年配者や上司に対して、「切磋琢磨していきましょう」といった発言をすると、相手に不快感を与える可能性もあるので、注意してください。
「切磋琢磨」を使う際の注意点
「切磋琢磨」はポジティブな意味の言葉ですが、どんな場面でも使えるわけではありません。「切磋琢磨」は仲間同士、同じチーム内に所属するメンバー同士で使うには自然なものの、年配者や上司に対して用いるのは不自然です。相手によっては不快だ、と捉えられてしまう可能性があるので注意しましょう。

【Domani編集部の体験談】ビジネス等で使う時の注意点
実際のビジネスシーンで「切磋琢磨」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。Domani編集部のメンバーの「切磋琢磨」にまつわる体験談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode】チームを鼓舞する「切磋琢磨」
Domani編集部 A(39)
管理職になって、部下同士の意見交換を促す際に「お互いに意見をぶつけ合ってu003cstrongu003e切磋琢磨u003c/strongu003eしよう」と声をかけています。この言葉を使うことで、単なる議論に終わらず、お互いの成長を目的とした建設的な話し合いになるよう導いています。ライバルとして競い合うのではなく、仲間として高め合うという前向きな姿勢を育むために、この言葉はとても効果的だと感じています。
「切磋琢磨」の類義語
「切磋琢磨」にはいくつかの類義語があります。主なものは、「研鑚」「鍛錬」「しのぎを削る」です。
「切磋琢磨」よりもシンプルな表現になる「研鑚」と「鍛錬」、競い合っていることがより強調される「しのぎを削る」など、場面に応じて言い換えできる言葉が揃っています。

研鑚(けんさん)
「研鑽」の意味を辞書で確認していきましょう。
[名](スル)学問などを深く究めること。「日夜―を積む」「自ら―して習得する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「研鑽」とは、学問を深く究めることで「研鑽を積む」「研鑽に励む」といったように使います。「研讃」という書き方と間違えられることがありますが、「讃」は間違いです。「鑚」と書きましょう。
【例文】
・彼は小学校入学と同時期に剣道の道場に入門したので、20年間、【研鑚】を積んできたことになります。
・君たちがここまで【研鑚】してきた成果は着実に出ています。
鍛錬(たんれん)
「鍛錬」の意味は以下のとおりです。
[名](スル)
1 金属を打ってきたえること。
2 きびしい訓練や修養を積んで、技芸や心身を強くきたえること。「精神を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「鍛錬」とは、きびしい修行や訓練を行って、技や精神を磨くこと。スポーツや芸術でよく使われますが、ビジネスや日常会話でもよく登場します。
【例文】
・彼がどんなにハードな仕事をしても弱音を吐かないのは、日々の【鍛錬】を欠かさないからでしょう。
・一流のスポーツ選手は目立たないところで【鍛錬】していますが、彼は努力していることをアピールしすぎです。
しのぎを削る
「しのぎを削る」の意味は、以下のとおりです。
激しく刀で切り合う。転じて、激しく争う。「二党が―・る激戦区」
[補説]「凌ぎを削る」と書くのは誤り。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「互いに励まし合って向上しようとするという意味の「切磋琢磨」に対して、「しのぎを削る」はより争いのニュアンスの強い言葉といえるでしょう。仲間というよりもライバル同士が競い合うケースで使われます。
【例文】
・同期で入社したA君とB君はともに大変優秀で対抗意識も強いので、出世争いでも【しのぎを削って】います。
・大通りを隔てて面したところにある2軒の人気ラーメン屋は、いつも激しく【しのぎを削って】いる。
・シーズンも終盤に入ってくると、上位チームは毎試合【しのぎを削る】ような熱戦を繰り広げています。

