おすすめのエピソードは、仲良しのあのジェンヌさんのこと。花組の歴史も見逃せない!
マンガ家さんのような状況だったんですね。ちなみに、この本の中でイチオシのエピソードはどれでしょうか?
天真:ちなつ(鳳月 杏さん)の椅子取りゲームの話かなぁ。あれだけは「絶対に書く!」と決めていたんです。なんで書こうと思ったかというと、『金色の砂漠』という作品での(演出家の)上田久美子先生とちなつのやりとりから。上田先生は(ちなつさんが花組に来る前にいた)月組の作品を結構手がけられていて、ちなつとも信頼関係があったんですね。ちなつが王様の役の稽古をしている時に、「あなたのその無自覚にも自覚的にもある偉そうな感じが必要なんですよ」というふたりの間柄こそのダメ出しがあって、それを聞いているときに、ハッ!となって。
「そういえばちなつはすごく偉そうだったよね、いつからだっけな…あ! 運動会だ!」と。なんかね、ことあるごとにちなつの偉そうな感じが思い出されていたんですよね(笑)。自分の話というより、そんな周りの人の話を聞いてほしくて。
同席していた書籍の編集さん:ちなつさんの話は反響が大きかったですね。だいたい天真さんが連載の告知をした後にみなさん読んでくださるんですけど、ちなつさんの話は会社のアカウントでチラッと出しただけでも反響があって。天真さんが寝ている間の出来事なんですけど。
天真:あ…原稿を送ったらすぐ寝ちゃうから…。いつも「今さらですが告知します」と遅くなっていて(汗)。
あと、トップスターさんの素敵な姿は、客席から観ているお客さまにも届いていると思うんですけど、一緒に出ている私たち組子(花組のみんな)もどれだけ慕っていたかというのも知っていただけるといいなと思って書きました。私が花組に配属されてからのトップさんが、春野寿美礼さん、真飛 聖さん、蘭寿とむさん、明日海りおさん。入団したばかりの頃はトップ(春野)さんは神様みたいな存在で、最下級生が簡単に話しかけていい雰囲気ではなかったんですよね。いつもは春野さんのお姿を見て学ばせていただいたのですが、春野さんの退団公演で初めて自主稽古に参加されて、そこで初めてお話をうかがうことができたんです。
例えばダンスの燕尾の持ち方だったり、気をつけていらっしゃることだったりを実際に教えていただけることが本当にうれしかった。次にトップスターになられた真飛さんは、己に厳しくて男前な方でした。自分も学年が上がり、トップさんと舞台上で関わることができたり舞台裏でもお話できることが少しずつ増えてきて、「ゆうさん!」(真飛さんの愛称)と飛び込むことができたんだと思います。その後任の蘭寿さんの時代は、私も新人公演(入団7年目)を卒業して中堅の学年になりました。自覚が出てきて、蘭寿さんが花組のDNAとして私たちに残したいものはこんなことだ、という気づきも生まれたり。その後トップになられた明日海さん。自分とあまり学年差のない方が、花組を導いてどう進まれるのかを近くで見ることができました。花組の歴史を感じることができると思うので、そのあたりも読んでいただきたいです。