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2018.04.20

トランプ減税は世界のお金の流れを変える【三浦瑠麗の「優しさで読み解く国際政治」】

国際政治学者・三浦瑠麗さんに教えていただく世界の「今」。今回はトランプ政権の「次」について伺いました。

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アメリカ税制改革の成功が導く、トランプ政権の「次」

昨年12月に米国の上下両院の話し合いが妥結し、税制改革法案が採択されました。2017年の米国政治を振り返るうえで、これは最大の山場であり、その通過はトランプ政権にとっての一大勝利でした。 トランプ政権は過激な言動で物議を醸してきました。しかし、共和党と民主党が保守とリベラルへ二極分化して党派化してしまったアメリカでは、左右が和解することはありえません。政権がある限り激しいののしりあいの応酬は続くのです。

前国家安全保障担当大統領補佐官のフリン氏がロシアとの接触に関し虚偽を述べるなどの罪を認めたことで、政権が傷を負っていることは間違いありません。その疑惑の最中で行われた地方選挙において、ニュージャージー州や南部を代表するバージニア州で民主党候補が勝利を収めます。翌年の中間選挙を控え、共和党内には衝撃が走りました。危機感を深めた共和党が、今回の減税ではまとまることができたというのが法案成立の背景にあります。 税制改革が通ったことで、トランプ政権には中間選挙、および2020年の大統領選挙における再選の芽が出てきたと見てよいでしょう。 法案の最大のポイントは、連邦の法人税率を35%から21%に引き下げたことです。これは、世界のお金の流れを大きく変えることになるでしょう。シンガポールや香港など低税率の国や地域の法人税は10%台の後半ですから、これらに迫る水準。これまで法人税が高止まりしていたはずの米国が、G7の中でも一気に低税率の国となるのです。

大きな減税が米国にもたらすもの

そもそも、米国は世界最大の豊かな市場と、才能豊かな世界一の労働市場を抱える経済です。米国の税率が低くなるのであれば、米国企業や米国で財やサービスを提供したい他国の企業は直接米国に法人を設立し、米国への投資を増やしていくことになるはず。わざわざ、海外の低税率国にコストをかけて立地する必要性が乏しくなるのです。当然、低税率国や他の先進国でも法人税下げ競争が起きるでしょう。グローバル経済は、米国の動きを受けて、大きな変革期に入っていくはずです。 ただ、大きく減税するわけですから、支出の切り下げや他の分野での増税を伴うこととなります。

そもそも、トランプ政権が議会に提出した予算案では国防総省を除くほとんどの省庁で、予算を削減してきました。民主党の議員は、中産階級の減税は時限的であり、大企業と富裕層が受ける恩恵に比して割を食ってしまうと主張しています。 また、米国ならではの現象も予想されます。米国では、州にいわゆる課税自治権があり、税率が州によって大きく異なります。減税法案に州税にかかる控除の削減が含まれることから、税率が高い州に居住する住民ほど結果的に増税となる現象が起きているのです。米国で州の税率が高いのはニューヨーク州やカリフォルニア州などの典型的な民主党支持州です。意図された結果であるかどうかはともかく、同法案は強烈に党派的な色合いがついているわけです。

80年代にレーガン政権が大型減税を打ち出したとき、軍事費の歳出増もあって、米国経済は双子の赤字に苦しむこととなりました。レーガン減税の効果については、いまだに解釈論争が続いています。とはいえ、財政赤字は生みだしたけれども、冷戦の終結と相まって90年代の情報革命のきっかけを作り、米国経済の再興を担ったという評価は定着しつつあると言っていいでしょう。トランプ減税は、少なくとも、規模においてはそれに勝るとも劣らない、経済史に残る画期です。米国民は、今年の中間選挙において審判を下すこととなりますが、世界は今後何年もかけて、その影響の広がりを感じることとなるはずです。

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国際政治学者

三浦瑠麗

1980年生まれ。国際政治学者。東京大学農学部卒業。東大公共政策大学院修了。東大大学院法学政治学研究科修了。法学博士。現在は、東京大学政策ビジョン研究センター講師、青山学院大学兼任講師を務める傍ら、メディア出演多数。気鋭の論客として注目される。

Domani3月号 新Domaniジャーナル「優しさで読み解く国際政治」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子


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