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2019.12.18

周防監督が語る映画『カツベン!』の魅力【周防正行監督×Domaniモデル望月芹名 スペシャル対談 vol.1】

 

『Shall we ダンス?』や『舞妓はレディ』などで知られる、周防正行監督。約5年ぶりの最新作となる『カツベン!』(12月13日公開)の魅力について、『Domani』カバーガールの望月芹名がインタビューしてきました!

周防正行監督の最新作が公開!テーマになっている “カツベン”とは??

コメディから社会派まで幅広いジャンルの名作を世に送り出してきた、映画監督の周防正行。監督が、約5年ぶりにメガホンを取ったのが、12月13日公開の映画『カツベン!』。現代人には聞き慣れない“カツベン”とは、映画に音がなかった時代に、上映中のスクリーンの横で自らの声で映画を説明し、活動写真(=無声映画)を彩る“活動弁士”のこと。映画『カツベン!』は、その活動弁士を夢見る青年を主人公(主演:成田 凌)にした、コメディドラマです。

すでに公開前から話題になっている映画『カツベン!』の魅力だけではなく、貴重な夫婦のお話まで、カバーガール兼ビジュアルエディターの望月芹名が周防監督にインタビューしてきました!

サイレント映画をサイレントで観ている観客は存在しなかった!

望月芹名(以下、芹名): この映画で、“活動弁士(カツベン)”の存在を初めて知ったのですが、今回、活動弁士を主題とした映画を製作しようと思ったきっかけを教えていただけますか。

周防正行監督(以下、監督): 『舞妓はレディ』(2014年公開)を撮っているときに、助監督をしてくださっていた片島章三さんから「こんな本を書いたんですけど、読んでもらえませんか?」と渡されたのがきっかけでした。活動弁士の存在はもちろん知っていたんですけど、無視してたんですよ、僕(笑)。学生時代、サイレント映画をたくさん観てたんですけど、サイレント映画って画だけで物語を伝えていくもので、今みたいにセリフがないので大変なんです。画だけで物語を伝えるというのは、映画の基本としてとても重要なことだから、僕はそこに「活動弁士の説明とか音楽はなしで良い」と思っていたんですよね。サイレント映画は、サイレントだからこそ、製作した監督の意図がわかるんだと。だから、当時の僕は、「活動弁士はいらない」って思っていたわけです。それで、いつしか映画監督になって、片島さんの台本を読んだときに、サイレント映画にとっての活動弁士の重要さに初めて気づいたんです! 明治・大正・昭和初期、映画館には必ず活動弁士がいた。

芹名: なるほど、活動弁士ありきでの映画だったということですよね。

監督: リュミエール兄弟が発明した映画を日本でいちばん最初に興行した第一日、その日からスクリーンの横に人は立ってたんです。だから、日本では活動弁士がいるということが当たり前の前提だったことになるんです。サイレント映画をサイレントで観ている観客なんていなかったということになる。そんな重要なことを僕は考えたこともなかった。

芹名: サイレント映画はサイレントとして観ている可能性があるのは、現代人だけなんですね。

監督: そうなんですよ! さらに重要なことがね、その当時の監督は、自分の映画がやがて公開されるとき、生演奏と活動弁士の語りが入るということを前提として撮っていたことになるんです。もしかしたら、サイレント映画を撮っていた監督の意図と言うのは、活動弁士あってこそ伝わるものかもしれないよね。今回『カツベン!』を撮ったのはね、半分は“反省”。映画監督として、日本映画の初期30年間の無声映画を支えていた活動弁士の存在を無視していたから。なおかつ、活動弁士は、当時の映画監督が映画を作る上で大きな影響を与えたと思うんです。そこにすごく面白さを感じたんです。

かつての映画館は観客が歓声やヤジを飛ばして、盛り上がっていたのが普通!

芹名: もし監督が、今後、無声映画を撮るということになったら、いろいろなことを考えないといけないということですよね。

監督: 本当にそうだね。当時、映画を作っていた人たちは「このシーンは活動弁士の喋りがたっぷり入るだろうから、長くしよう」とか、そんな風に思いながら撮っていたかもしれない。活動弁士がいることが前提だったから。もしかしたら、活動弁士は、トーキーの時代になって職を失うけど、その後の日本映画にも、大きな影響を与えていたかもしれない。

芹名: 今回、ご自身の脚本以外では初めての監督作品でいらっしゃるんですよね。今までと何か違った点はありましたか?

監督:自分でシナリオを書くときは、まずは頭の中に映像、そのシーンを思い浮かべて、それを文字に書き下ろしているんです。でも、今回は字から映像を作り上げるということをしたので、まったく違いました。実際に撮影しながら、「そうか、シナリオライターはこんなことを考えていたのか」とか、現場で気づくことがあまりにも多くて、びっくりしました。現場に行くまでに考えていたことが、現場で役者さんの動きとかセリフを聞いて、新たに気づくことがあったりしたので、撮影しててすごく楽しかったです。

芹名: 今回、活動弁士をテーマにしたことによって、ご自身の映画への取り組み方や考え方に影響を与えたことはありますか?

