愛を巡るドラマで人々が変わり始めていく
2019年の公演に引き続き、今回もKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔さんが主役を演じるミュージカル『ドン・ジュアン』。『Web Domani』ではヒロイン・マリア役の真彩希帆さんと潤色・演出の生田大和さんに作品づくりの裏側のお話をうかがいました。その作品が、絶賛東京で公演中! どんな仕上がりになっているのでしょうか? ワクワクしながら会場へ足を運びました。
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▶︎【真彩希帆×生田大和スペシャル対談 vol.1】『ドン・ジュアン』のテーマは「愛が呪い」
まずはセットに目を奪われました。スペイン・アンダルシア地方の熱をはらんだ荒野を思わせるカーブのついた傾斜。これは前回公演から変わっていないらしく、生田さんいわく「初演からのわれわれのセビリア」。結構急なR(カーブ)で、この上でお芝居をやるとしたらかなり大変だろうな…と思っていたのですが、実際にこのセットの上で戦いや踊りが繰り広げられていて役者のみなさんの腹筋と体幹てすごいなぁと! セットつながりで、ドン・ルイ・テノリオの屋敷のシーンの奥行きのあるセットにもびっくり。テーブルはワゴン、クロスは実物でそこに食器や燭台の映像のプロジェクションマッピングを投影しているのだそう。
真彩さんと生田さんの対談の答え合わせというか、話題に出てきたことを気にかけながら観ていました。まず生田さんが言われていた「ポップスの構成をした楽曲が多い」ということ。確かに、「曲」だけをクローズアップしてもその中で流れがありそうです。そしてカッコいい。特に重低音の効いたロックな曲は、ドン・ジュアンの闇の魅力と色気を際立ててくれる感じ。
ドン・ジュアン役の藤ヶ谷太輔さんは、さすがの存在感
Kis-My-Ft2では歌の担当が多い藤ヶ谷太輔さん、今回も安定した歌声を聴かせてくれました。登場からしばらく無言の演技が続き、それからの歌声の熱量がものすごい! そして何よりもハッとしたのが、色気の違い。登場してしばらくは孤独でヒリヒリとした、だからこそ周りの女性が惹きつけられるような色気を醸し出していたのに、マリアと出会ってからは角がとれてピュアな色気に。それを自在に操る藤ヶ谷さんに脱帽するとともに、「再演なので、全てにおいて前回よりパワーアップした作品にしたい」と語っていた意気込みを強く感じました。
マリアの気持ちが、歌から伝わってくる
マリア役の真彩希帆さん。自分の考えを持っているしっかり者のアーティスト。芯が強くて意外と頑固?、なのかと思いきや、ドン・ジュアンと出会ってからのあふれ出る包容力や母性にマリアの幸せが伝わってきて心がポカポカに。その幸せの分、ラファエルへの後ろめたさが心に影を差していているのも感じます。けれど、ドン・ジュアンとマリアが結ばれるシーンは本当に温かくて優しくて、マリアが心から彼を愛しているのがわかるし、ドン・ジュアンが愛の“尊さ”に初めて触れたことも感じられて…個人的にとっても好きな場面でした。
歌も本当に素晴らしかったです。ドン・ジュアンと出会って心を動かされる前と後のマリアの気持ちが、歌から伝わってきます。タカラヅカ時代とは違い地声での歌。だからこそより生のマリアの感情が生きるというか(もちろんファルセットのきいちゃんソングも魅力的なのですが)。取材で生田さんが話していた「感情をいったん楽器に預ける」という部分を観客として受け止めるのは難しかったですが、きっと真彩さんはそのハードルも軽々越えていて、私たちの耳になめらかで聴き応えのある歌を届けてくれています。
実はいちばんやりきれない思いをしているのはラファエルかも…!?
マリアの婚約者のラファエルには、舞台での活躍が目覚ましい平間壮一さん。マリアを愛して婚約発表をし、なのに戦地に赴かねばならず、壮絶な戦火をくぐり抜けて帰国したらマリアは心変わりをしている。ラファエルのやりきれない思いに、自分がもしそんな経験をしたらどうなるだろう…と気持ちを重ねてしまいます。ですがそもそも…なんとなくマリアとは波長が合わないような気がしなくもなく…(個人の感想です)。頑張れ、ラファエル!