受験生の朝食事情についてアンケート調査
本格的な受験シーズンが到来。受験生の子供がいる方は、健康管理や食事のサポートなどに気を遣うことも多いのではないでしょうか。そんな中、一般社団法人日本健康食育協会が、受験生の子供を持つ35歳以上60歳未満の母親を対象に「受験生の朝食」についてアンケート調査を実施。子供の朝食事情が垣間見えるその結果をご紹介します。
朝食を毎朝食べる受験生の割合は?
Q1:受験生の子供は朝食を摂りますか?
はじめに「受験生の子供は朝食を摂るか」を尋ねたところ、「毎朝摂る」が76.3%で多数派という結果に。以下「摂ったり摂らなかったり」(10.0%)、「平日は摂る」(8.8%)、「摂らない」(2.9%)、「土日など休日は摂る」(2.1%) と続きました。
Q2:受験生の子供の朝食の主食は何ですか?
次に、頻度は問わず「朝食を摂っている」と回答した方に「受験生の子供の朝食の主食は何か」尋ねました。最多となったのは、68.2%で「お米(ごはん)」。「パン(菓子パンを除く)」(48.8%)も高い数値となり、そのあとは「菓子パン」(23.2%)、「シリアル」(10.7%)という結果になりました。
Q3:受験前日・当日、受験生の子供に朝食を食べさせますか?
続いて全員に、「受験前日・当日、受験生の子供に朝食を食べさせるか」を質問。83.5%が「前日も当日も食べさせる」と回答し多数派となり、「本人に任せる」(8.1%)、「当日は食べさせる」(3.2%)という回答もありました。
Q4:受験前日・当日に食べると、集中力が高まる朝食があることを知っていますか?
最後に、「受験前日・当日に食べると、集中力が高まる朝食があることを知っているか」尋ねました。その結果半数以上が「知らない」(55.1%)と回答し、「献立まで知っている」(9.9%)は1割程度にとどまりました。
朝食のメリット&受験当日に食べてほしい朝食を専門家がアドバイス
一般社団法人 日本健康食育協会の代表理事・柏原 ゆきよ氏は、今回の調査結果について以下のように話します。
「今回の意識調査を見ると、毎朝朝食を摂る方が圧倒的に多くて安心しました。しかし、4人に1人くらいの方は、朝食習慣がないようです。さまざまな研究で、朝食習慣は成績との関係も大きいということがわかっているので、親御さんには、お子さんが朝食を摂りやすい環境を作ってあげていただきたいです。また、主食については、お米(ごはん)が一番多い結果でしたが、複数回答のため、頻度などははっきりしません。毎日ごはんを食べている方がどのくらいいるのか興味深いところです」(柏原 ゆきよ氏・以下同)
朝食を摂るメリットって?
朝食は摂った方がよいとはよく聞きますが、具体的にどのようなプラスの面があるのでしょうか。柏原氏が解説します。
空腹状態は集中力にマイナス
「私たちの体は、寝ている間にもエネルギーを消費しているため、目覚めたときにはエネルギー(糖)が枯渇した状態です。特に、脳はエネルギーの消費量が圧倒的に多い臓器なので、エネルギー切れの影響が大きいです。この状態では、思考力が落ち集中力も上がらないので、朝食でエネルギーをチャージし、働きやすい状態を作る必要があります。
脳は、おもに糖質をエネルギーとして使っているので、朝食には糖質が必要です。ただし、砂糖などの甘い糖質は、血糖値の変動が大きく不安定になるため、できるだけ避けましょう。血糖値の変動が大きいと、メンタルが不安定になりやすくなります。
朝食を摂るとエネルギー消費が活発になり、体温が上がって血液の循環もよくなるので、脳が活性化するだけではなく、腸の動きも活発になります。これを脳腸相関と言います。腸内環境が整うと、幸せホルモンと呼ばれる『セロトニン』の分泌が活性化することでメンタルが安定し、集中力が高まることがわかっています。
また、朝起きてから14~16時間経つと、セロトニンは睡眠ホルモン『メラトニン』を作り出します。メラトニンは、入眠をスムーズにし睡眠の質をよくします。睡眠時間や質は、学習効率にも影響すると言われていますので、朝食を摂っていないお子さんは朝食でエネルギーチャージし、集中力を高めるとよいでしょう」
咀嚼で集中力アップ
「咀嚼(そしゃく)は、頭頂部から胸までの筋肉を使う運動です。この運動により、脳内の血流がよくなり、脳機能はアップします。最近の研究では、よく噛むとその刺激で記憶力をつかさどる『海馬』が活性化し、それが注意力や集中力をつかさどる『前頭葉』にも伝わり、血流量を増やすことが明らかになっています。
また、咀嚼や歩行など一定のリズムを刻む反復運動をすると、セロトニンの分泌が高まります。セロトニンが増えると、気持ちが落ち着き集中力を高める、頭の回転をよくして直観力を上げるなど、脳を活発に働かせることができます。よく噛むことは、高いパフォーマンスの発揮に繋がるとも考えられています」
朝食に〝ごはん〟をすすめる理由とは
柏原氏によると、朝食にはごはんがよりおすすめとのこと。その理由を説明していただきました。
「朝、エネルギーが枯渇している状態で、吸収が早く血糖値を急上昇させる砂糖などを摂ると、血糖値が一気に上がり高血糖になります。高血糖を起こすと、血糖値を下げるために膵臓はインスリンをたくさん分泌しますが、その反動で低血糖を起こしてしまいます。低血糖状態では、糖が十分に脳に供給できずエネルギー切れになってしまい、集中力が出ません。
