確認の行き違いが発生した場合の文例
件名:【ご確認】先日お送りしたお見積もりの件(株式会社〇〇 △△)
株式会社△△
営業部 〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の△△です。
先日お送りいたしましたお見積もりにつきまして、その後のご検討状況はいかがでしょうか。
もし本メールと行き違いで既にご連絡を頂戴しておりましたら、誠に恐縮です。
お忙しいところ催促する形となり大変申し訳ございませんが、ご不明な点などございましたら、お気軽にお申し付けください。
引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。
返信が重複していた場合の文例(重複・乱文への対応)
ご返信いただき、ありがとうございます。
先ほど〇〇の件でメールをお送りしたのですが、〇〇様からも同様にご連絡をいただいていることに、今しがた気づきました。ご連絡が行き違いとなり、大変失礼いたしました。
先にお送りしましたメールは、内容が重複しておりますので、誠に恐れ入りますが破棄していただけますと幸いです。
【目次】
「行き違い」と「入れ違い」の違いを明確に理解しよう
表現が似ている「入れ違い」や「誤解」「すれ違い」などとの混同に注意が必要です。間違ったまま使うことで信頼を損ねることもあるため、ここで明確に整理しておきましょう。
「行き違い」「入れ違い」「すれ違い」の定義と違い
・行き違い:手紙や伝言など、情報や意思が食い違うこと。「話の行き違い」のように、コミュニケーションのズレを指します。
・入れ違い:人が訪ねてきたり、電話がかかってきたりした際に、ちょうどこちらが外出したり電話に出たりして、タイミングが合わず会えない・話せないこと。物理的な動作や時間のズレを指します。
・すれ違い:「行き違い」とほぼ同じ意味で使えますが、より感情的なニュアンスで「気持ちのすれ違い」のように使われることも多い言葉です。
文脈に応じた正しい使い分け方
・メールや電話での連絡が食い違った場合 → 「行き違い」
例:「メールが行き違いになったようです。」
・訪問や電話のタイミングが合わなかった場合 → 「入れ違い」
例:「先ほどお電話しましたが、入れ違いになってしまったようです。」
誤用しやすい例とその修正ポイント
×「先ほどお送りしたメールと入れ違いにご連絡をいただいたようです。」
これは厳密には誤用ではありませんが、メールは物理的に動くものではないため、「行き違い」を使う方がより自然で正確です。
○「先ほどお送りしたメールと行き違いにご連絡をいただいたようです。」
○「ご連絡が入れ違いになってしまったようですね。」(「連絡」という行為に対して使うならOK)
目上の人にも使っていい? 敬語としての妥当性を検証
目上の相手や取引先に送るメールで、「ご容赦ください」という表現が失礼にあたらないか、不安に感じる方も多いでしょう。敬語の観点から、その妥当性と代替表現を確認します。
「ご容赦ください」は敬語表現として適切か?
結論から言うと、敬語表現としては正しいです。「ご~ください」は尊敬語の形をとった丁寧な命令形であり、目上の方に使っても間違いではありません。
しかし、前述の通り「許してください」という意味合いがあるため、相手に「許す」という行為を求めることになります。こちらに明確な非がない場合や、相手に負担をかけていない状況で使うと、少し尊大な印象を与えてしまうリスクがあります。そのため、相手や状況をよく考え、より丁寧な代替表現を選ぶのが賢明です。
より丁寧に伝えるための言い換えパターン
「ご容赦ください」の代わりに、以下のような表現を使うと、より丁寧で謙虚な印象になります。
・「~しておりましたら、大変失礼いたしました。」
・「~しておりましたら、誠に恐縮です。」
・「~しておりましたら、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。」(より丁寧にしたい場合)
控えめに伝えたいときの工夫と補足表現
相手への負担を和らげ、柔らかい印象にしたい場合は、以下のような一言を添えるのが効果的です。
・「念のため、ご連絡いたしました。」
・「もし既にご対応済みでしたら、本メールはご放念(ほうねん)ください。」(「忘れてください」の丁寧な表現)
・「お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。」

英語でどう伝える?「行き違いの場合はご容赦ください」の英文表現
ビジネスシーンがグローバル化する中で、英文メールでも同様の丁寧さを維持したいというニーズがあります。ここでは英語での適切な表現方法を紹介します。
実務に使える丁寧な英語表現(例文付き)
日本語の「行き違いの場合はご容赦ください」にぴったり当てはまる英語表現はありません。そのため、状況に応じて意図を伝える形にします。
・Apologies for any confusion caused by the miscommunication.
