「氷柱(つらら、ひょうちゅう)」とは?
「氷柱」は読み方によって意味が異なる言葉です。「つらら」と読むときは、水のしずくが凍って、棒状に垂れ下がったものを指します。寒い地域では、冬になるとよく見られるでしょう。
なお、一般的には「つらら」と読みますが、同じく水のしずくが凍って棒状になったものを「ひょうちゅう」と呼ぶこともあります。いずれにしても冬の風物詩で、俳句などに詠まれることも少なくありません。
【氷柱】つらら
1.水のしずくが凍って、軒下などに棒状に垂れ下がったもの。垂氷(たるひ)。冬「みちのくの町はいぶせき―かな/青邨」
2.こおり。「書き流すあとは―にとぢてけり何を忘れぬ形見とか見む」〈更級〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「垂氷(たるひ)」と表現することもある
「氷柱(つらら)」のことを「垂氷(たるひ)」と呼ぶこともあります。つららは水が垂れて氷となったものなので、言葉をイメージしやすいでしょう。「垂氷」も冬を示す言葉として、俳句などの歌に詠まれることが多い言葉です。
水のしずくが垂れる、凍るを繰り返すと、「氷柱」はより長く太く成長していきます。大きくなった「氷柱」は落ちると危険ですので、下を歩かないようにしましょう。
「氷柱(ひょうちゅう、こおりばしら)」とは?
「氷柱」と書いて「ひょうちゅう」と読むときも、「つらら」を指すことが一般的です。しかし、「こおりばしら」を指すこともあります。
「こおりばしら」とは、つららのように天然でできたものではなく、人工的に角柱形に作る氷の柱です。エアコンなどがない時代には、室内を涼しくするために氷柱を作って立てることもありました。つまり「こおりばしら」と読むときは、夏の風物詩といえます。
【氷柱】ひょうちゅう
1.つらら。
2.夏、室内を涼しくするために立てる角柱形の氷。こおりばしら。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「氷柱花」の作り方
水の中に花びらなどを入れて凍らせたものを、「氷柱花(ひょうちゅうか)」と呼びます。見た目に美しいだけでなく、氷が周囲の空気を冷やして涼しさを感じられるアイテムです。
ミントなどのハーブを入れれば、香りも楽しむことができるでしょう。アイスティーに入れて、涼しさと香りの両方を楽しむこともできます。
「氷柱花」の作り方は簡単です。まず製氷皿に半分ほどの高さまで水を注ぎ、花やハーブを入れて凍らせます。しっかりと凍っているのを確認してから、残りの半分の水を注ぎ、再び凍らせましょう。
凍らせるときに製氷皿をエアパッキンなどで包むと、温度変化が緩やかになり、気泡の少ない透明な氷が作りやすくなります。
秩父三大氷柱とは?
日本にはいくつか「氷柱(つらら、ひょうちゅう)」で知られた場所がありますが、なかでも秩父三大氷柱は日本を代表する「氷柱」の名所として知られています。
埼玉県の西部にある秩父は、山に囲まれた盆地のため、一日の寒暖差が大きい地域です。雪が溶けて水のしずくになる、固まって氷ができるを何度も繰り返すので、「氷柱」ができやすいという特徴があります。
秩父三大氷柱とは、三十槌の氷柱(みそつちのつらら)と芦ヶ久保の氷柱(あしがくぼのひょうちゅう)、尾ノ内氷柱(おのうちひょうちゅう)の3つの総称のことです。三十槌の氷柱は天然の「氷柱」ですが、芦ヶ久保の氷柱と尾ノ内氷柱は秩父ならではの気候と地形を活かして人工的に作られています。
三十槌の氷柱(みそつちのつらら)
三十槌の氷柱は、岩肌から染み出した湧き水が凍って作られる天然の「氷柱」です。高さは約8m、幅は約30mと広く、透明度が高いことも見どころのひとつといえるでしょう。
秩父三大氷柱のなかでも唯一の「天然氷柱」のため、毎年形が変わるのも特徴です。特に寒さが厳しくなる1月の中頃から2月の中頃にかけて、美しい「氷柱」の壁が見られます。
芦ヶ久保の氷柱(あしがくぼのひょうちゅう)
芦ヶ久保の氷柱は、秩父三大氷柱のなかでもアクセスしやすいスポットです。三十槌の氷柱と尾ノ内氷柱は車がないと行きづらいロケーションですが、芦ヶ久保の氷柱は西部秩父線の芦ヶ久保駅から歩いて10分ほどと電車でも簡単にアクセスできます。
高さは約8mと三十槌の氷柱と同程度ですが、幅は200mもあり、山全体が氷柱で覆われているようなインパクトです。見頃の時期は三十槌の氷柱より長く、1月上旬から2月の終わり頃まで楽しめます。
尾ノ内氷柱(おのうちひょうちゅう)
尾ノ内氷柱は芦ヶ久保の氷柱よりもさらに規模が大きく、高さは約60m、周囲は約250mと雄大です。氷柱のそばに吊り橋があり、間近に見られるのも特徴といえます。近くには滝も流れているので、水が作る静と動を同時に味わえるでしょう。
尾ノ内氷柱は、「尾ノ内百景氷柱」とも呼ばれます。吊り橋や滝などがあり、見る場所によって姿が変わるため、少し周辺を歩いてさまざまな角度から氷柱を眺めてみましょう。
日によってはライトアップされることもあります。昼間とはまた違った趣があり、さらに幽玄な美しい姿を楽しめるでしょう。
番外編!中津川の氷壁
同じ秩父には、中津川の中ほどに岩肌から染み出る水が凍ってできる「中津川の氷壁」があります。高さは50m、氷のようにも滝のようにも見えるその姿は、まるで絵のような美しさです。
秩父三大氷柱と同様、中津川の氷壁も1月から2月の寒さが厳しくなる時期が見頃となります。特に三十槌の氷柱と中津川の氷壁は自然にできるもののため、年によっては見頃が変わることがあるかもしれません。出かけるときにはホームページなどで最新の情報を入手しておきましょう。
なお、中津川の氷壁も、電車ではアクセスしにくい場所にあります。近くに駐車場がなく、また見上げる高さなので運転中に見るのは危険です。できれば路線バスなどの公共交通機関を利用するようにしましょう。
「氷柱」で季節感を味わおう
「氷柱」は「つらら」や「ひょうちゅう」と呼べば冬の風物詩ですが、「こおりばしら」と呼べば夏の風物詩にもなります。「氷柱花」は2段階で冷やすだけで簡単に作れるので、涼をとるためにも、そして、おもてなしのためにもぜひ挑戦してみてください。ハーブなどの香りの良いものを氷の中に入れれば、見た目だけでなく香りも楽しめます。
冬は「氷柱」を見て楽しむことができる季節です。ただし、「氷柱」は寒暖差が激しい地域でよく見られるため、夜間に出かけるときはしっかりと着込んで寒さ対策をしておきましょう。また「氷柱」は先がとがっているため、万が一落ちると刺さる恐れがあります。「氷柱」ができる地域では、軒下を歩かないように注意しましょう。
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