在団中に、もっとも楽しくうれしかったことはどんなことでしたか？
朝月：花組では、私が組替えする直前の公演で同期みんなで宴会の幹事をしたこと。花乃（かの・まりあ さん）が組替えしてきていて、花組生え抜きメンバーもほとんど残っており、終演後はみんなで相談しながら衣裳などを手作りして…。本当に楽しく幹事をし、終わったときに「実は組替えをするんだ」とみんなに話したら大号泣。私ひとりで「今日は花組のみんなと過ごす最後の日だ」と思っていたから、みんなの想いがものすごく温かかったです。
雪組では、初めての全国ツアーで北海道に行ったときのこと。（音楽学校の）本科生のときも修学旅行で北海道に行ったんです。私はアイスクリームが大好きで、北海道の雪印パーラーの「パラゴン」というアイスクリームのジャンボパフェを食べるのが夢だったのですが、修学旅行で行ったときはそれが売り切れで泣きながら帰ったんですよ。それを雪組の全国ツアーのときにたぶん私が語ったんでしょうね、「みんなで食べに行きましょう」となりまして。凪様（彩凪 翔、あやなぎ・しょう さん）から下の98期まで集まってくれて、みんなでパラゴンを食べられたんです!! すごく大きいからみんなで分けて、写真も撮って。ひとりでは絶対に食べられないから、みんなが付き合ってくれて優しかったな。
（調べる）おお、これは大きい！
朝月：最後にすっごくカッコいい話があるんです。食べ終わって「幸せー♡」となり、みんなにお礼を言って支払いをしようとしたら、凪様が「あ、もうええで。みんな行こ、次の予定もあるやろ」って。知らないうちにスマートにお会計をしてくださっていたんです。
そしてもうひとつ思い出したことも披露させてください。一時期、公演の合間にクッキーばかり食べていたことがあったんです。しっかりごはんを食べちゃうと重くなってしまうから、ちょっとクッキーをつまんで。それを見ていた同期に「クッキーモンスターみたい」と言われて（笑）。そしたらすごくイラストが得意な1期上の天月 翼（あまつき・つばさ）さんが、そのときの公演の衣装を着せたクッキーモンスターを描いてくださり、その後も『CITY HUNTER』の香や『蒼穹の昴』の玲玲と、退団まで続けてくださったんです。それをずっとSNSのアイコンにしています。
11月4日から始まる『シェルブールの雨傘』。出演のお話をいただきたときの心境を教えてください。
朝月：本当に驚きました。セリフがなく音楽で構成されている映画はとても有名で、カトリーヌ・ドヌーヴさんが演じるジュヌヴィエーヴの色鮮やかな衣裳がどんどん変わっていくのが印象に残っています。それが心境の変化なのか成長の証なのか…、すごく素敵だなと思って観ていました。
出演が決まりもう一度映画を観なおしました。恋をしていた17歳の少女が最後は母になっていく、ひとりの女性の成長。激動の心境というか、大きな心の揺れを感じる時間だなということを、演じることになったときに感じました。なによりミシェル・ルグランさんの繊細で美しいメロディーがずっと流れているので、それを自分が歌うとなり本当に難しくて。どうやってこのメロディに自分の声と気持ちを乗せて役として存在したらいいのか、どうしたらお客様にこの物語が持つメッセージをお伝えすることができるか…と、大きな壁がそそり立っています。
年齢を重ねてからの演じ方や歌い方の違いもあるのでしょうか？
朝月：そうですね。母になることは女性にとって大きな変化だと思うんです。あと、京本大我さん演じるギイと離れてお互いに別の人生を歩み、その後もう一度ふたりが会った意味やその存在の仕方なども本当に難しい。お稽古でつかんでいきたいなと思っています。
OGでは春野寿美礼（はるの・すみれ）さんが出演されていますね。
朝月：ファン時代にずっと拝見していた方で、初めてご挨拶させていただきました。「は、は、はるのさん…『明智小五郎の事件簿－黒蜥蜴－』とかいろいろ拝見しておりました…」みたいなただのファンになってしまいました（笑）。自分が客席から観ていたときに舞台に立たれていた花組のトップスターの春野さんとご一緒させていただけるのは、とても光栄です。近くで学べる機会をいただけてすごくありがたいと思っています。頑張ります！
もうすぐ開幕する『シェルブールの雨傘』。大人っぽさも愛らしさも、朝月さんならきっと素敵に表現されることでしょう。次回は朝月さんのパーソナルな部分に迫ります。お楽しみに！
撮影／黒石あみ 構成・文／淡路裕子
僕らの恋はシェルブールにあった－
『シェルブールの雨傘』
▶️松竹サイト
俳優
朝月希和
あさづき・きわ／1月6日生まれ、東京都出身。元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。2010年に96期生として宝塚歌劇団に入団。月組大劇場公演『THE SCARLET PIMPERNEL』で初舞台を踏み、花組に配属。13年『愛と革命の詩―アンドレア・シェニエ―』で新人公演初ヒロイン。17年『MY HERO』で東上公演ダブルヒロインを務めた後、雪組に組替え。19年に花組に組替えし、翌年『マスカレード・ホテル』で東上公演単独初ヒロインに。再度雪組に組替えとなり、21年雪組トップ娘役に就任。22年『蒼穹の昴』にて宝塚歌劇団を退団。
▶️Inatagram：@asazuki_kiwa
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