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2020.02.02

高度脳機能障害でも忘れなかった、愛犬と思い出【うちのダディは脳梗塞21】

カリスマモデルとして活躍した後、20代でデザイナーに転身した佐藤えつこさん。順調にキャリアを重ねていた35歳のとき、父親が脳梗塞で倒れ、人生が一変しました。アラフォーにして介護歴はもう5年。なかなかすぐには回復が進まず、奮闘する毎日が続く中でも、えつこさんは心癒やされる瞬間があると言います。病気で変わってしまったダディが、今も変わらずに大切にしているものとは――。

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変わらない優しさ、大切なモノ

介護が始まって以来、ここまではダディの〝かまってちゃん&困ったちゃん〟なエピソードが満載でしたが、変わらない優しさもあります。

まずは、愛犬のクリイが大好き。元は私が飼っていたパグで、ダディが元気だったころからたびたび実家に連れて帰ったり、旅行中に預かってもらっていました。ダディはクリイをすごくかわいがっていて、以前散歩中にリードがはずれて逃げてしまいそうになったときに、必死で追いかけて顔から転んで歯を折った(!)くらい。

脳梗塞で倒れて間もないころは、記憶がおぼろげになっていたのかクリイを見て怖がってしまう時期もあったんです。でも在宅介護が始まってから唯一、以前の優しさと変わらなかった相手がクリイ。

寝る場所を譲ってあげたり、ブランケットをかけてあげたりと、常にクリイファーストでした。2年前、11歳半でクリイが死んでしまったときは、動かなくなった小さな体の隣で泣いていたダディ。今でも、パグが出てくるホテルズドットコムのCMがテレビで流れると、毎回反応します。

宝物は、自分の本と家族アルバム。画家だったダディは、子どもが大好きなぬいぐるみを持ってくるみたいに、自分の画集をベッドサイドに置いて寝ています。そして、家族と一緒に写っているアルバムの写真を何度も眺めていることも。大事そうに抱えているいじらしい姿には、胸を打たれます。

そういえば、ダディは人に注目されるのが好きだったんですよね。取材や撮影は断らなかったし、人前で話すのも好きだった。そんなダディが、デイケアへ行ってみんなで同じことをするレクリエーションがあると、輪の中に入らないようにしている。「自分は違うんだ」というプライドと同時に、他の人とコミュニケーションをとれないことへの引け目があるようです。自分を出せなくて、殻にこもってしまうみたい。

驚いたのは、ある年のクリスマス、明け方に「きよしこの夜」をひとりで歌っていたこと。歌詞もしっかり発音できていて、「失語症でも歌は歌えるんだ!」と発見でした。

アメリカで暮らしていたこともあるダディは、毎年クリスマスを盛大に楽しんでいて、家の白い壁一面に私と兄でクリスマスツリーの絵を描かせてもらったこともありました。もしかしたら、歌を口ずさみたくなるほど、クリスマスは特別な思い出だったのかもしれません。

家族以外にも、私のパートナーや友達の存在はわかっているようで、家に来るとよそいきな雰囲気を出して、おとなしくしています。いつものようなワガママも言わずいい子モードですが、なんとなく気まずそうで、すぐ寝ちゃう(笑)。

本来はおしゃべり好きだから、元気だったら必ずフレンドリーに話しかけていたけれど、現在のところそれは叶いません。それでも、〝娘の大事な人〟を、ダディなりに大切にしてくれているのかなと思っています。

イラスト/佐藤えつこ 構成/佐藤久美子

▶︎うちのダディは脳梗塞はこちらから全て読めます

佐藤えつこ
佐藤えつこ

1978年生まれ。14歳で、小学館『プチセブン』専属モデルに。「えっこ」のニックネームで多くのティーン読者から熱く支持される。『プチセブン』卒業後、『CanCam』モデルの傍らデザイン学校に通い、27歳でアクセサリー&小物ブランド「Clasky」を立ち上げ。現在もデザイナーとして活躍中。Twitterアカウントは@Kaigo_Diary

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