Summary
- 「以心伝心」は言葉を交わさず心が通じる状態を表す
- 語源は禅宗の教え「拈華微笑」に由来する仏教用語
- ビジネス・恋愛・スポーツなど幅広い場面で使える
Contents
「以心伝心」は、人と人が「言葉にせずとも心で通じ合う」ことを表す表現です。ただ、本当の意味や使い方が曖昧なまま使っているケースも少なくないでしょう。
この記事では、実際のビジネスや日常で「以心伝心」を生かせるよう、意味・使いどころ・言い換え表現まで整理して解説します。
「以心伝心」の読み方と意味、語源は?
まずは、「以心伝心」という言葉の基本から見ていきましょう。
「以心伝心」とはどういうことか?|心が自然に通じ合う状態
「以心伝心」は、「いしんでんしん」と読みます。言葉を使わずとも心が伝わる、心と心が通じ合う状態を指す表現です。辞書では次のように説明されています。
いしん‐でんしん【以心伝心】
1 仏語。仏法の奥義を、言葉や文字を借りず師の心から弟子の心に伝えること。主に禅宗で用いる。→不立文字(ふりゅうもんじ)
2 無言のうちに心が通じ合うこと。「―の間柄」
[補説]「意心伝心」と書くのは誤り。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
もともとは仏教(特に禅宗)の用語であり、そこから「言葉を交わさなくても気持ちが伝わる」という意味へと広がっていきました。

語源は?
「以心伝心」は禅宗に由来する言葉です。釈迦が霊鷲山(りょうじゅせん)で説法の代わりに一輪の花を示したとき、弟子の摩訶迦葉(まかかしょう)だけがその心を悟り微笑したといわれます。これを「拈華微笑(ねんげみしょう)」と呼びます。
この故事は、言葉や文字に頼らず、師の悟りがそのまま弟子に伝えられることを象徴するものでした。そこから「以心伝心」という表現が生まれ、禅宗では 「不立文字(ふりゅうもんじ)」「教外別伝(きょうげべつでん)」 と並ぶ重要な標語となっています。
転じて現代では、「説明不可能な微妙な気持ちや意図が、言葉にせずとも相手に伝わること」という意味で広く使われています。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
「以心伝心」は、禅宗に由来し、言葉なく心が通じ合う関係を表す
「以心伝心」の使い方は? 例文とともに確認
言葉の意味を理解しても、ビジネスや公的な場で適切に使えるとは限りません。ここでは、具体的な例文とともに使い方の解説します。
長年の親友とは、言葉がなくても以心伝心で気持ちがわかる。
親しい友人同士では、表情や仕草だけで相手の気持ちを察することができる場面があります。まさに「以心伝心」の典型的な使い方です。
会議中、上司と目が合っただけで次に話す内容が理解できるのは、以心伝心の関係だからこそだ。
職場では、長く一緒に働いている相手とは言葉を交わさずとも意図を理解できることがあるでしょう。ここでは、仕事上の信頼関係を表す表現としても適しています。

彼女の小さな表情の変化から気持ちを察するのは、以心伝心が成り立っている証拠だ。
恋人や夫婦など、近しい間柄では心の機微を読み取れることがあります。ここでは愛情や絆の深さを強調しています。
パスを出す瞬間に走り出すタイミングが合うのは、以心伝心の連携があるからだ。
スポーツでは、事前に声をかけなくてもプレーが噛み合うことがあります。チームの呼吸が合っている状態も「以心伝心」で表現できますね。
舞台上で相手役の意図を瞬時にくみ取れるのは、以心伝心の感覚が働いているからだ。
演劇や音楽などの表現活動では、共演者との心の通い合いが重要です。互いの感性が一致する場面を「以心伝心」で説明しています。
「以心伝心」の類語や言い換え表現、英語表現は?
「以心伝心」という言葉は、状況によってより具体的で伝わりやすい表現に置き換える必要があります。「意思疎通ができている」「共通理解がある」「認識が一致している」などの表現は、ビジネスシーンでも違和感なく使うことができるでしょう。
また、チーム内での連携を評価する場面では、「呼吸が合っている」「役割が共有されている」といった言い回しの方が、明確な場合もありますね。
言い換える際は、状況に合わせて判断をし、使うことが大切です。
英語で表現するには?
「以心伝心」に近い意味を英語で表す場合は、“tacit understanding(暗黙の了解)”を使うことができます。


