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2020.03.13

元雪組トップスター・早霧せいなさんが考える男役とは?|スペシャルインタビュー

 

元雪組トップスター・早霧せいなさんのスペシャルインタビュー。vol.2となる今回は、「雪組への思い」「トップスターとしての苦悩」など、19年間過ごしてきたタカラヅカ時代のことをうかがいます。

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「雪組が大好き!また観たい」と、先の時間まで雪組を愛し続けてくださる方がいらっしゃることは、とてもうれしいことでした

14歳の時に「タカラヅカに入ってトップスターになる」という夢を目標にし、ついには雪組トップスターに就任。ずっと描いていた夢を実現した早霧せいなさん。執筆された書籍『夢のつかみ方、挑戦し続ける力』には、ご自身が過ごしてきた道のりやそのときの思いが綴られています。入るのすら難しいと言われているタカラヅカの世界。19年間を過ごしてきたその世界への思いを語っていただきました。

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14歳のときに描いた「タカラヅカに入ってトップスターになる」という夢を実現されました。タカラヅカは愛がある中にもやっぱり厳しい競争がある世界だと思うのですが、それを乗り越えられたのはひとことで言うとなんでしょうか?

早霧さん(以下敬称略):自己責任ですかね。人から言われたのではなく、自分で選んだ好きなことをやれているということに限ると思います。とてもいい意味で、言い訳できない環境にいられたのです。

ちぎさんが考える男役の魅力はどんなところですか?

早霧:これね、難しいですよね。だって女性が男性を演じているって、嘘じゃないですか。でも、完璧に変身して嘘を本当に見せている人たちと、その嘘を本当だと思って見てくれる人が存在する。そのどちらだけでも存在しない。男役って勝手にやってるんじゃないんだよな…なんかこう…、受け手も必要で、それはエンターテイメント全般に言えることなのですけど、届けたい人たちがいて成り立つ世界だと思うんです。

「変身願望が叶う際たるもの=男役」というわかりやすさが10代の私の胸に憧れとして届き、さらに観ている側の気持ちも味わえたからこそ、その世界に行きたいと思ったんです。なんでこんなに面白いんだろう、不思議なんだろう、魅力なんだろう、というのが一気に味わえるんですよ、男役って。…うーん、なんかややこしくてごめんなさい(笑)。

うーん、わかる気がします、両方が同じ方向を向いていないと成り立たない世界ですよね。

早霧:そうなんですよ、歌舞伎も女形を男性が演じますよね。男性ってわかっているけど女性になりきるプロがいて、見る側も女性と思って受け止めている。そのやりとり自体がプロですよね。

さらに、より男性らしく、完成度の高いステージを創りあげていらっしゃるなと。

早霧:男役はステージの上でもひとりでは難しくて、衣装の効果だったり、照明の力だったり、女役さんが隣にいるからこそ男役としていられるというところもあり、そんな総合芸術の塊みたいなものに10代で出合って。男役って普通じゃないんですよ、そこが好きでした。

トップスターになられて、いちばん心を砕いたことを教えてください。

早霧:雪組の組子とのコミュニケーションですかね。トップになったら、舞台以外のことでもなかなか忙しくてコミュニケーションをとる時間が少なくなるんですけど、ちょっとした挨拶とか、視線を交わしたときの目の感じなどを察知して声がけをするとか、していました。ひとつの出来事で笑い合うこととか。

でも実は、自分が忙しくてなかなかみんなと触れ合えないからさびしくて、自分が余裕があるときに声をかけるというかちょっかいを出していましたね(笑)。自分がリラックスできて自然体でいられました。

ちぎさんがつけたあだ名の方もいっぱいいるイメージなのですが…

早霧:そそそ、そうですよね(笑)。「ひーこ」っていうあだ名の子がいたんですけど、わざと逆から「こーひー」って呼んでました。たぶん私以外誰も呼んでいないし、こういう媒体にも絶対載らない。「えみりちゃん」という子にはなんかお嬢ってつけたくて「えみりの嬢」とかね。「星加梨杏」という子は、せいかりあんせいかりあんいかりあん…「かりあん!」って。全然「かりあん」ってキャラじゃないのに、ちょっと今責任を感じてるんですけど。でも本人も喜んでくれているし、まぁ、いいかなって(笑)。

(笑)。『おとめ』にも載っている気がします。

早霧:そうかー、しまった(笑)!

いちばんうれしかったことはなんでしたか?

