「賜る」とは「もらう」「与える」をより丁寧にした言葉です。「もらう」の謙譲語としての「賜る」は、「いただく」よりさらに丁寧な表現である、と覚えるとよいでしょう。
Summary
- 「賜る」(たまわる)とは、「もらう」「与える」をより丁寧にした言葉
- ビジネスだけでなく、結婚式などの厳粛な場面でも使える丁寧な表現なので多用はしない
- シーンに応じて「拝受する」「いただく」「頂戴する」など適切な表現を選ぼう
Contents
【目次】
【賜る】の意味は?読み方もチェック!
「賜る」は、ビジネスだけでなく結婚式などの厳粛な場面でも使える丁寧な表現です。そのため、日常会話では〝なかなか使う機会のない言葉〟といえるのではないでしょうか。重要なシーンでよく使われる言葉ですから、間違った使い方をしないよう注意する必要があります。
使い慣れない言葉を使用するときは、まず基本情報を押さえておくのが大切です。
さっそく「賜る」の意味や読み方について、以下で詳しく説明していきます。よく混同される「承る」との違いも解説していますので、比較しながら覚えてみてください。

【賜る】の意味
たまわ・る〔たまはる〕【賜る〔賜わる〕/▽給わる】
読み方:たまわる
1 「もらう」の意の謙譲語。目上の人から物などをいただく。ちょうだいする。
2 「与える」の意の尊敬語。鎌倉時代以降の用法。目上の人が物などをくださる。
3 神の許可を得て、通行を許してもらう。
4 (補助動詞)動詞の連用形、また、それに「て」を添えた形に付いて用いる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「賜る」は目上の人から物をもらったときに使えますが、品物だけでなく、厚意に対しても同様の表現が可能です。「与える」の尊敬語としての「賜る」は「くださる」をさらに格式高く表現した言葉で、目上の人が下位の者に物を与えたときに使います。

【賜る】の音読みは?【賜わる】はNG?
次に読み方について説明します。「賜る」の訓読みは「たまわる」です。一方、音読みでは「し」と発音し「恵賜(けいし)」や「下賜(かし)」などの熟語に使われます。
「たまわる」を予測変換すると「賜る」以外に「賜わる」という表記が見られますが、意味や使い方に相違はありません。文化庁の「内閣告示・内閣訓令」では、「賜る」が一般的ではあるものの、「賜わる」という送り仮名も許容表現としています。
▶︎参考:文化庁公式サイト|送り仮名の付け方 単独の語 1 活用のある語 通則1
【賜る】と【承る】の使い分け方
「賜る」と混同されやすい言葉として「承る(うけたまわる)」という敬語があります。「承る」は主に「受ける」または「聞く」の謙譲語として使われる言葉です。助言や厚意を受けた際に使われる表現なので、「賜る」のように品物をもらった場合には活用できません。たとえば「記念品を承りました」という文章は、誤用ですので注意してください。
ただ「受け賜る」という表記にすれば、品物に対しても使用できるため覚えておくとよいでしょう。先ほどの文章を例にすると、「記念品を受け賜りました」となります。
【賜る】の使い方を例文でご紹介!
ここからは「賜る」の使い方を例文で確認していきましょう。「賜る」は文章内で、以下のように用いられるケースが多いです。
・賜りました。
・賜りまして、
・賜り、
・賜りますよう、
・賜りたく、
いずれも取引先に対するビジネスレターや、結婚式のスピーチなどで活用できますので参考にしてみてください。まずは謙譲語と尊敬語ごとに使い方を説明します。