誤解による混乱をお詫び申し上げます。
・Please forgive any inconvenience caused by the mix-up.
混乱によるご不便をお許しください。
直訳ではなく意図を伝える英訳の考え方
英語圏のビジネス文化では、日本ほど予防線を張る表現を多用しない傾向があります。そのため、「ご容赦ください」を直訳しようとせず、「謝罪(apologies)」「無視してください(please disregard)」「念のため(just a reminder)」のように、具体的なアクションや意図を伝える方が自然です。文化的な背景を理解し、シンプルで明確な表現を心がけましょう。
状況別に使い分けたい英文メールの例
・返信の行き違いを想定する場合
I am writing to follow up on my previous email. My apologies if you have already replied.
(先日のメールの件でご連絡いたしました。もし既にご返信いただいておりましたら、失礼いたしました。)
・予定変更を連絡する場合
This is to confirm the schedule change for the meeting. Please disregard this message if you have already been notified.
(会議の日程変更を確認するためご連絡します。もし既にお知らせを受け取っている場合は、このメッセージはご放念ください。)
「行き違いの場合はご容赦ください」をもっと丁寧に・柔らかく伝える言い換え表現
相手との関係や状況によっては、より控えめ・やわらかい表現を選びたい場合もあります。使い分けができるように、ニュアンス別の言い換え表現を紹介します。
「ご了承ください」との違いと選び方
・ご容赦ください:相手に許しを請う。こちらに何らかの非や迷惑をかける可能性がある場合に使う。
例:返信が遅れるかもしれません、ご容赦ください。
・ご了承ください:相手に理解・納得を求める。決定事項や変更できないルールなどを通知する際に使う。
例:価格改定の件、何卒ご了承ください。
<選び方のポイント>
相手に「許してほしい」なら「ご容赦ください」、事情を「納得してほしい」なら「ご了承ください」と覚えておくといいでしょう。
柔らかさを重視した言い換え例
・「ご連絡が行き違いになっておりましたら、失礼いたしました。」
・「もし、既にご存じのことでしたら、大変恐縮です。」
・「本メールと行き違いになりましたら、お許しください。」
(「ご容赦ください」よりも少しパーソナルで柔らかい印象)
・「重複したご連絡になりましたこと、お詫び申し上げます。」
過剰なへりくだりにならないための調整方法
丁寧さを意識するあまり、へりくだりすぎると、かえって相手を困惑させてしまいます。「大変申し訳ございません、誠に恐縮ですが、何卒ご容赦ください」のように謝罪の言葉を重ねすぎると、大げさで不自然な印象になります。
大切なのは、状況に応じた適切な言葉を選ぶこと。自分のミスであれば素直に「申し訳ございません」と謝罪し、予防線を張りたいだけなら「行き違いになりましたら失礼いたしました」程度に留めるなど、バランス感覚を大切にしましょう。
最後に
POINT
- 「行き違いの場合はご容赦ください」は、状況説明やクッション言葉と合わせるとより丁寧です。
- 「行き違い」と「入れ違い」「すれ違い」は意味が異なるので、場面に応じて正しく使い分けましょう。
- 過度なへりくだりや、誤った謝罪は逆効果。状況に合ったバランス感覚が重要です。
「行き違いの場合はご容赦ください」は、誠実な姿勢を伝える一方で、使い方を誤ると誤解や信頼の損失につながる表現でもあります。状況に応じた言い換えや丁寧な工夫を加えながら、実務で安心して使える表現力を身につけていきましょう。日々の業務に活かせる知識として、活用していただければ幸いです。
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執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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