早霧:自分がトップになったとき、「どういう組にしたいですか、どういうトップになりたいですか」とすごく聞かれたんですよ。そのときに浮かんだのが、「雪組大好き!また観たい!」と愛され続けること。1回限りではなく、もっと先の雪組も観たいと思ってもらえるように愛していただきたいなと思っていました。実際にそんな声をいただきまして。もっと具体的な、「今度タカラヅカを観たことのない友達を誘って、感動を共有したいです」とか「嫌がる彼を連れてきたらハマってくれたんです」とか。そういう声をずっと受け続けられたことが、うれしかったですね。

雪組さんのワクワクする感じは老若男女問わず届くというか、そんな印象はあります。

早霧:組織としてキレイなものしか見せていないつもりなんですけど、その後ろにある、それぞれが背負っている人間ドラマって絶対に滲み出ると思うんです。そこの人間関係がうまくいっているかとか、今どんな状況かっていうのが、隠しているつもりでも出てしまう。だから、せめて一緒の作品に携わる人たちとそれを創る間だけでも、楽しく穏やかでいられたらいいなと。よく笑うようにしていたし、笑っている人のところに近づいていっていましたね、心地よかったから。
みんな面白かったですよ。つまらなそうにしている人がいたらわざといじって、人間として一歩踏み込んでやろうって。トップの権力行使みたいな(笑)。

そんな空気が観客にもなんとなく伝わったのでしょうか?

早霧:自分が嘘をつけない正直者で、しかも嘘をつくとすぐバレるんですよ。なので、常々、嘘がないようにしたいなと思っていました。みんなも、私が嘘をつかなくてもいいような環境を作ってくれたのは本当にありがたかったですね。それにはとっても救われました。
「そりゃいじけるよな」とか「今、悔しいんだろうな」とか「ここが頑張りどころだよ」とか、キレイなだけじゃなく自分も通ってきた道で。そういうのが見えるから、私も負けられないぞという奮起材料にもなりましたね。

人間と人間の…

早霧:そうそう、人間好きなんです。

そこから得られるものや生み出されるものがあるんですね。

早霧:うん、そうなんです。

ちぎさんは自身に厳しいイメージですが、自分にご褒美などあげたりしましたか?

早霧:うーん、もっとご褒美ってあげてもよかったなと思いましたけど、「この舞台が終わったらこれが待っているよ」というのは下手くそでしたね。でも、ちゃっかり旅行もしているし、ちゃっかりいい時計も買ったりしていたな…。この質問を受けて振り返ったら結構あるかも(笑)。

『星逢一夜』という精神的に大変な作品があって、それを中日劇場で再演したんですよ。1度目の公演のときはそこまでハードだと思わずに取り組んでいたけれど、でも、2度目は大変さを知ってしまっているから。「あのハードな世界にまた入るのか」と思ったときに、(中日劇場のある)名古屋でカルティエの時計を買ったんですよ。たぶんあれは、『星逢一夜』のご褒美だったんだと思うんです。後にも先にも、あれほど高価なものを舞台のときに買ったという記憶がないので。あの作品をよくぞ乗り越えた、という自分へのご褒美だったのかもしれません(笑)。

わりと役に引きずられるというか、残ってしまうタイプですか?

早霧:そうありたくはないと思っているんですよ。だって、自分は自分で、役は役だとずっと思っているけど…でも引きずられない方がおかしいかもしれません。長い時間その役と向き合うということは、人と向き合うことと一緒で、その人のことを考えたり、クセがうつったり、好みを知って共有したいと思うんですよね。

自分と分けた方がスイッチの切り替えがしやすい役と、逆にその世界にずっといた方が生きやすい役と2パターンあるのですが、その使い分けは難しいですね。なぜなら、そのときはその役と向き合うことに必死だから。自分とかけ離れている役や重い役の場合は、本来の自分に戻るのがしんどいですね。テンションの高い役も元気を吸い取られるので、本来の自分がエネルギーを消費しないようにあえてヘタッとしている感じです。本来の自分が健康であれば、引きずられることなく太刀打ちできるんでしょうね。なので、常に健康でいたいなと思っています、心も体もね。


「舞台の上の役者もそれを受け取る観客もプロで、その表現をやり取りする空間はもはや完成されたもの」という早霧さん流の演劇論に、とても納得。観客のひとりとして、真摯な気持ちでステージに向き合うべしと再認識しました。あだ名の裏話には思わずニヤニヤ。早霧さんの自由さと遊び心が垣間見れました。

撮影/大靏 円(昭和基地) スタイリスト/小川未久 ヘア&メイク/元木美紗 文/淡路裕子

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女優

早霧せいな

さぎりせいな・9月18日生まれ、長崎県出身。2001年に87期として宝塚歌劇団に入団、宙組大劇場公演『ベルサイユのばら2001』で初舞台を踏み、その後宙組に配属。2006年『NEVER SAY GOODBYE』で新人公演初主演。2008年バウホール公演『殉情』で初のW主演をし、2009年に雪組へ組替え。2011年バウホール&日本青年館公演『ニジンスキー〜奇跡の舞神〜』で初主演。2014年雪組トップスターに就任、大劇場公演『ルパン三世ー王妃の首飾りを追え!ー/ファンシー・ガイ!』でお披露目。2017年大劇場公演『幕末太陽傳/Dramatic “S”!』で退団。トップスター中の5作品すべての客席稼働率が100%超えという結果を残した。退団後は舞台やドラマへの出演のほか、書籍『夢のつかみ方、挑戦し続ける力』(河出書房新社)を上梓。今月に舞台『脳内ポイズンベリー』の公演(3月20日〜)も控えているほか、5月にはWOWOWドラマ『異空間居酒屋「のぶ」』、9月には舞台『ゲルニカ』への出演が決まっている。
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