砂糖などの甘い糖質は、糖の分子が小さいため分解の必要がありません。そのため、吸収も早く、血糖値が乱高下し、すぐに枯渇してしまいます。一方、お米の糖質は、分子の大きいデンプンなので、消化吸収が緩やかに行われ、血糖値が乱高下しにくく、持続力があります。しかし、お米(ごはん)も早食いをすると血糖値が上がりやすくなるので、よく噛んで食べることが重要です。
また、セカンドミール効果* を意識して朝にお米(ごはん)を食べると、朝食後だけではなく昼食後、夕食後も血糖値が急上昇しにくく、安定します。血糖値が乱高下すると、ホルモンが乱れやすくなるためメンタルが不安定になり、太りやすくもなります。さらには、生活習慣病のリスクも高まるとも言われていますので、注意しましょう」
* セカンドミール効果とは、朝食(その日最初に摂る食事)が、次に摂った食事の後の血糖値にも影響を及ぼすという理論。1982年にカナダ・トロント大学のジェンキンス博士が発表した。
受験生の親必見!集中力を高める朝食とは
ごはんと味噌汁、おかずの揃った和朝食は、集中力を高める理想的な朝食だと柏原氏は言います。特に次の1~5を含む食事を意識するとよいそうです。
- 効率のよいエネルギー源であるお米を主食にする:脳の活性化、1日の血糖値の安定
- 体を温める食事:整腸、体温を上げる
- よく噛んで食べられるもの:脳の活性化、セロトニン増加
- トリプトファン*¹ とビタミンB6*² が同時に摂れるもの:セロトニン増加
- 食物繊維がしっかり摂れるもの:腸内環境改善、メンタルの安定
*¹ セロトニンの材料になるトリプトファンを多く含む食品は、米や雑穀類、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・豆乳など)、鶏卵、魚卵(タラコなど)、ナッツ類(アーモンド・クルミなど)。
*² セロトニンを作るときに必要となるビタミンB6を多く含む食品は、魚類(サケ・サンマ・イワシ・マグロ・カツオ・サバなど)や鶏肉など。
さらに具体的には、次のようなおかず、ごはん、みそ汁の3点がおすすめとのこと。「たとえば、雑穀入りのごはんを山盛り1杯と具沢山の味噌汁、魚や卵、納豆などタンパク質が摂れるおかずを1品の『一汁一菜』スタイルがおすすめです」
- おかず:卵 or 納豆 or 魚 など1品 (たんぱく源) でOK
- ごはん山盛り1杯:消化のよい白米 or 雑穀ごはん or 麦ごはん
- 野菜たっぷりみそ汁:具は3種類以上 (緑黄色野菜、根菜類、きのこ類)
朝食の効果をさらに高めるコツ
最後に、朝食の効果をさらに高めるためにおすすめの2つの行動を教えていただきました。
朝日を浴びる
「朝日を浴びましょう。朝起きて日光を浴びると、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が止まり、脳が覚醒します。それと同時に、セロトニンの分泌が始まり、視覚からの光刺激によって合成が促進されます。朝起きてからもメラトニンが分泌しているままだと、眠くなり、メンタルも不安定になります。そうならないためにも、朝日を浴びてメラトニンをリセットすることが重要です」
歩く
「歩くこともセロトニンを増やすリズム運動としてとても効果的です。朝食を摂った後にウォーキングして、受験に備えるとよいかもしれません」
朝食のメニューはさまざまですが、集中力を高めるにはオーソドックスな和朝食が向いているよう。子供の好みを尊重しつつ、朝食を準備する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
一般社団法人 日本健康食育協会 代表理事
柏原 ゆきよ
10万人以上の食サポートの経験から、日本人の体質とライフスタイルに着目し、お米(雑穀米)を主軸に「しっかり食べて太らないカラダづくり」を目指す独自のメソッドを確立。これまでボクシング世界チャンピオンをはじめとするトップアスリートや企業経営者、モデルなどへ食生活サポートやアドバイスを行い、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌など多数のメディアに出演。子供から高齢者、女優やトップアスリートなど幅広いクライアントへの結果の出るアドバイスに定評がある。
25年以上、健康ブランディングの専門家として社員研修やメニュー開発、大人向け食育セミナーの監修、上場企業や全国の地方自治体と健康プロジェクトを推進するなか、「健康食育マスター講座」を主宰し、健康食育の専門人材育成にも力を注いでいる。国内にとどまらずニューヨーク、台湾など海外でもセミナーや講演を開催、これまでに2,000回を超え、大きな反響を呼んでいる。
著書『お腹からやせる食べ方』(三笠書房)、『疲れない体を作る疲れない食事』(PHP研究所)などは、累計15万部を超える。
【調査概要】
調査期間:2023年1月12日
調査手法:インターネット調査
調査対象:35歳以上60歳未満の受験生の子供を持つ母親全国
有効回答者数:720人
調査機関:Freeasy
一般社団法人 日本健康食育協会 調べ
情報提供:一般社団法人 日本健康食育協会