「切磋琢磨」を使う際の注意点
「切磋琢磨」はポジティブな意味の言葉ですが、どんな場面においても使えるわけではありません。注意しなければならないのは、年配者や上司に対しては使えないということです。「切磋琢磨」は仲間同士、同じチーム内に所属するメンバー同士で使う言葉です。
年配者や上司に対して、「切磋琢磨していきましょう」といった発言をすると、相手に不快感を与える可能性もあるので、注意してください。
「切磋琢磨」の類義語4つ
「切磋琢磨」にはいくつかの類義語があります。主なものは、「研鑚」「鍛錬」「しのぎを削る」の3つです。
「切磋琢磨」よりもシンプルな表現になる「研鑚」と「鍛錬」、競い合っていることがより強調される「しのぎを削る」など、場面に応じて言い換えできる言葉が揃っています。
研鑚(けんさん)
「研鑽」の意味を辞書で確認していきましょう。
[名](スル)学問などを深く究めること。「日夜―を積む」「自ら―して習得する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「研鑽」とは、学問を深く究めること。「研鑽を積む」「研鑽に励む」というように使います。「研讃」という書き方と間違えられることがありますが、「讃」は間違いで、「鑚」であることに注意してください。
【例文】
・彼は小学校入学と同時期に剣道の道場に入門したので、20年間、【研鑚】を積んできたことになります。
・君たちがここまで【研鑚】してきた成果は着実に出ています。
鍛錬(たんれん
「鍛錬」の意味は以下のとおりです。
[名](スル)
1 金属を打ってきたえること。
2 きびしい訓練や修養を積んで、技芸や心身を強くきたえること。「精神を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「鍛錬」とは、きびしい修行や訓練を行って、技や精神を磨くこと。スポーツや芸術でよく使われますが、ビジネスや日常会話でもよく登場します。
【例文】
・彼がどんなにハードな仕事をしても弱音を吐かないのは、日々の【鍛錬】を欠かさないからでしょう。
・一流のスポーツ選手は目立たないところで【鍛錬】していますが、彼は努力していることをアピールしすぎです。
しのぎを削る
「しのぎを削る」の意味は、以下のとおりです。
激しく刀で切り合う。転じて、激しく争う。「二党が―・る激戦区」
[補説]「凌ぎを削る」と書くのは誤り。『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「互いに励まし合って向上しようとするという意味の「切磋琢磨」に対して、「しのぎを削る」はより争いのニュアンスの強い言葉といえるでしょう。仲間というよりもライバル同士が競い合うケースで使われます。
【例文】
・同期で入社したA君とB君はともに大変優秀で対抗意識も強いので、出世争いでも【しのぎを削って】います。
・大通りを隔てて面したところにある2軒の人気ラーメン屋はいつも激しく【しのぎを削って】いる。
・シーズンも終盤に入ってくると、上位チームは毎試合、【しのぎを削る】ような熱戦を繰り広げています。
「切磋琢磨」の対義語3つ
では、「切磋琢磨」と反対の意味を持つ言葉とは、一体どのようなものを指すのでしょうか? ここでは、「切磋琢磨」とは真逆の行動や生き方を表す四字熟語を3つ紹介します。
一暴十寒
「一暴十寒」は、「いちばくじっかん」と読みます。どのような意味なのでしょうか?
《「孟子」告子上の「一日之を暴(あたた)めて十日之を寒(ひや)さば、未だ能く生ずる者有らざるなり」から》努力しても怠ることが多くては、むだになる。継続して事を行わなければ効果はあがらないということ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一暴十寒」は孟子の言葉で、「一日中日光に当ててあたためたとしても、10日間、冷やしてしまっては意味がない」ということを表します。勤勉に努力する量よりも、怠けることのほうが多いことのたとえとして使われますね。ストイックに技術を磨く「切磋琢磨」の対義語として捉えることができるのではないでしょうか。
【例文】
・「毎日勉強しなければ成果は出ない。それでは一暴十寒だ」と父に言われてしまった。
無為徒食
「無為徒食(むいとしょく)」の意味は、以下のとおりです。
[名](スル)なすべきことを何もしないでただ遊び暮らすこと。「貯金を頼りに―して日々を過ごす」『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何も仕事をしないで、遊んで暮らすことを「無為徒食」と言います。やるべきことをせず、ただぶらぶらと何の目的もなく行動している自堕落な様子がイメージできますね。目標に向かって精一杯努力している「切磋琢磨」とは正反対の言葉です。
【例文】
・兄は事業に失敗してから親の脛をかじり、無為徒食の生活を送っているようだ。
酔生夢死
「酔生夢死」は、「すいせいむし」と読みます。意味を見ていきましょう。
《「程子語録」から》酒に酔ったような、また夢を見ているような心地で、なすところもなくぼんやりと一生を終わること。『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「酔生夢死」は、何もせず、ただ酒に酔ったようにぼんやりと人生を送ること。夢や目標を持つことなく、ただ何となく惰性で生きていることとも言えるかもしれません。こちらも、自分のスキルを磨き合う「切磋琢磨」とは正反対と言えますね。
【例文】
・祖父は祖母を亡くしてから、酔生夢死のような生涯を過ごしたそうだ。
最後に
「切磋琢磨」は、学問や道徳や技術を磨くことと、友人間同士で励まし合って技を磨き合うことという2つの意味を持った言葉です。チーム内や仲間同士で高め合うというニュアンスで使われることが多いですが、単独でも使えます。
互いに励まし合ったり、高め合ったりする相手は基本的には同僚や友人となります。自分よりも年上の人や上司に対しては、使わないように注意してください。「切磋琢磨」の意味を理解して、正しく使ってみてくださいね。
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