「わかりかねる」の意味は、「物事の筋道が分からない」「理解できない」「はっきりしない」となります。
Summary
- 「わかりかねる」は、「物事の筋道がわからない」「理解できない」「はっきりしない」などの意味を表す
- 否定の意味なので多用せず、使うときには〝なぜわからないのか〟という具体的な状況説明を添えましょう
- 状況に合わせて「存じ上げない」「お答えを差し控えさせていただきます」などと言い換えてもOK
Contents
「わかりかねる」とは
まずはじめに、「わかりかねる」の言葉の意味から詳しく説明します。ビジネスシーンでよく使う言葉ですが、上司や顧客に対して使う言葉でもありますので、意味や使い方をきちんと理解しておきましょう。
「わかりかねる」の漢字と意味

「わかりかねる」は「わからない」と「かねる」にわけられます。「わからない」の漢字には、次の3つがあり、それぞれ微妙に意味が異なります。
「わからない」の漢字3つ
【意味】
「分からない」:物事の筋道や正しい情報が得られずわからないこと
「解らない」:意味が理解できないこと
「判らない」:物事の白黒がはっきりと区別できないこと
「わかりかねる」の漢字は「分かりかねる」で、上述した3つの意味を含みます。そのため「わかりかねる」は、「物事の筋道が分からない」「理解できない」「はっきりしない」といった意味を表すのです。

「かねる」には3つの意味がある
「わかりかねる」の「かねる」は、動詞といっしょに使う場合、次の3つの意味を持ちます。
【意味】
「〜できない」という不可能
「〜することは難しい」という困難
「決められない」という躊躇
「申しかねる」は「申し上げることは不可能」という意味であり、「答えかねる」は「答えることが困難」という意味。このように動詞に「かねる」がつくと、遠回しな否定の意を表します。「分かりかねる」の場合も、「わかる」を遠回しに否定しているのです。
丁寧語は「わかりかねます」
「わかりかねます」は「わかりかねる」の丁寧語にあたりますので、上司や目上の人、顧客に使ってもよい言葉です。
上司に何か問われてわからない場合には「わかりかねます」と答える人が多いでしょう。また、顧客に何か質問をされてわからないときも「申し訳ございません。わかりかねます」というのが一般的です。
「わかりません」よりやわらかい表現方法
「わかりかねます」は「わかりません」よりやわらかい表現方法です。何か聞かれて「わかりません」と単刀直入に返答すると、言われたほうは不愉快に感じることもあるでしょう。そのため「わかりかねます」とワンクッション置いた表現を使うのです。
「わかりかねる」を使うときのポイント
「わかりかねる」「わかりかねます」は丁寧に伝えたとしても、相手にとっては曖昧さが残るため、不愉快に感じる人がいるのは事実です。そのため、この言葉を使うときはいくつか注意すべき点があります。
ここでは「わかりかねる」「わかりかねます」を使うときのポイントをいくつかご紹介します。

否定の意味なので多用しない
「わかりかねる」はどのように丁寧に伝えても、「わかりません」という否定の意味のため多用してはいけません。ビジネスにおいて「わかりません」は、やる気のなさや責任回避している雰囲気を相手に感じさせてしまう言葉です。
どうしても回答できない場合、即座に「わかりかねます」とは言わないのがポイントです。「わかりかねますので、確認後にご連絡いたします」のように何らかの努力をしたり、その姿勢を見せたりすることが大切でしょう。

ビジネスでは、「わかりません」や「わかりかねる」は良い印象を与えない言葉であるという点を念頭に置いておきましょう。
状況説明をきちんとする気づかいが必要
「わかりかねます」を使うときは、状況説明をきちんとする気づかいが必要です。たとえば、上司に何か質問されて「わかりかねます」とだけ伝える人はいないでしょう。
特に、顧客や取引先から何か質問された際に「わかりかねます」とだけ伝えると、企業自体の信用さえ落としかねません。電話対応で推奨される表現ではありますが、あくまでも否定の意味を持つ言葉だということを理解して、必ず状況説明とともに使いましょう。

