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「ご用命ください」
「ご用命」を使った表現で最も見聞きするのが、「ご用命ください」。「何か用があれば申し付けてください」という意味があり、立場が下の人から目上の人に対して使える言葉です。
例文
・ご希望の〇〇がありましたら、ご用命ください
・〇〇にご要望があれば、ご用命ください
ただし、目上の人に対して「ご用命ください」だけでは少し気が引けると感じる人もいるでしょう。そんなときは、ご用命の前に「どうぞ」「なんなりと」を足すのがおすすめです。より丁寧な言い回しになるので、目上の人に対しても使いやすいでしょう。
「ご用命の際は」
相手が何を望んでいるのか、明確でないときに使える表現がこちら。例えば、上司が忙しそうなときに、自分が何を手伝えるかわからないことってありますよね。そんなときに使えるのが「ご用命の際は」を用いたフレーズです。
例文
・弊社の〇〇をご用命の際は、どうぞご連絡ください
・ご用命の際はいつでもお呼びください
・次回ご用命の際には、よろしくお願いいたします
「ご用命の際は」は相手を配慮する言葉なので、取引先や上司など目上の人に対して使えば良い印象を与えられるでしょう。
「ご用命がございましたら」
「ご用命がございましたら」も、相手が望んでいるか明確でないときに使える表現です。「ご用命がございましたらお申し付けください」と伝えることで、「何か(注文や要望など)用事があれば言い付けてほしい」という意思を丁寧に伝えることができます。
例文
・もし他に何かご用命がございましたら、遠慮なくお申し付けください
・新商品の資料を送付いたします。ご用命がございましたら、いつでもお申し付けください
「ご用命いただき」
依頼をくれた相手に、感謝の気持ちを伝えたいときに使える「ご用命いただき」。ビジネスでも頻繁に出てくる言葉ですが、この表現は社内の上司や先輩よりも取引先に対して使われるのが一般的です。
例文
・〇〇をご用命いただきありがとうございます
・数ある〇〇の中からご用命いただき、御礼申し上げます
感謝の気持ちを伝えるには「ありがとうございます」の一文でも十分伝わりますが、「ご用命いただき」を加えることでより感謝の気持ちを強調して伝えられます。
「ご用命賜りますよう」
「ご用命ください」より、丁寧な言い回しの「ご用命賜りますよう」。「賜る」=「ください」という敬語を組み合わせることで「何かあれば申しつけください」という意味になり、ビジネスでより丁寧にお願いしたいときに使える敬語表現です。
例文
・ご用命賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします
・お早めにご用命賜りますよう、お願い申し上げます
大きなプロジェクトや事業になると、決定権が企業の代表や社長に委ねられることも少なくありません。その際は、「ご用命ください」より丁寧な表現を用いるのが望ましいでしょう。
「ご用命賜りました」
「ご用命賜りました」は、注文を受けた相手に対して使える表現です。例えば、取引先から商品やサービスの注文を受けたときに「確かに注文を受け取りました」という確認の意を込めて使われます。
例文
・〇〇の件、確かにご用命賜りました
・〇〇を希望とのこと、ご用命賜りました
ご用命に「賜りました」を付け加えることで、感謝の意味も込められる便利な表現です。今後も長く取り引きを続けたいなら、「ご用命賜りました」を使うのが望ましいでしょう。
【実際の体験談】ビジネス等で使う時の注意点
実際のビジネスシーンで「ご用命」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。「ご用命」にまつわる成功・失敗談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】上席とのやり取り
Aさん(管理職、35歳)
先日、役員から新サービスの資料について「この件は、ぜひAさんに頼みたい」と言われ、身が引き締まる思いでした。私が「ご用命いただきありがとうございます。全力を尽くします」と答えると、役員は「そう言ってくれると本当に頼もしいよ。応援しているからね」と激励の言葉をくださったのです。おそらく、u003cstrongu003e「ご用命」と表現したことで、絶対にこの仕事を完遂するぞという私の覚悟が伝わったu003c/strongu003eのではないかと思います。自分の気持ちを間違いなく伝えるには、言葉選びが大事なんだなと改めて実感した出来事です。
【episode2】部下との認識のずれ
Tさん(管理職、45歳)
ある日、部下がお客様とのやり取りで「この件、私からu003cstrongu003eご用命u003c/strongu003eさせていただきます」と伝えていました。私は慌てて「お客様に『ご用命』するなんておかしいよ」と、すぐに訂正を促しました。u003cstrongu003eなぜなら「ご用命」は相手の行為を敬う言葉で、自分が依頼するときには使わないからです。u003c/strongu003eお客様への依頼を丁寧に伝えるなら、「この件、私からu003cstrongu003eご依頼u003c/strongu003eいたします」が正しいと指導しました。
「ご用命」と言い換えられる類語
「ご用命」は丁寧な言葉ですが、使う相手によっては堅苦しい表現になることもあります。「ご用命」の代わりに使える類語表現を習得し、状況に合わせて使い分けるようにしましょう。
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「申し付ける」
依頼や要望を伝えるときに使用する「申し付ける」は、「ご用命」と同じく目上の人に対して使える言葉。書き言葉より話し言葉として使用されることが多く「ご用命」よりも少しカジュアルな表現です。
そのため、社長や代表など特別な地位にある人には「ご用命」、取引先の担当者には「申し付ける」を使用するなど、相手に合わせて言葉を使い分けるのが望ましいでしょう。
例文
・何かご不明な点がございましたら、何なりと申し付けください。
・この件について、ご意見がございましたら、部長に申し付けてください。
「仰せ付ける」
「仰せ付ける」は目上の人が目下の人に命令・依頼をすること丁寧に表現した言葉です。書き言葉でよく使用される「ご用命」と違い、「仰せ付ける」は口頭で使われることがほとんどでしょう。
また、「仰せ付ける」は「ご命令」よりも目上の人から目下に対する命令のニュアンスが含まれているので、社長や代表者など特別な地位の人に対して使うのが適切です。社内でも使えるため、覚えておくと便利でしょう。
例文
・社長が君にこの企画の実行を仰せ付けになった。
・この任務は、会長から直接仰せ付けられたものです。
「ご要望」
「ご要望」は、「ご用命」に最も似た言葉として使われている言葉です。物事の実現を望んだり強く求めたりする意味があります。「ご用命」と同じように目上の人に対して使える言葉ですが、社内外問わず使うことができるのも大きなポイントです。
また「ご要望」は不明確な望みに対しても使える表現で、「具体的にはわからないけれど目上の人が何かを欲しているかもしれない」という状況下で使います。ビジネスでは頻繁に出てくる言葉なので「ご用命」と一緒に覚えておきましょう。
例文
・お客様のご要望に合わせて、最適なプランをご提案いたします。
・新商品について、何かご要望はございますか?
