最近、自己肯定感という言葉を聞き、もしかしたら子どもの自己肯定感を知らずのうちに下げてしまっているのではないかと不安になってきました。うちの子は小5の女子ですが、何をやるにも自信がなく躊躇してしまいます。どのようなことに気をつければいいか教えてください。
仮名:川上さん
勉強ができない子どもは自己肯定感が低い?
自己肯定感という言葉を近年、本当によく聞くようになりました。
筆者は1989年に20歳で起業し学習塾を始めましたが、そのとき、勉強ができない子どもたちにある共通点を感じていました。
それがまさに今で言う「自己肯定感が低い」ということです。
子どもたちは単に自信がないというよりも、現在の自分自身を肯定的できないという状況に見えました。
あるとき、ある子どもがつぶやいた言葉にハッとしました。
それは「どうせ自分なんて……」という言葉です。
観察してみると、自己肯定感が低い子は共通して、この類の言葉を使っていたのです。その後、子どもたちの自己肯定感は勉強で潰されているのではないかという仮説が筆者の中に出てきました。それならば成績さえ上げてしまえば自己肯定感は変わるはずという認識も同時に持ったのです。
そして事実、成績が上がった子どもたちから発せられる言葉の種類が変わり始めました。自己を否定する言葉から肯定する言葉に。
中には成績が上がっているにもかかわらず、子どもの自己肯定感がなかなか上がらないケースも一部見られましたが、その原因は保護者面談でわかりました。
塾で子どもたちの自己肯定感を上げても、家庭で自己肯定感を下げるような言葉をかけられていたのです。
子どもの自己肯定感を下げてしまう5つの言葉
「あなたじゃ無理」など、明らかに子どもを否定する言葉は、さすがに多くの親御さんは使いません。しかし、無意識のうちにふと自己肯定感を下げる言葉を子どもにかけてしまうことがあります。
そこで子どもの自己肯定感を引き上げることよりも、まずは下げないということに焦点をあててみてください。
自己肯定感を下げる5つのNGワード
そのために、次に掲げる「子どもの自己肯定感を引き下げる5つのNGワード」について確認してみてください。
(1)90点取ってきた子に、「10点何を間違えた?」
確かに90点も取れていると、取れていない10点が気になることはあります。しかし、それを誰よりわかって気にしているのは子ども自身です。それをあえて、子どもに再認識させる意味はあるでしょうか。
90点を肯定することで子どもの自己肯定感を満たすはずが、10点の欠けている部分に重きを置いた発言で、子どもの自己肯定感を下げてしまうのです。
似たような発言に、「90点取れてよかったね。あと10点惜しかった」「もう少し頑張れば100点だったね」がありますが、表現はやさしいものの、実態としては、現在を肯定していないため、自己肯定感を下げることに変わりはありません。
例えば、料理をしているママにパパが、「今日の料理、ほとんど美味しかったけど、味噌汁が残念。これが美味しかったら満点だ」と言われたらどうでしょう。嬉しいでしょうか。おそらく心が凹むか怒りの感情が出てくることでしょう。
(2)こんなこともできないの?
この言葉だけを聞くと、とてもきついので、「え?私そんなきつい言葉子どもに言わないけど」と思う人もいるかもしれませんね。しかし、一般的に子どもは大人ができることはできないことが少なくありません。すると親御さんは、イライラしているときに、子どもができないことがあると、「こんなこともできないの?」と無意識に言葉にしてしまうことがあります。
また、一番多くこの言葉が出てくる場面は、他者と比較をするときです。同年齢の子どもが何かできている話を見聞きすると、つい悔しくなり「あなたもできるはずでしょ!」「なんでできないの!」とこぼしたりしていないでしょうか。
自己肯定感を下げてしまう言葉はほかにも…
このような言葉を使われ続けると、自分は“誰でもできることができない人間“だと思ってしまう可能性があるため、避けたい言葉です。
(3)また同じミスをしたの?
子どもが学校の算数のテストで何度も計算問題でケアレスミスをしてきたとします。そのとき、子どもに何と言いますか?
「また計算ミスしているじゃない」
過去の保護者面談で、この言葉を使う人が予想以上に多いことが確認できました。では、この言葉を言われ続けた子どもはどう感じるでしょうか。
「何度も間違える自分はダメな人間だと思う」か「自分の評価を下げる勉強そのものから離れたい」のいずれかの気持ちを持つのではないでしょうか。
前者は自己肯定感を引き下げ、後者は自己肯定感を下げたくないため勉強そのものを放棄するという結果になります。
(4)何回言ったらわかるの?
何回も言わないとわからないということは、教え方が適切ではないか、まだ十分に理解できる年齢になっていないことがほとんどです。ですから、何度言ってもわからないときは、「何度も教える」が回答になります。
しかし、この教えるという言葉が問題で、教えるのではなく、怒っているだけの人が少なくないのです。
正しい意図が伝わらない
例えば、親が「だからこういうときは〇〇するの!」と言ったとします。親は教えているつもりでしょうが、これは客観的に見ると「怒っている」と言います。これでは内容は子どもに伝わらず、親の感情だけが子どもに残ります。つまり、子ども側からすれば、親に怒られたことだけが印象に残り、改善ができず、何回も言われなければならない事態になるということです。
この現象は先生が生徒を怒っている場面でも見られます。子どもの頃、先生が授業中に怒る場面に遭遇したことがあると思いますが、そのときの内容を覚えていますか。おそらく覚えているのは、先生が怒っていたという感情面だけでしょう。
「何回言ったらわかるの!」という言葉が意味するところは、「何回も言わないとわからないあなたはまったくダメね!どうしようもないね!」であり、これで自己肯定感が下がらないほうが珍しいといえます。
よく言ってしまいがちなあの言葉も
(5)早くして!
この言葉は意外と思うかもしれません。毎日のように子どもに言う言葉でドキッとする人もいるかもしれません。
時間感覚は生きてきた年数が異なる大人と子どもでは違うと言われています。ジャネーの法則では「年齢比の逆比」と言われており、例えば10歳の子と40歳の親では、年齢比は1:4なので、時間の長さの感覚は4:1になるということです。ですから、「たった10分なんだからやってしまいなさい」と親が発言する10分は、その子にとっては40分の感覚ということです。
また、一部の例外を除き、一定年齢までの子どもには未来という概念がありません。もし未来の概念があれば、不安感を抱き、準備を始めるということをするはずですが、子どもの多くは目の前の現実のみを見て判断する傾向にあります。
裏メッセージが心に深く埋め込まれる
ですから、早くさせたいのであれば、間に合うような仕組みを考えるほうがいいのですが、つい声かけだけで何とかしようと思い「早くしなさい」と言ってしまうわけです。
「早くしなさい」「早くして!」と言われ続けた子どもはどうなるでしょうか。一つはその言葉をアラームとして認識することになります。つまり親が言わないと動かないということです。
もう一つは、「早くして」という言葉から「あなたは遅い」というメッセージだと受け取ります。「遅い=ダメ人間」と自己肯定感を失わせることもあります。
以上の5つの言葉を紹介しました。こうした日常の何気ない言葉には、「裏メッセージ」があり、その裏メッセージが心にアンカーとして深く埋め込まれることがあるので、注意を要します。
ただし、これらの言葉は絶対に使用してはいけない言葉ではなく、1回、2回使う程度はまったく影響ありません。問題となるのは、継続的に使われた場合です。ぜひ日常の振り返りとしてこの5つを検証してみてください。
東洋経済オンライン
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