって最適な表現を選びましょう。
やや丁寧に伝えたいときにふさわしい表現とは?
丁寧に述べたいときは
「ご確認いただけますでしょうか」
「お目通しいただければと存じます」
「ご査収のほど、よろしくお願いいたします」
などがおすすめです。ただし、「ご確認のほどよろしくお願い申し上げます」のように過度に丁寧すぎると不自然になる場合もあるため、相手との関係性に応じて適切なレベルを選択することが重要です。
「お目通しください」「ご一読ください」との違いを使い分ける
「お目通し」は「目通し」に敬意を表す接頭語「お」を付けた言葉で、上司や取引先など目上の人にも使えます。ただし「お目通しください」は「一通りざっと目を通す」という意味で、細かい読み込みや確認を求める場面には不向きです。
「ご一読ください」も丁寧語ですが、「一読」という単位が「ざっと読む」を意味し、やや簡潔さが感じられます。読むこと自体を敬った表現で、フォーマルなメールに適します。
両表現とも過剰敬語ではないため、安心して使えますが、「詳しい確認をお願いしたい」ときは「ご確認ください」などを使うようにしましょう。

相手に負担感を与えない言い回しは何か?
依頼の言葉の前に一言添えるだけで、相手への配慮が伝わり、グッと印象がよくなります。
・「お忙しいところ恐縮ですが、」
・「ご多忙の折とは存じますが、」
・「お手すきの際に、」
・「よろしければ、」
例
「お手すきの際にご一読いただければ幸いです」
「ご多忙のところ恐れ入りますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします」

相手や場面に応じて、より敬意の伝わる表現に言い換える工夫が大切です。
よく使われるが、実は誤解を招くケース|「目を通してください」の落とし穴
丁寧なつもりで使っていても、思わぬ誤解を生むことがあります。よくある失敗例を見てみましょう。
「軽く扱っている」と思われるリスク
「目を通す」という表現は、「軽く見る」「流し読み」という印象を与える可能性があります。重要な資料や企画書に対してこの表現を使うと、内容を軽視していると受け取られるリスクがあります。
例
添付の通り、新サービスの企画書を作成いたしました。
お時間のある時に目を通してください。
これを受け取った上司は、「ざっと見ればいいんだな。急ぎでも重要でもないのだろう」と判断してしまうかもしれません。その結果、後回しにされたり、あなたが期待していたような詳細なフィードバックが得られなかったりする可能性があります。
このように、自分の意図と相手の受け取り方にズレが生じることこそ、この表現の最大のリスクといえるでしょう。


