「切磋琢磨」とは学問や技術を磨くという意味
「切磋琢磨」には2つの意味がありますが、努力する、向上するといったニュアンスがあるという点では共通するところがあります。
【切磋琢磨:せっさたくま】
学問をし、徳を修めるために、努力に努力を重ねること。
また、友人どうしで励まし合い競い合って向上すること。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「切磋琢磨」は日常会話・ビジネス・政治経済・学問・芸術・スポーツなど、さまざまな分野・シチュエーションで使われる言葉です。もともとは中国の故事成語ですが、さまざまな場面で使いたくなる言葉といえるでしょう。
ここでは「切磋琢磨」の2つの意味についての詳しい解説と、由来について解説します。
「切磋琢磨」の意味は2つある
「切磋琢磨」には主に2つの意味があります。1つめは努力を重ねることで、学問や道徳や技術を磨くことという意味です。2つめの意味は友人どうしで励まし合ったり、競い合ったりしながら、互いに向上していくという意味です。
1つめの意味が単独である場合に使うのに対して、2つめの意味は二人以上の人間で努力しあう場合に使われるという違いがあります。
「切磋琢磨」の由来
「切磋琢磨」の由来となっているのは孔子が編成した中国の詩歌集『詩経』です。『詩経』の中の「衛風淇奧」という篇に「如切如磋、如琢如磨」という一節があります。「切(せっ)するがごとく、磋(さ)するがごとく、琢(たく)するがごとく、磨(ま)するがごとく」と読みます。
「切する」とは切り刻むこと、「磋する」は研ぐこと、「琢する」は打つこと、「磨する」は磨くことです。象牙や石などに精緻な加工を施して、工芸品を作ることを表しています。
「衛風淇奧」の中では衛の国の武公を優れた工芸品にたとえてほめたたえる場面で、「切磋琢磨」の由来となる言葉が使われています。武公は90歳という高齢になってからも、徳を納めるために自己鍛錬を怠らなかったとされています。
武功を讃える逸話から「琢磨」という言葉が生まれました。
「切磋琢磨」の例文
「切磋琢磨」はさまざまな場面で使われる言葉です。ポジティブなニュアンスがあるため、抱負や目標を語るシチュエーションでもよく使われています。
【例文】
・新郎のA君とは大学時代から同じラグビー部で【切磋琢磨】しあった仲です。
・今回の衆議院選挙で当選したあかつきには一層の【切磋琢磨】をする所存です。
・新商品の開発を成功させることが目的ですが、所員が【切磋琢磨】しあって、大きく成長してくれることこそが我が社の財産だと考えています。
「切磋琢磨」を使う際の注意点
「切磋琢磨」はポジティブな意味の言葉ですが、どんな場面にも使えるわけではありません。注意しなければならないのは、年配者や上司に対しては使えないということです。「切磋琢磨」は仲間同士、同じチーム内に所属するメンバー同士で使う言葉です。
年配者や上司に対して、「切磋琢磨していきましょう」といった発言をすると、相手に不快感を与える可能性もあるので、注意してください。
「切磋琢磨」の類義語4つ
「切磋琢磨」にはいくつかの類義語があります。主なものは「研鑚」「鍛錬」「砥礪切磋」「しのぎを削る」の4つです。
「切磋琢磨」よりもシンプルな表現になる「研鑚」と「鍛錬」、切磋琢磨と同じ「切磋」という言葉を使っている「砥礪切磋」、競い合っていることがより強調される「しのぎを削る」など、場面に応じて言い換えできる言葉が揃っています。
【類義語1】研鑚(けんさん)
「研鑽」は学問を深く究めることという意味の言葉で、読み方は「けんさん」です。「研讃」という書き方と間違えられることがありますが、「讃」は間違いで、「鑚」であることに注意してください。
【例文】
・彼は小学校入学と同時期に剣道の道場に入門したので、20年間、【研鑚】を積んできたことになります。
・君たちがここまで【研鑚】してきた成果は着実に出ています。
【類義語2】鍛錬(たんれん)
「鍛錬」とはきびしい修行や訓練を行って、技や精神を磨くことという意味です。スポーツや芸術でよく使われますが、ビジネスや日常会話でもよく登場します。
【例文】
・彼がどんなにハードな仕事をしても弱音を吐かないのは、日々の【鍛錬】を欠かさないからでしょう。
・一流のスポーツ選手は目立たないところで【鍛錬】していますが、彼は努力していることをアピールしすぎです。
【類義語3】砥礪切磋(しれいせっさ)
「砥礪切磋」とは学問や人格の向上を目指して努力することという意味の四字熟語です。「しれいせっさ」と読みます。江戸時代の儒学者、佐藤一斎の『言志録』という書物に出てくる言葉で、研ぎみがくことを意味する「砥礪」と「切磋」を合わせた言葉です。
【例文】
・私はもともと研究者としての才能がないので、【砥礪切磋】し続けるしかないと自分に言い聞かせて、ここまでやってきました。
・ご高齢になってからも学ぶ姿勢を忘れず、【砥礪切磋】し続けている御社の社長の姿を拝見して、ますます尊敬の念が強くなりました。
【類義語4】しのぎを削る
「しのぎを削る」とは激しく争うという意味です。互いに励まし合って向上しようとするという意味の「切磋琢磨」に対して、「しのぎを削る」はより争いのニュアンスの強い言葉といえるでしょう。仲間というよりもライバル同士が競い合うケースで使われます。
【例文】
・同期で入社したA君とB君はともに大変優秀で対抗意識も強いので、出世争いでも【しのぎを削って】います。
・大通りを隔てて面したところにある2軒の人気ラーメン屋はいつも激しく【しのぎを削って】いる。
・シーズンも終盤に入ってくると、上位チームは毎試合、【しのぎを削る】ような熱戦を繰り広げています。
まとめ
「切磋琢磨」は学問や道徳や技術を磨くことと、友人間同士で励まし合って技を磨き合うことという2つの意味を持った言葉です。チーム内や仲間同士で高め合うというニュアンスで使われることが多いですが、単独でも使えます。
互いに励まし合ったり、高め合ったりする相手は基本的には自分と同等のレベルの人ということになるでしょう。自分よりも年上の人や上司に対しては、使わないように注意してください。
「切磋琢磨」の意味を理解して、正しく使ってください。
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