相手に配慮した言い回しや構成を整え、信頼感ある依頼文を心がけましょう。
「読んでほしい」が本音なのに…という違和感
本当は「時間をかけて熟読し、的確なアドバイスが欲しい」と思っているのに、遠慮や自信のなさから「目を通してください」という控えめな表現を選んでしまうことはありませんか?
この、「本音(しっかり読んでほしい)」と「建前(目を通すだけでいいです)」のズレこそが、相手に違和感を与え、期待した結果を得られない原因になります。
例
お忙しいところ恐れ入ります。明日のA社への提案資料ですが一度目を通していただけると助かります。
これを受け取った上司は「最終チェックで、大きな問題がないかを確認すればいいんだな」と解釈し、数分で資料を流し読みして、「大丈夫じゃない? 自信持って頑張って!」とあなたを送り出すかもしれません。
遠慮から生まれた表現のズレが、このようなコミュニケーションのすれ違いを生んでしまうのです。本当に助言が欲しいときこそ、「何に困っていて、どうしてほしいのか」を具体的に伝えることが大切です。
メール文全体での文脈バランスの重要性
同じ「目を通してください」でも、前後の文脈や全体の流れで印象が変わります。
例えば、非常に丁寧な挨拶で始まっているのに、依頼部分だけ「添付ファイルに目を通してください。」と書かれていると、その一文だけが浮いてしまい、冷たい印象や高圧的な印象を与えかねません。文章全体の流れや言葉遣いの一貫性を意識しましょう。
現場で信頼を得るために|「目を通してください」を効果的に使う方法
ただ丁寧であればいいわけではなく、仕事の信頼関係を損なわない文面が求められます。実際のメールや会話で信頼を得られる使い方の工夫を紹介します。

(c) Adobe Stock
信頼される依頼文に共通する言葉選びの工夫
相手が「読みたくなる」心理に働きかける書き方を心がけましょう。
例えば「ぜひご確認いただき、ご意見を頂戴できれば幸いです」や、「ご負担にならない範囲で目を通していただけますと助かります」など、相手への信頼や感謝をひと言添えると、格段に印象がよくなります。
「目を通してください」を自然につなげる前後文の書き方
「目を通してください」が浮かないように自然に組み込むには、前後の文章との流れを意識することが大切です。
例えば「企画書を作成いたしました。お忙しい中恐れ入りますが、お時間のあるときに目を通していただけますでしょうか。ご意見をいただけると幸いです。」など、背景や依頼の理由を簡潔に添えることで、自然な流れになります。
読んでもらえる文面に仕上げる3つの視点
相手に快く協力してもらい、仕事の信頼関係を築くための、効果的な伝え方のポイントを3つ紹介します。
1. 構成:結論→依頼理由→依頼内容→締めの挨拶の順でわかりやすく
2. 語調:丁寧かつ親しみやすく、かつ過剰敬語は避ける
3. 明快さ:依頼事項を簡潔に示し、相手の負担を考慮した表現を用いる
この3点を押さえることで、信頼関係が損なわれず、良好なコミュニケーションが図れます。

最後に
POINT
- 「目を通してください」は敬語として不完全なため使い分けが必要。
- 重要資料や目上の人にはワンランク上の敬語表現を選ぶ。
- 「ご一読」「ご査収」など意図に合わせて表現を工夫する。
「目を通してください」という表現は便利な表現ですが、相手との関係や状況によって適切さが異なります。文法的な理解と実務的な感覚の両方を持つことが、失礼のない円滑なやりとりにつながります。この記事で紹介した判断基準や言い換え例を参考に、より信頼されるビジネスコミュニケーションを目指してください。
TOP・アイキャッチ・吹き出し画像/(c) Adobe Stock

執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。


