学生時代にフラれた男性との再会…
お話を伺ったのは…
丸山沙織さん(仮名・35歳)。東京都江戸川区出身・東京都内の中堅私立大学卒業、不動産関連会社勤務(年収500万円)。3歳年上の夫(食品関連メーカー勤務・年収800万円)と結婚6年。さいたま市内の分譲マンションに住む。子どもは5歳男子。身長165cm、モデル風で“いい女”と言われることが多い。
努力はせずとも、幸せになる末っ子体質
沙織さんは、自他ともに認める「人生の勝者」だ。とはいえ、輝かしい成績を残したのではない。過度の努力をせずに誰もがうらやむ「ど真ん中」を選択したことだ。
「私は努力が嫌いなんです。すごく頑張っても報われないのなら、“普通”を極めたい。幼いころから、普通が一番だと思っていました。というのも、7歳上の兄と5歳上の姉がいるので、彼らの失敗から学んでいることが多かったかな」
兄はバレーボール部でインターハイに出場経験があり、2浪して六大学に進学したが、今は派遣社員をしている。姉は幼いころからピアノの猛練習を続け、音大に進学したが、今は主婦。
「兄と姉の姿を見ていて、コスパが悪い人生だと思う。高望みするから自分も周囲も負荷がかかり、燃え尽きたり劣等感を抱いたり、世間を呪ったりする。だから私は“そこそこ”を目指した。学校の勉強を1日2時間程度行い、地味にコツコツと続けた。公立の中学から自分の学力より2ランク下げた高校に進学。家から通いやすかったからです。3年間、無遅刻無欠席を続け、当然、オール5だったので、指定校推薦で大学に進学」
大学でも勉強を真面目にコツコツ続け、教授の太鼓判をもらって、不動産関連会社に就職。「頑張ったことは、宅地建物取引士の資格の勉強くらいかな。26歳で夫と出会い、29歳で結婚。その1年後に息子が生まれた」
沙織さんの人生に後悔はほとんどなかったのだ。
ずっとあなたが好きだった
沙織さんの人生の後悔は、大学1年のときの初恋の相手にストーカー的なふるまいをしてしまい、「キモい、無理」とフラれたこと。
「彼は超名門大学の学生で同い年でした。最初の彼だから夢中になりましたからね。“推し”に近い崇め方だったと思う。男女関係になってからさらに燃え上がり、四六時中彼のことを思っていました。1年間交際したのですが、本当に好きで一緒にいると楽しくて、触れられるとありえないくらい気持ちよくて。あんなに気持ちがよかったことは、その後交際した3人の男性(夫含む)に全然なかった。フラれてから1か月くらい抜け殻のようになっていたのですが、このままではダメだと立て直して、彼を忘れることにしたのです」
彼の連絡先をブロックし、彼が住む駅には行かなかった。そのうちに彼を忘れた。
「でも、ほかの男性と関係を持つと、彼との気持ちいい経験を思い出す。彼はモテていましたから、ホントに私はセカンドだったんだと今では思います。どこに行っても、無意識に彼の姿を探してしまう。山崎まさよしさんの曲みたいですよ。そんな場所にいないとわかっていても、いつでも彼を探している」
しかし、別れてから16年目、コロナ禍中の東京で再会した。
「あのとき、美術館や劇場が閉鎖になり、美しいものに飢えていた。仕事終わりに銀座を歩いていたら、あるギャラリーでグループ展をやっていた。普段は見ないのに立ち寄ったところ、彼がいたんです。相変わらず背が高く、若々しかった」
彼は大学卒業後、誰もが知るインフラ関連の企業に就職。現在はバツイチで一人暮らしをしており、子供がいない。窮屈な会社の文化と仕事内容の憂さ晴らしをするために、作品を作り始めたという。
「彼は何事もなかったように再会を驚き、喜んでくれた。絵はまあ大したことない感じでしたが(笑)、テキトーにホメて帰ろうとしたところ、手を握られた。周囲に誰もいないのを見ると、“相変わらず、そそる体をしているね”と耳元でささやいて、“あの触り方”で私の体を触り、“ずっと沙織が好きだったんだよ”と言った」
彼の家に行くまでの7日間は、人生で一番充実していた
沙織さんは結婚6年間、不倫をしたこともなければ、誘われたこともない。
「でも彼に言われたら、性感帯と言われる部分が、ビリビリビリっとなった。立ってられなくなるくらい、気持ちよくなったんです。その日は息子の習い事があったので帰りましたが、別の日に彼の家に行ったのです」
彼の家に行くまでの7日間は、人生で一番充実していたという。
「筋トレを必死でやって体を絞り、ファッションを考え、スキンケアも超念入りにしました。出産後初めてネイルサロンに行き、ワンピースも下着も買った。何をしても気持ちよくて、そういうときは男性を誘っているんでしょう。淡白な夫から初めて求められました」
出産後初めて、夫婦の関係を持つ。
「そのときに、あ、これで彼の子どもを妊娠してもバレないって思いました。その2日後、彼の家に行って、そういうことをしたんですけれど、全然よくないんです。家も古いマンションで、雑然としていた。ワインも1本数千円のモノを出されて、がっくりきました。思い出は美化されているんだなって。2度目はないなと思いました」
今、沙織さんは彼からストーカー的なLINEが送られてくるのがうっとうしい。
「食事の誘いがくるので、適当に断っていたら、“お~い”ってLINEが来る。あれ超迷惑ですし、一気に彼が嫌いになりました。今はしなければよかったと、後悔しています」
運命だと確信した再会が、苦い現実になってしまったのはなぜか…。美しい思い出のままにしておけばよかったのだろうかと自問自答が止まらないという。
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。