「何が」わからないのか、「どうして」わからないのか、具体的な説明をすることがビジネスパーソンとして正しい対応です。
状況によっては別の言い方を使う
状況によっては「わかりかねます」でなく、別の言い方をすることも必要でしょう。後ほどご紹介する言い換え表現の「お答えいたしかねます」や「確認ができかねます」など、状況にあわせて使いわけることが大切です。否定的な意味をソフトな表現で伝えることで、相手が抱く不快感を和らげることもできます。

あえて回答できないといった状況では、「お答えいたしかねます」と相手に察してもらうような言い方をするのも大人としての対応です。
二重否定にならないようにする
「わかりかねません」は、「わかりません」と「わかりかねます」が混ざった二重否定となり誤用です。しかし「〜かねません」という言葉自体はあります。
一例として「彼は選挙活動を頑張っていましたが、状況によっては落選しかねません」といったように使えるでしょう。

「わかりかねません」は、二重否定となるため誤用です。使い方に気を付けましょう。
「わかりかねる」を使った例文
「わかりかねる」より「わかりかねます」のほうがよく使われますので、こちらの例文をご紹介しましょう。
例文
・大変申し訳ございません。こちらではわかりかねますので、後ほど担当の部署からご連絡させていただきます。
・現状では原因がはっきりとはわかりかねますので、確認した後に改めてご説明させていただきます。
・検査結果は個人差が大きく、正確かどうかはわかりかねます。
・政府から確かな情報が発表されていないため、被害状況はわかりかねます。
「わかりかねる」の言い換え表現
「わかりかねる」は、丁寧語の「わかりかねます」として使うことの多い言葉ですが、場合によっては「わかりかねます」がそぐわないシチュエーションもあります。たとえば、顧客からクレームが入った場面です。このようなとき、正直に「わかりかねます」と言うと、相手は感情を昂らせてしまうおそれもあるため注意が必要です。
このような場合で、代わりに使える言い換え表現をいくつかご紹介します。

確認ができかねる
「確認ができかねる」や「確認ができかねます」は、「わかりかねます」よりも「時間をかけて確認しましたが、はっきりとはわかりませんでした」といったニュアンスが強めです。「わかりかねます」は、何らかの努力した結果というよりも、単に「わかりませんでした」といった意味に受け取れますが、「確認ができかねます」は「わかろう」とした努力が感じられるでしょう。
「確認ができかねます」を使った例文を紹介します。
例文
・お問い合わせの件につきましてお調べいたしましたが、確認ができかねます。
・原因を調査中ですが、現在のところ原因は確認できかねます。
答えかねる
「答えかねる」や「答えかねます」も「わかりかねます」の代わりに使える言葉です。「わかりかねます」は本当にわからない場合と、わかってはいるが答えられない状況などに用いられますが、「答えかねます」は後者のケースで使うことができます。 問い合わせの件について、暗に「回答することができません」と伝えるときに使用するのです。
ビジネスシーンでは、より丁寧な言い回しとして「お答えいたしかねます」が適しているでしょう。次の例文のように使います。
例文
・大変申し訳ございませんが、私どもではお答えいたしかねます。
・その件につきましては確認中でございますので、お答えいたしかねます。
存じ上げない
「存じ上げない」や「存じ上げません」も「わかりかねます」と同じような意味です。ただし、「存じ上げません」は断定した否定を相手に伝えてしまうため、「存じ上げていないのですが」の次に代替案を示すなどの配慮が必要です。
例文
・その件につきまして私は存じ上げませんが、担当の者が承知いたしております。
・詳しい内容は存じ上げていないのですが、情報を把握しましたらすぐにご連絡いたします。
返答いたしかねる
「返答いたしかねる」や「ご返答いたしかねます」も「わかりかねます」の代わりに使えます。「ご返答いたしかねます」は、相手からの質問や要望に対応できないときなど、わかってはいるが回答できない場合に使用可能な言葉です。
例文
・申し訳ありませんが○○に関しましては、私個人の判断では返答いたしかねます。
・在庫状況のお問い合わせにはご返答いたしかねます。ご了承ください。
判断しかねる
「判断しかねる」や「判断いたしかねます」は、「判断することが難しい」ことを表す言葉。自分の権限を超える決定や、情報が不足しており決定まで至らない際に使われるフレーズです。
例文
・ご要望につきましては、私個人では判断しかねます。
・ご提案の件ですが、現時点では判断しかねます。


