「芸人はみんなウソつきなんです」(昴生)
――ご兄弟であることとか、ご家族のエピソードが多いというのは、スタッフ側も安心感があるんじゃないでしょうか。最初に、大阪でミキさんが人気になったときは、「女の子ウケ」「BL漫才」って言われていたかと思うのですが。
亜生:そうですねー。
――でも実際に漫才を拝見していると、〝ほのぼのファミリー漫才〟という気がするんですよね。家族をテーマにしたネタが多いですし。
昴生:ほうほうほうほう。
――漫才をよく知らない人でもわかりやすいです。題材も『サザエさん』とか、昭和っぽいですよね。
昴生:でもそれは、目指しているところですよね。それを軸にやってる部分があるので、めちゃくちゃ意識してますね。昭和の漫才を、なんとか今風、令和風にできんかっていうふうにやってるんで、おっしゃっていただけたことはすごくうれしいですね。ターゲットも年齢層を決めていないんです。ちびっ子はターゲットにしてないですけど(笑)。でも今年は、さらにアップデートさせてるんです。普段絶対やらへんような、SNSの言葉とかをちょっと足したりして、時代に合わせてみようかと。
亜生:ちょっとずつほんまに、お客さんがファミリー層みたいな感じになってきてるんですよね。昔は女子高生が多かったですけど、徐々にその人たちも大人になって、OLさんになって観に来てたりとか。ご夫婦で来てたりとか。
――みんなに観てもらうことを意識して、漫才をつくっているということですか?
昴生:そうですね。全員に笑ってもらいたいなという気持ちですね。「ミキの漫才難しいな」というふうには、せんとこうかなと思ってます。シンプル、とまではいきませんけど、全員が理解できてっていう。
――いわゆる「しゃべくり漫才」が軸なんでしょうか。
昴生:そうですね。ワーッてふたりで会話して、それを聞いてお客さんが笑ってくれるのは、いちばん理想的というか。それが「素」なんで、やってても気持ちがいいんですよね。
亜生:コントと違って、営業に行っても、マイクさえあれば漫才できますし。
昴生:自分で言うのもなんですけど、しゃべくりがいちばん難しいですよ。普通にしゃべってて、それを爆笑に変えると言うのは。よっぽど自分の地を出さんと。
――いかに、人に聞かせるものにできるかということですよね。
亜生:「コント漫才」みたいに、だいたいみんなシチュエーションに入ったりしはるんで。
――「ちょっとコンビニの店員やってみて」みたいな……。
昴生:それはそれで面白いですけど、やっぱりしゃべくり漫才は奥が深いですね。
――しゃべくり漫才の理想形って、どんどん雑談に近くなるんでしょうか。台本があるのかないのかっていう。
昴生:ふたりで出て行ってマイクの前に立って、初めてその場でしゃべっているかのように見せるのが「しゃべくり漫才」なんで。予定調和みたいのが、いっさいいらん。だから、いかにネタに見せへんかっていう。
――以前劇場で、本ネタをする前に、昴生さんが同じ言い間違いをされていたのを拝見したことがありまして。1度目は「言い間違えた!」って笑っちゃったんですが、別の日に同じくだりを見たときに、「えっ、これ台本なんだ!」ってゾッとしたんですよ。
昴生・亜生:(爆笑)
亜生:やめてくださいよ! 恥ずかしい!!
――騙された、ヤバい……って。
亜生:ヤバいってなんですか!? でもあれも、いちばん最初は、ホンマに間違えたんです。全部そうですね。舞台上で起きたハプニングを、「あれウケたし、もう1回やろか」っていう(笑)。
昴生:僕らそうなんですよ。ハプニングをネタに入れ込むから、だからみなさんが、わからんようになってるんですよ。僕らも正直、わからんようになってるんです。
亜生:そう。
昴生:これは本ネタなんか? どっちなんや? みたいなときがあるんですよ。ふたりでやりながら。
――本当に芸人さんって、ウソつきなんだって思いました。
昴生:アッハッハッハ!(注:このあたり立ち上がっていらっしゃいます) でもその言い方はほんまに合ってますね。芸人はウソつき! でもそれがウソっぽく見えてきたらやめますけどね。
▲取材したのは母の日の直後だったが、「ミキ家は、何もしないしきたりなんです」と、昴生さん。