「切磋琢磨」の対義語
では、「切磋琢磨」と反対の意味を持つ言葉とは、一体どのようなものを指すのでしょうか? ここでは、「切磋琢磨」とは真逆の行動や生き方を表す四字熟語を紹介します。
一暴十寒(いちばくじっかん)
「一暴十寒」は、「いちばくじっかん」と読みます。どのような意味なのでしょうか?
《「孟子」告子上の「一日之を暴(あたた)めて十日之を寒(ひや)さば、未だ能く生ずる者有らざるなり」から》努力しても怠ることが多くては、むだになる。継続して事を行わなければ効果はあがらないということ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「一暴十寒」は孟子の言葉で、「一日中日光に当ててあたためたとしても、10日間冷やしてしまっては意味がない」ということを表します。勤勉に努力する量よりも、怠けることのほうが多いことのたとえとして使われますね。ストイックに技術を磨く「切磋琢磨」の対義語として捉えることができるのではないでしょうか。
【例文】
・「毎日勉強しなければ成果は出ない。それでは一暴十寒だ」と父に言われてしまった。
無為徒食(むいとしょく)
「無為徒食(むいとしょく)」の意味は、以下のとおりです。
[名](スル)なすべきことを何もしないでただ遊び暮らすこと。「貯金を頼りに―して日々を過ごす」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何も仕事をしないで、遊んで暮らすことを「無為徒食」と言います。やるべきことをせず、ただぶらぶらと何の目的もなく行動している自堕落な様子がイメージできますね。目標に向かって精一杯努力している「切磋琢磨」とは正反対の言葉です。
【例文】
・兄は事業に失敗してから親の脛をかじり、無為徒食の生活を送っているようだ。
酔生夢死(すいせいむし)
「酔生夢死」は、「すいせいむし」と読みます。意味を見ていきましょう。
《「程子語録」から》酒に酔ったような、また夢を見ているような心地で、なすところもなくぼんやりと一生を終わること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「酔生夢死」は、何もせず、ただ酒に酔ったようにぼんやりと人生を送ること。夢や目標を持つことなく、ただ何となく惰性で生きていることとも言えるかもしれません。こちらも、自分のスキルを磨き合う「切磋琢磨」とは正反対と言えますね。
【例文】
・あの人はすべてを失ったあと、酔生夢死のような生涯を過ごしたそうだ。
切磋琢磨の英語表現
「切磋琢磨」は、お互いに高め合う関係性を表す言葉です。そのため、英語で表現する場合、状況やニュアンスに合わせて複数のフレーズを使い分ける必要があります。
お互いに競い合い、成長する場合
協力関係の中で共に成長していく様子を表現する際には、work togetherやlearn fromが使われます。
例文
・We worked together to overcome the difficulties.(私たちは困難を乗り越えるために切磋琢磨した。)
・They are working together to improve the product.(彼らは製品を改善するために切磋琢磨している。)
・The colleagues learned from each other and became better at their jobs.(同僚たちは切磋琢磨し、仕事がより上手くなった。)
・We can learn from each other’s experiences.(私たちは互いの経験から学び、切磋琢磨することができる。)
お互いに競い合い、成長する場合
ライバル関係の中で成長していく様子を表現する際に使われるのが、competeやchallengeです。
例文
・We competed with each other to finish the project first.(私たちはプロジェクトを一番に終わらせようと切磋琢磨した。)
・The members of the team challenge each other to achieve their goals.(チームのメンバーは、目標達成のために互いに切磋琢磨している。)
・They challenged each other to learn new skills.(彼らはお互いに新しいスキルを学ぶことで切磋琢磨した。)
よくある質問
「切磋琢磨」という言葉は、しばしば耳にしますが、その使い方や由来について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、この言葉に関するよくある質問にお答えします。
Q. 「切磋琢磨」はどんなときに使いますか?
「切磋琢磨」は自分自身を磨き上げる様子や、仲間やライバルと互いに励まし合い、競い合いながら、ともに成長していく様子を表す言葉です。ビジネスにおいては、チームメンバー同士が協力してスキルを高め合ったり、ライバル企業と競争することで自社のサービスを向上させたりする場面で使われます。他者との関係性の中で、自分を磨き上げていくというニュアンスが含まれています。
Q. 友達との関係を表す「切磋琢磨」を使った例文は?
友達との関係を表す際に「切磋琢磨」を使う場合は、以下のような例文が考えられます。
例文
・受験勉強で、彼とはお互いに切磋琢磨して頑張った。
・私たちはライバルとして、そして友人として切磋琢磨していこう。
このように、お互いの成長を目的として協力したり、競い合うといった関係性を示す際に用いるのが適切です。
Q. 「切磋琢磨」の故事や由来は?
「切磋琢磨」は、古代中国の「詩経」と「論語」に由来する言葉です。「切磋」は石を切り、やすりで磨いて美しくすることを、「琢磨」は玉をのみで彫り、磨き上げて光沢を出すことを意味します。これらの言葉が組み合わさり、骨や象牙・玉などに細工を施すように、互いに励まし合い、学問や人格を磨き上げるという意味で使われるようになりました。
最後に
- 「切磋琢磨」は学問や技術を磨くこと、または仲間と励まし合い高め合うこと
- 同僚や友人など対等な関係に用いるのが自然である
- 類義語には「研鑽」「鍛錬」「しのぎを削る」があり、文脈に応じて使い分けると表現が豊かになる
「切磋琢磨」は、学問や道徳や技術を磨くことと、友人間同士で励まし合って技を磨き合うことという2つの意味を持った言葉です。チーム内や仲間同士で高め合うというニュアンスで使われることが多いですが、自分自身を表す際にも使えます。
互いに励まし合ったり、高め合ったりする相手は基本的には同僚や友人となります。自分よりも年上の人や上司に対しては、あまり使わないほうがいいでしょう。「切磋琢磨」の意味を理解して、正しく使ってみてくださいね。
TOP画像/(c) Adobe Stock
Domani編集部
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