「縦横無尽」ってどんな言葉?
「縦横無尽に駆け回る」といったフレーズを、聞いたことはあるでしょうか。「縦横無尽」は比較的馴染みのある四字熟語ですが、正しく使うためには意味をきちんと理解しておく必要があります。本章では、「縦横無尽」の意味や言葉の由来について解説します。
「縦横無尽」の意味
辞書を引くと、「縦横無尽(じゅうおうむじん)」の意味は以下のように解説されています。
[名・形動]
どの方面にも限りがないこと。物事を思う存分にすること。また、そのさま。「縦横無尽な(の)活躍ぶり」
引用:小学館『デジタル大辞泉』
「縦横無尽」という四字熟語は、物事を思うままにおこなったり、何かを自由自在に動かしたりする様子を指して使われます。またビジネスシーンで「縦横無尽に仕事ができる」と言えば、「どの方面にも限りがないこと」の意味で用いられており、どんな仕事もこなせることを表現しています。
「縦横無尽」の由来
「縦横無尽」とは「縦横」と「無尽」という2つの熟語が合わさって成る四字熟語です。「縦横」は文字通り、縦と横という言葉から「四方八方の全て」という意味で使われています。そして「無尽」は、尽きることが無いと書くことから「限界がない」という意味で用いられます。この2つの言葉を合わせる事で、「縦横無尽」が自由自在であること、四方八方へ限りがないこと、思う存分であるという意味を持つようになるのです。
各漢字の意味や成り立ち
4つの漢字からなる「縦横無尽」ですが、漢字にはそれぞれ意味や成り立ちがあります。本章では、その意味と成り立ちについて解説します。「縦横無尽」という熟語を覚えるとともに、それぞれの漢字についても理解しておきましょう。きっと熟語の意味をより深く理解できるはずです。
「縦」「横」の意味と成り立ち
まずは「縦」「横」について、それぞれ解説します。
「縦」は以下5つの意味を持つ漢字です。
1. タテヨコの「タテ」
2. ゆるめる、緩む
3. ほしいまま
4. 許す、見逃す
5. 放つ
漢字は3つのパーツからなります。辺の部分は「より糸」の象形です。そしてつくりの部分「従」は、2つに分けられます。左側は、十字路の左半分を意味しており、右側は「横から見た人」「立ち止まる足」を表しています。
「横」には多くの意味があるため、代表的な5つのみを以下で紹介します。
1. タテヨコの「ヨコ」
2. 横たわる(横たえる)
3. 横切る
4. よこしま
5. ほしいまま
「横」という漢字の辺は、「木」の象形です。そしてつくり部分は、腰に玉を帯びた人の象形となっています。
「無」「尽」の意味と成り立ち
次に「無」「尽」について、それぞれの漢字を解説していきます。
「無」は、以下のような意味をもつ漢字です。
1. ない(なし)
2. 〜なかれ
3. 万物の根源となる道
4. 豊か
「無」は漢字全体で、人の舞う姿を表している象形文字です。
そして「尽」には、以下のような意味があります。
1. つきる
2. つくす
3. ことごとく〜
4. つごもり
最後の「つごもり」というのは、月の最後の日を指す言葉です。
「尽」は、2文字以上の漢字を組み合わせて作られる会意文字であり、盡(じん)の略字とされています。「盡」は、上半分で「はけを手にする様」を、下半分で「うつわ」を表しています。
「縦横無尽」の類義語・対義語は?
語彙力を上げるコツは、ひとつの熟語を覚えるときに、類対義語までをセットで覚えてしまうことです。そうすることで、いくつかの熟語をひとつのグループとしてインプットできるのです。ここからは「縦横無尽」の類義語と対義語を見ていきましょう。
「縦横無尽」の類義語
「縦横無尽」と似た意味で用いられる熟語には、以下のようなものがあります。
・自由自在(じゆうじざい)
・縦横自在(じゅうおうじざい)
・三面六臂(さんめんろっぴ)
・縦横無碍(じゅうおうむげ)
上4つの中でも「自由自在」と「縦横自在」は、「縦横無尽」と特に似た意味を持っており、同義語といっても差し支えありません。「三面六臂」は、ひとりで多方面に活躍することを意味した四字熟語です。「縦横無碍」は、妨げるものがなく自由な様子を意味しています。
「縦横無尽」の対義語
「縦横無尽」の対義語としては「手枷足枷(てかせあしかせ)」という熟語が代表的です。「手枷足枷」は「行動の自由を束縛するもの」という意味で用いられています。手枷と足枷は、人の自由を奪うものとして用いられる道具であることからも、四字熟語の意味を推測しやすいでしょう。
「縦横無尽」の使い方は?
「縦横無尽」は日常生活において、比較的使いやすい四字熟語です。しかし、用いる際は間違って使うことのないように、使用例をよく確認しておきましょう。本章では、「縦横無尽」の使い方を、文章で用いるケースと会話で使うケースに分けて解説します。さらに、夏目漱石など著名な作家が、作品の中で実際に「縦横無尽」を使っていた例も合わせて紹介します。
「縦横無尽」の例文
「縦横無尽」を文章の中で活用するには、以下の例文を参考にしてください。
・彼の縦横無尽な活躍によって、チームが勝利した
・公園で犬が縦横無尽に駆け回っている
・我が社の社長は、縦横無尽な発想をする人物であり、とても尊敬できる
・彼女は縦横無尽に仕事をこなす、大変優秀な社員である
例文からもわかるように、「縦横無尽」は誰かを称賛する際に使われる言葉です。
会話での使い方
では日常会話の中で、「縦横無尽」を使いたいときには、どのように用いればよいのでしょうか。以下の会話例を参考にしてください。
Aさん「うちの社長の発想力は、縦横無尽ですね」
Bさん「そうですよね。いつも驚かされています」
Aさん「一度頭の中を覗いてみたいものです」
Cさん「あのチームの◯◯選手のプレーはいつ見ても惚れ惚れしますね」
Dさん「まったくです。球場を縦横無尽に駆け巡る姿には、圧倒されます」
有名小説での使われ方
歴史に名を残した著名作家も「縦横無尽」という言葉を使っています。以下はその一例です。
・この時つくつく君は悲鳴を揚げて、薄い透明な羽根を縦横無尽に振(ふる)う。
夏目漱石『吾輩は猫である』より
・大河や小さい河は、縦横無尽といっていい。
吉川英治『平の将門』より
・屈従と倦怠の縦横無尽の線条から、無限の距離に引き伸して彼は半日の旅程に就いた。
三好達治『測量船』より
意味を知って「縦横無尽」を正しく使おう!
「縦横無尽」という四字熟語について解説しました。何にも遮られることなく、四方八方へ自由に物事をおこなう姿を表す際にこの言葉は使われています。実際に体を動かす様子はもちろん、多方面の仕事ができることを指す場合にも活かせる四字熟語です。ぜひ日常的に使ってみてください。
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