「ご利用」
「利用」に尊敬を表す「ご」をつけた「ご利用」には、「役立つように上手く使うこと」という意味があります。「ご用命」との違いは、「ご利用」のほうが日常的に会話で使われていることです。
また、「ご利用」はビジネスの場面でよく使用されていますが、「ご用命」よりも少しカジュアルなニュアンスの言葉。そのためカジュアルな場面では「ご利用」、かしこまった場面では「ご用命」のように使い分けるのがおすすめです。
例文
・このサービスはどなたでも無料でご利用いただけます。
・施設をご利用の際は、受付までお越しください。
「ご所望」
「ご所望」は、相手が何かを望んでいるときに使える言葉です。「ご要望」とよく間違えられやすい表現ですが、この2つはニュアンスが少し異なります。「ご要望」は目的が曖昧なときに、「ご所望」は目的が明らかなときに使いましょう。
また、相手だけでなく自分が欲したり望んだりするときも「〜を所望する」と使えるのも大きな特徴です。相手から具体的な注文や依頼があったときは、「ご所望」を使用しましょう。
例文
・何かご所望の品はございますでしょうか。
・お客様がご所望のワインは、あいにく本日切らしております。
「ご用命」の英語表現は?
次に、「ご用命」と言いたいときに適した英語表現を紹介します。海外でよく使われる表現なので、覚えておくとビジネスで役立つでしょう。
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order
orderは、「注文する」という意味です。通常は動詞として使われる表現ですが、名詞とすることで「ご用命」に近い意味合いで使えます。
例文
・We look forward to your order.(ご用命を心よりお待ちしています)
・We confirm your order. (ご用命を承りました)
request
requestの意味は、「依頼する」。orderと同じく「ご用命」と似た意味を持っており、海外の人とのやり取りでは頻繁に出てくる表現です。
例文
・We have duly received your request.(ご用命を賜りました)
・We appreciate your request. (ご用命いただき、誠にありがとうございます)
「ご用命」に関するよくある質問
「ご用命」という言葉はビジネスシーンでよく使われますが、その使い方に迷うことも多いのではないでしょうか。ここでは「ご用命」に関する、よくある質問に回答します。
Q. 「ご用命ください」は失礼ですか?
いいえ、失礼ではありません。むしろ、お客様に対して丁寧な敬意を示す言葉です。「用命」は「用件を申し付けること」「注文すること」の謙譲語にあたります。「ご用命ください」は、相手からの注文や依頼を丁寧に促す表現であり、ビジネスシーンで広く使われています。
Q. 「ご用命ください」と「ご依頼ください」の違いは何ですか?
「ご用命ください」は、主に商品やサービスの注文、発注を促す際に使われます。一方「ご依頼ください」は、より広い範囲で相手に何かをお願いする際に使われます。「ご用命」は「注文」のニュアンスが強く、「ご依頼」は「お願い」のニュアンスが強いと考えるといいでしょう。
Q. 「ご用命いただきありがとうございます」は正しい敬語?
はい、正しい敬語です。「ご用命」は「注文」の尊敬語であり、「いただく」は「もらう」の謙譲語です。相手からの注文に対する感謝の気持ちを、謙虚に表現する非常に丁寧な言葉です。ビジネスの場面で、お客様からの注文や引き合いに対して使われます。
Q. 「ご用命」と「ご要望」の違いは?
「ご用命」は、具体的な商品やサービスを注文する行為を指します。一方、「ご要望」は、相手の希望や要求そのものを指します。「ご用命」は発注という具体的な行動を指すのに対し、「ご要望」は希望や意見という内面的なものを指している点が大きな違いです。
取引や交渉で「ご用命」を使ってみよう!
- 「ご用命」は、目上の人や取引先からの注文や依頼を丁寧に促す際に使う言葉
- 受け身の用法が基本。部下や同僚には使わないことと、二重敬語にならないよう注意が必要
- 「ご用命」は具体的な注文行為を指し、「ご要望」は希望や意見を指す点に違いがある
ビジネスシーンで役立つ「ご用命」。特に相手が取引先の社長や代表など、特別な地位にある人に対しては積極的に使用したい言葉です。しかし、意味や使い方を正しく理解していないと、逆に失礼な表現になってしまうこともあります。ここで紹介した「ご用命」の意味と使い方をしっかりマスターして、取引や交渉でうまく使いこなしましょう!
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けた「明日」も楽しむライフスタイルをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれも美容も仕事も楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッションのみならずライフスタイルやビジネス・デジタルスキルにも関心が高いエディターたちを通して発信中。https://domani.shogakukan.co.jp/