「海千山千」のよくある誤解と正しい意味
海千山千は「うみせんやません」と読みます。難易度としては高くないため、読めた方も多いのではないでしょうか?
「海千山千」という言葉の意味は以下のとおりです。
【海千山千】うみせんやません
《海に千年、山に千年すんだ蛇(じゃ)は竜(りゅう)になるという言い伝えから》世間の経験を多く積み、物事の裏表を知り抜いていて悪賢いこと。また、そのような人。したたか者。海に千年山に千年。海千河千。「―の商売上手」
知恵があり、したたかに振舞う人を指す「海千山千」ですが、時に相応しくないシーンで使われてしまうことがあります。「海千山千」に含まれるニュアンスを正しく理解して、使えるようにしましょう。
「海千山千」の持つニュアンスに注意
「海千山千」を相手のことを褒める時に使ってしまっている方は、要注意です!実は「海千山千」は、単に経験豊富で知見のある人を意味するのではなく、「深い知識を使ってずる賢く行動する」というネガティブなニュアンスを含んでいます。
間違って相手を褒めるタイミングで使ってしまうと、相手に失礼になってしまうので気を付けましょうね。
「海千山千」の語源と類義語・対義語
海千山千の語源と、類義語・対義語をまとめました。次の章で詳しくご紹介します。
【海千山千の語源】
「海に千年、山に千年すんだ蛇(じゃ)は竜(りゅう)になる」
【海千山千の類義語】
「海千河千」「百戦錬磨」「千軍万馬」「曲者」「老獪」
【海千山千の対義語】
「箱入り娘」「芋の煮えたも御存じない」「世間知らず」「苦労知らず」
語源は中国の故事成語
「海千山千」という言葉は、中国の故事成語「海に千年、山に千年住んだ蛇は竜になる」が語源になっているとされます。元々この故事成語は、蛇が竜になるほど知識を積んで立派になるという意味で使われていました。
ポジティブな意味の表現としても用いられましたが、現在における海千山千は「ずる賢い」「したたか」というニュアンスを含んでいます。日本では海千山千という言葉が、昭和時代から広く使われています。
類義語は「海千河千」「百戦錬磨」「千軍万馬」
「海千山千」の言い換えとして知られているのが「海千河千(うみせんかわせん)」「海に千年、河に千年」で、意味や由来は「海千山千」と同様です。
「百戦錬磨(ひゃくせんれんま)」や「千軍万馬(せんぐんばんば)」も海千山千の類義語として挙げられます。しかし、海千山千とは違い、百戦錬磨や千軍万馬には、ネガティブなニュアンスが含まれません。
百戦錬磨や千軍万馬は、経験豊富で素晴らしい処理能力を発揮する人を称賛するシーンでも利用できます。
【百戦錬磨】ひゃくせんれんま
たびたびの戦いで鍛えられていること。また、経験が豊かで処理能力にすぐれていること。「―のつわもの」
【千軍万馬】せんぐんばんば
1. 多くの軍兵と軍馬。
2. 戦闘の経験が豊富であること。転じて、社会経験などを多くつんでいること。「―の猛者(もさ)」
そのほかにも、「海千山千」の類似表現として、ひと癖あってしたたかな人物を意味する「曲者(くせもの)」と、経験を積み悪賢いことを意味する「老獪(ろうかい)」などがあります。
対義語は「箱入り娘」「芋の煮えたも御存じない」
海千山千とは相対する表現として使われることわざが「芋の煮えたも御存じない」です。「芋の煮えたも御存じない」は、芋が煮えたかどうかの区別もつけられない、世間知らずさを非難し、あざける時に使われます。
ほかにも、経験豊富でしたたかな人を意味する「海千山千」の反対語として挙げられる言葉は「箱入り娘」「世間知らず」「苦労知らず」があります。これらの言葉は総じて、経験に乏しく、世間に疎いことを表します。
「海千山千」の正しい使い方のポイントと例文
海千山千がネガティブなニュアンスを含むため、使い方に気を付けなければならないとご紹介しました。では実際にはどんな場面で海千山千を使えばよいのでしょうか?
海千山千を使いこなすポイントは次の2つです。
・誉め言葉としては使わない
・使う相手との関係性に注目する
海千山千を使いこなすポイントと、実際の会話で使う際のヒントになる例文をご紹介します。マイナスな意味を持つ言葉だからこそ、使い方をしっかり把握することが大切です。
1.誉め言葉としては使えない
海千山千の使い方として、まず知っておきたいのは、海千山千を誉め言葉として使ってはいけないという点です。したたかな人、ずる賢い人というニュアンスを持つため、誰かを褒める際には適切な言葉ではありません。
相手を称賛するどころか、「海千山千」を使うと、豊富な知識を利用して、ずる賢く振舞っていると非難する気持ちがあることを意味します。
2.相手との関係性に注意
まれにですが、親しい間柄では海千山千は、単に知識が豊富な人に対して賞賛する意味で使われるようです。しかし、かなり親しい間柄以外では、この誤った用法は通用しません。
「海千山千」が誉め言葉として間違って使われてしまう理由の1つとして、気心知れた仲間との会話での用法があるかもしれませんね。この機会に正しい用法をマスターして、相手に失礼のない対応を心掛けましょう。
海千山千の例文
それでは、「海千山千」を使った例文をご紹介します。使い方に気を付ける必要がある「海千山千」ですが、自然と使いこなせれば表現力がグッとアップしますよ。
・あの店には海千山千の店主がいるから、買いすぎないようにしないとな。
・相手は海千山千だから、今回の商談も簡単ではない。
・海千山千のライバルたちを抑えてコンペで優勝した。
・あの人は穏やかそうに見えて海千山千な一面を持っている。
特にビジネスシーンでは、やり手の相手を形容する際に、用いられることが多いようです。
「海千山千」は使い時を心得ることが重要
「海千山千」はしたたかでずる賢い人というネガティブな意味を持っているため、誰かを褒めるときには使えません。ずる賢さを暗に非難する言葉であるため、使用する際はその対象者との関係性に注意しましょう。
日常でよく耳にする言葉であっても、使い方が間違っているケースがあります。相応しいシーンで使いこなせないと、相手に不快な思いをさせてしまう可能性があるため、言葉を正しく知っていることが大切です。
「海千山千」は使用に注意が必要ですが、正しい使い方をマスターすれば、ビジネスシーンでも活用する言葉となるでしょう。
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(引用全て〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
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