監督:取り組み方は別として、“映画館”というものの存在への考え方は、明らかに変わりましたね。映画が音を持っていなかった時代の映画館は、すごく賑やかだったということを実感しました。まず、生演奏があるから、活動弁士の声ってものすごく大きくて、よく通るものでなければならなかった。だって、マイクがない時代ですよ。そこに、観客が自然と歓声を上げるんです。「待ってました!」「日本一!」とか、掛け声もかかって、大衆演劇とか歌舞伎と同じ。もちろん、ヤジも飛んだ。活動弁士は、その日のお客さんを見て喋りを変えたりするから、毎回まったく違う内容で、まるで生の舞台みたいだった。今の映画館は、最近は“応援上映”というものもあるけど、基本的には観客は喋らないでしょ? 拍手する人もいないでしょ? 映画が音を持った瞬間に、マナーとして黙って観ることを身につけただけで、日本人は本当はもっといろいろな感情を表に出して表現するタイプだったのかもしれない。環境さえあれば、日本人は感情を自由に表現できるんだということも、今回の映画で学んだことですね。

芹名: もし監督が、今“活動弁士”ありきの映画を作ってくださいと言われたら、作りたいですか?

監督: 作りたいですね。でも、ひとつ、“活動弁士がどう喋ってもいい”という条件をつけてね。活動弁士が、監督の意図とかに縛られず、その日の目の前のお客さんを楽しませることをいちばんに考えたときに、どんな風に語るのか興味がありますよね。自分が意図した表現が、喋り手によってどんな風に変わるのかというのを見てみたいです。

“活動弁士”のことを知ることで、映画『カツベン!』の魅力をさらに感じられそうですね。監督の映画に対する愛情を感じるアツいインタビューのvol.2では、貴重なご夫婦のお話を聞いていますので、要チェックです!

撮影/田中麻以(小学館) ヘア&メーク/陶山恵美(ROI) 取材/望月芹名 構成・文/小山恵子 

映画『カツベン!』(公開中)

映画『カツベン!』予告1 2019年12月13日(金)公開

【あらすじ】
約100年前、“映画(活動写真)”がまだサイレントでモノクロだった時代、音楽とともに独自の“しゃべり”で物語をつくりあげ、観客たちを映画の世界に誘い、そして、熱狂させる“活動弁士”、通称“活弁(カツベン)”が大活躍していた。そんな時代を舞台に、活動弁士を夢見る青年が、とある小さな町の映画館に流れついたことからすべてが始まる アクション×恋×笑いを織り交ぜたノンストップエンターテインメント。

【監督】
周防正行

【出演】
成田凌 /黒島結菜/永瀬正敏/高良健吾/音尾琢真
竹中直人/渡辺えり/井上真央/小日向文世/竹野内豊

【配給】
東映

オフィシャルHPはこちら

監督

周防正行

1956年生まれ。東京都出身。立教大学文学部仏文科卒。1989年、本木雅弘主演『ファンシイダンス』で一般映画監督デビュー。修行僧の青春を独特のユーモアで鮮やかに描き出し注目を集める。再び本木雅弘と組んだ1992年の『シコふんじゃった。』では学生相撲の世界を描き、第16回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、数々の映画賞を受賞。1993年、映画製作プロダクション、アルタミラピクチャーズの設立に参加。1996年の『Shall we ダンス?』では、第20回日本アカデミー賞13部門独占受賞。同作は全世界で公開され、2005年にはハリウッドでリメイク版も製作された。2007年の『それでもボクはやってない』では、刑事裁判の内実を描いてセンセーションを巻き起こし、キネマ旬報日本映画ベストワンなど各映画賞を総なめにした。2011年には巨匠ローラン・プティのバレエ作品を映画化した『ダンシング・チャップリン』を発表。2012年『終の信託』では、終末医療という題材に挑み、毎日映画コンクール日本映画大賞など映画賞を多数受賞。2014年の『舞妓はレディ』では、あふれるような歌と踊りとともに、京都の花街を色鮮やかに描き出した。2016年には、紫綬褒章を受章。

ビジュアル・エディター

望月芹名

都内大学を卒業後、モデルとして東京コレクションなどのショーやテレビCM、広告などに多数出演。雑誌「Domani」にモデルとして登場していたが、ファッションに対する感度の高さから、Domani にてモデル業とエディター業を兼業する「ビジュアル・エディター」に就任。昨年12月に第一子となる娘を出産。2/3月号より表紙キャラクターをつとめている。 望月芹名公式インスタグラム 

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