Summary
- 「行き違いの場合はご容赦ください」は、連絡ミスや情報の重複などに備えたビジネス定番の表現です。
- 目上・取引先への使い方には注意が必要で、状況や相手によって表現をアレンジすることが大切です。
- 「入れ違い」「すれ違い」など似た表現との違いや、より柔らかく伝える言い換えパターンも紹介します。
Contents
「行き違いの場合はご容赦ください」という表現は、連絡ミスや認識のすれ違いが発生した際に相手に配慮を示す一文です。特にビジネスメールでは、相手との関係性や状況に応じて慎重に使い分ける必要があります。
この記事では、言葉の意味や正しい使い方に加え、状況別の例文や言い換え表現も紹介します。実務で使える知識として、ぜひ役立ててください。
「行き違いの場合はご容赦ください」の正しい意味と使い方をビジネス視点で解説
このフレーズは、連絡のすれ違いや誤解が起きた際に相手へ丁寧に伝えるための重要な表現です。ビジネスメールでは、相手に誤解を与えず、かつ失礼にもならない言葉選びが求められます。まずはこの言葉が持つ基本的な意味と使い方から確認しましょう。
「行き違いの場合はご容赦ください」の意味とは?
この言葉は、大きく二つの要素から成り立っています。
・行き違い:互いの連絡や意図がうまく伝わらず、食い違ってしまうこと。
・ご容赦ください:「容赦」は「許すこと、大目に見ること」を意味し、「ご~ください」とすることで、相手に許しを請う丁寧な表現になります。
つまり、「もし、こちらからの連絡とあなたの行動が食い違ってしまった場合は、どうか許してくださいね」と、起こるかもしれないすれ違いに対して、あらかじめ許しを請うニュアンスを持っています。
ここで大切なのは、これが単なる謝罪ではない、という点です。自分のミスを認める「申し訳ございません」とは異なり、あくまで「もし~だったら」という仮定の話。そのため、予防線としての役割が強いのです。
ただし、この「予防線」としての性質が、時に「責任を回避している」と受け取られるリスクもはらんでいることを、心に留めておきましょう。

辞書的な定義と一般的な解釈
『⼩学館デジタル⼤辞泉』では「行き違い」は「すれちがいになって、出会わないでしまうこと。いきちがい。 意志がうまく通じないで、くい違いを生じること」とあり、「容赦」は「ゆるすこと。大目に見ること」とあります。
ビジネスメールで使われる際は、もう少し広い意味で解釈されます。「メールを送ったけれど、相手も同じタイミングで返信しているかもしれない」「情報を送ったけれど、もう知っているかもしれない」といった、連絡の重複やタイムラグを想定した文脈で多く用いられます。
日常会話で使うには少し堅苦しい表現ですが、ビジネス文書においては、こうした事態を想定して一言添えることが、相手への配慮として機能するのです。
どのような場面で使われる表現か?
では、具体的にどのような場面で活躍するのでしょうか? 職場で起こりがちなシチュエーションをいくつか挙げてみましょう。
・予定変更の連絡:会議の日時変更などを連絡する際、相手が古い情報で動いている可能性を考慮して。
・催促のメール:返信や対応をお願いする際、すでに対応済みかもしれない相手への配慮として。
・情報の共有:複数人に一斉送信する際、一部の人はすでに知っている情報を送る場合に。
・電話のフォロー:電話をかけたけれど不在だったため、メールで用件を伝える際に「電話と行き違いになったら」という意図で。
このように、相手の状況がこちらから完全には見えない中で連絡を取る際に、非常に幅広く使える表現です。
「行き違いの場合はご容赦ください」は、連絡ミスや情報の重複時に用い、予防線と配慮を両立させる表現です。
ビジネスメールにおける「行き違いの場合はご容赦ください」の使い方と注意点
この表現は、誠実な対応をアピールできる一方で、使い方を誤ると相手に不快感を与えかねません。ここでは、相手や状況に応じた使い方と、やりがちな失敗例を見ていきましょう。
上司・同僚・取引先に対する使い分けの工夫
相手との関係性によって、表現の温度感を調整することが、円滑なコミュニケーションの鍵です。
・上司に対して:「ご容赦ください」は「許してください」という意味合いを持つため、基本的には使わない方が無難です。上司に許しを請うという構図が、尊大な印象を与えかねません。「もしご連絡が行き違いになっておりましたら、大変失礼いたしました」のように、より丁寧な謝罪の形にするのがいいでしょう。
・同僚に対して:気心知れた同僚であれば、「行き違いだったらごめん!」で済むかもしれませんが、丁寧なコミュニケーションを心がけるなら「行き違いになりましたらご容赦ください」が適切な表現です。
・取引先に対して:最も慎重になるべき相手です。「本メールと行き違いで既にご対応いただいておりましたら、何卒ご容赦ください」のように、何との行き違いなのかを明確にし、丁寧な言葉遣いを徹底しましょう。
定型文に頼らない自然な文面づくりのコツ
「とりあえず文末につけておけばいい」という考えは禁物です。状況説明を加え、自分の言葉で伝える工夫が、メールの印象を大きく変えます。
例:先ほどお電話いたしましたがご不在でしたので、取り急ぎメールにて失礼いたします。
(本文)…ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
本メールとご連絡が行き違いになりましたら、大変失礼いたしました。
このように、「なぜ行き違いが起こる可能性があるのか」という背景(電話をしたこと)を添えるだけで、格段に丁寧で分かりやすい文章になります。

注意すべき誤用例と失礼になりうる表現
よかれと思って使った一言が、裏目に出てしまうこともあります。よくある失敗例を見てみましょう。
●失敗例1:自分の明らかなミスに使ってしまう
×「昨日のメール、資料の添付を忘れておりました。行き違いの場合はご容赦ください。」
これは「行き違い」ではなく、100%こちらのミスです。この場合は「ご容赦ください」ではなく、明確な謝罪が必要です。
○「大変申し訳ございません。昨日お送りしたメールに、資料を添付できておりませんでした。改めてお送りいたします。」
●失敗例2:相手を責めているような印象を与える
×「先日お願いした件、ご確認いただけていないようでしたので再送します。行き違いの場合はご容赦ください。」
これは「早く確認してください」という催促の意図が透けて見え、高圧的な印象を与えかねません。
○「念のため、先日ご依頼いたしました件について、再度ご案内いたします。もし本メールと行き違いで既にご対応いただいておりましたら、何卒ご容赦ください。」
「念のため」というクッション言葉を使い、相手を気遣う姿勢を見せることが大切です。
相手や状況に応じた使い分けと、誤用による失礼を避ける表現選びが重要。
そのまま使える! 状況別の例文集
ここでは、読者の皆さんがコピー&ペーストして使えるよう、具体的な状況別の例文を紹介します。
予定・連絡の行き違いがあった場合の文例
件名:【日程変更のご連絡】〇〇定例会議(〇月〇日)
各位
お疲れ様です。△△です。
明日〇月〇日に予定しております定例会議につきまして、
都合により開始時刻を15:00に変更させていただきたく存じます。
先ほど口頭でもお伝えしようといたしましたが、ご不在の方もいらっしゃいましたので、取り急ぎメールにて失礼いたします。
本メールと行き違いで、既に変更の件をご存知でしたら何卒ご容赦ください。
お忙しい中恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。