謙譲語で【賜る】を使う場合
まずは「賜る」を謙譲語として使用する場合のポイントを紹介します。繰り返しの説明となりますが、謙譲語の「賜る」は「もらう」という意味で「いただく」をより丁寧にした言葉です。目上の人に対し自身をへりくだらせて表現する言葉なので、主語はもらった側になります。
たとえば「〇〇様より、素晴らしい贈答品を賜りました」「祝辞を賜りたいと思います」のような形です。「ご指導ご鞭撻」、「ご支援」、「ご高配」、「ご意見」などの熟語とも合わせて使用できます。
例文
・会長より記念品を賜りました。
・この度は、格別のご厚情を賜りまして、誠にありがとうございます。
・細やかなるご配慮を賜りありがとうございます。
・貴重なご意見を賜りました。
・○○様より、ご挨拶を賜りたいと存じます。
・今後もご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
・本日は、〇〇様より貴重なお話を賜りまして、大変光栄でございました。
・遠方よりお越しいただき、温かいお心遣いを賜りましてありがとうございます。
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尊敬語で【賜る】を使う場合
改めて説明しますが、尊敬語の「賜る」は「与える」という意味です。尊敬語は動作主の行動に対して敬意を表す表現なので、文章の主語は与える側となります。
たとえば「ご愛顧を賜り、ありがとうございます」といった感謝を表す場面に使える言葉です。ほかにも「ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします」といった何かをお願いするシーンでも活用できます。
例文
・末永くご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます。
・先日、部長より貴重なご指導を賜りまして、深く感謝しております。
・格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
・平素より、多大なるご支援を賜りましてありがとうございます。
・ご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
・今後の事業展開につきまして、ぜひ〇〇様のお話を賜りたく存じます。
・この度のプロジェクトでは、多大なるご協力を賜りありがとうございます。
【賜る】を使うときの注意点は?
「賜る」は丁寧な印象を与えてくれる言葉ですが、格式ばった表現のため使用シーンや頻度には注意が必要です。たとえば目上の人とはいえ、年上の方や上司に対してあまりに多用すると、逆に嫌味な印象を与えてしまいかねません。
例文からもわかるとおり、「賜る」は格別の感謝を表したり、恐れ多い気持ちを表現したりする言葉です。

乱用すると軽々しく聞こえてしまいますので、状況に応じて別の言葉に言い換えましょう。

【Domani編集部の体験談】ビジネスシーンでの適切な使い方
実際のビジネスシーンで「賜る」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。Domaniの編集者たちの「賜る」にまつわる成功・失敗談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】謙譲語を上手に使いこなすことでワンランク上の印象に
Domani編集部 T氏(29)
数年前、経営会議で新規事業のプレゼンをした後、役員から「この件について、もう少し詳しく話を聞かせてもらえないか」と声をかけていただきました。私はすぐに「はい、喜んで。ぜひ詳細についてお話を賜りたく存じます」とお答えしました。役員という立場の方からの依頼に対して、私が「話を聞かせていただく」という姿勢を「お話を賜る」と表現したことでu003cstrongu003e、単なる承諾以上の、その機会への感謝と積極的な姿勢を示すことができたと感じています。u003c/strongu003e
【episode2】敬語の種類を理解せずに使うのは失敗のもと
Domani編集部 T氏(39)
以前勤めていた会社で、後輩がお客様に「当社の製品をお賜りますか?」と尋ねているのを聞いて、すぐに訂正しました。「賜る」は自分が「もらう」謙譲語なので、お客様に「買っていただけますか?」と尋ねる際には「ご購入いただけますでしょうか」や「お買い求めいただけますか」といった表現が適切です。このようなケースではu003cstrongu003eお客様の行動を尊敬語で表す必要があり、自分がいただく立場であるかのような「賜る」を使うのは誤りu003c/strongu003eです。敬語の種類を理解せず使うと、かえって相手に違和感を与えてしまう典型例だと感じました。
【賜る】の類語は?言い換え表現をチェック
ここまで説明してきたとおり「賜る」はかなりかしこまった表現なので、普段は別の言葉に言い換えるよう意識しましょう。「賜る」に代わる言葉はいくつかありますが、なかでもよく使われる言葉をご紹介します。
実際に言い換えた例文についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。場面に合わせて言葉をしっかり使い分ければ、自ずと品格はにじみ出てくるはずです。




