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LIFESTYLE インタビュー

2023.10.31

【連載/こじらせ男のひとりごと#10】ジャルジャル福徳さん「人気が出るほどに不機嫌だった」こじらせ期を明かす

 

コント師として頂点に上りつめたと思えば、最近は小説家としても才能を発揮。硬派すぎるがゆえのこじらせ期を経て、ようやくたどり着いた今の心境は。「こじらせてる」大人男子の連載10人目は、ジャルジャル福徳さんが登場です。

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写真集に抵抗し、取材ではウソついて。とんがった末にたどり着いた「コント師でいく」という選択

芸人でありながら、アイドル的な人気を集めていた20代。それがイヤで、こじらせて、とんがって、キツい思いをして、傷ついて…。「コントづくり一本でいく」と心を決めるまでを振り返ります。

語り/福徳秀介(ジャルジャル)

小学1年のとき、笑顔を封印しました

アメリカで育った後、帰国子女として兵庫県の小学校に入りました。1年生で集まってクラスの集合写真を撮るとき、アメリカで身についた大きなスマイルで自然にポーズを構えたら…。大人から「笑わんでいいから、そこの子、普通にして」と言われ、僕はそこから笑顔を封印し、こじらせ期間に入りました。

それだけじゃなく、人との関わり方がわからなくなって、学校にはとけこめない。クラスメイトと遊べない。シンガポール育ちで同じ帰国子女のクラスメイトが、唯一の友達でした。でも、孤独感はありませんでした。根拠はないけど、「これでいい」と思っていたので。

中学になってからも、友達はクラスでひとりか多くてもふたり。悪い遊びも派手な格好もせず、ちゃんと校則を守って、ちゃんと制服を着て。だって、そのほうが下手にイキがってるより「かっこいい」。クラストップの人気者でもないし、かといってヤンキーでもない。ちょっとだけこじらせながら、まじめにやっているのが、いちばんいいんです。

よく言えば、ちょっとクール。それにあの当時はサッカー部で日焼けもしていて、髪もサラサラ。まあまあモテました。でも、女子に共通していた僕への評判は「しゃべってくれへん」だったらしい。ラブレターを渡したいと言う女子にも、「恥ずかしいから、ええわ」と断ったくらい。あれだけは、ほんまに後悔してます。

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プロポーズの言葉が言えず、LINEで「結婚してください」

高校になって彼女ができてからも、大人になってからも、恥ずかしすぎて自分から「好き」と言ったことはありません。食事に行って、デートして、そしたら言わんでもわかるでしょ。

でも、さすがにプロポーズだけはちゃんと言おうと決めて、指輪を用意して、レストランを予約して。「結婚してください」を何度も頭の中で繰り返して。でも、やっぱり言えませんでした。レストランで向かい合ったまま、相手にLINEでプロポーズの言葉を送信。返事は「いいけど」でした。

なれそめですか? 信じてもらえないかもしれないけど、「会った瞬間、この人と結婚するだろう」と思って、そのとおりになりました。ひと目惚れとも違う、「うわ、出会ってしまった」という感じ。あまりにも確信的で怖かったので、しばらく会わないように避けていたくらいです。そこがまた、僕のこじらせがちなところなんですけど。

アイドル的な扱いに不機嫌だった毎日

中学のとき、派手さはなくてもまじめに制服を着て通っていた自分を「かっこいい」と思っていたように、いつも同じようなTシャツと短パンで、地道にコントをつくり続ける今の自分は、けっこう好きです。20代に憧れていた「コント師」の姿に、近づきつつある実感もあります。

でもそれまで、特に20代前半は、芸人でありながらアイドルみたいな扱いをされ、それがイヤでイヤで、めっちゃ不機嫌でした。舞台に出て「かわいい!」って黄色い声援が飛んでくれば、コントがやりづらい。写真集なんてアイドルでもないのに恥ずかしい。抵抗しまくったけど、無理やり説得されてのぞんだ写真集の撮影では、ブスッとした表情ばかり。内心、ブチ切れてました。その上、アイドル的な答えを期待されるインタビューでは、ウソばっかり話して。むっちゃとんがってたんです。

ただ、その当時は忙しすぎて、次のことを考える余裕がなかったのも事実です。4か月ぶりにもらった休みに、友達と淡路島に行く計画を立てたものの、前日の夕方に「明日ロケが入った」という理由で、休みがなくなったこともありました。テレビ局のトイレで泣きながら友達に電話で謝って、なんとか気を取り直して仕事に向かったものの、丸1日のロケがオンエアではたった3分。それを見て、また泣きました。

こじらせて、とんがって、キツい思いをして、傷ついて。そこからやがて、バラエティもレポーターもひな壇のトークもやらず、「コントで頑張ろう」という思いにつながった。今思えば、いい経験です。イラっとすること、ムっとすること、クスっと笑えること、ジャルジャルっぽいと言われるコントのベースにもなってます。そして小説を書くこともネタづくりと同じ感覚であり、息抜きでもあります。書くのはほとんどが移動中のスマホで、あとは劇場の合間に喫茶店で。すらすら進むこともあるけど、ゆきづまるとパタっと止まってしばらく進まなくなるのが僕の悪いところです。

――さて、めでたく妻となった女性には、さすがにその後「好き」は何度か言いました。でもいまだに、相手が僕の知らない時間、何をやっているのか、干渉もしないし行動が別々でも大丈夫。一緒に何か集まりや行事に参加するとかもありません。少し変わっているけど、そういう関係が心地いいんです。(おわり)

芸人

福徳秀介

ふくとく しゅうすけ/1983年生まれ、兵庫県出身。高校のラグビー部で一緒だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。連続13回目の挑戦となった「キングオブコント2020」で優勝。2020年9月に結婚。単独の活動として、絵本作品『まくらのまーくん』『なかよしっぱな』、小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を発表。最新作は青春短編小説集『しっぽの殻破り』(2023年11月1日発売)。
YouTube ジャルジャルタワー https://www.youtube.com/channel/UChwgNUWPM-ksOP3BbfQHS5Q

短編小説『しっぽの殻破り』/福徳秀介著

左/通常盤、右/限定盤。
浪人生の心の機微を描いた書き下ろしの表題作『しっぽの殻破り』のほか、読売中高生新聞で連載した作品を中心に24話を収録。青春時代の福徳さんの「こじらせ」の片鱗がちらほら感じられる、ほろ苦くて、愛おしいストーリーばかり。と同時に、多彩な才能と文芸の名手ぶりをたっぷりと感じられる1冊になっている。2023年11月1日発売。
※通常盤・限定盤それぞれのカバー裏に短編小説を収録 
※限定版は楽天ブックス・セブンネット・hontoにてお買い求めいただけます。1650円(税込)小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389139

 


撮影/高木亜麗
取材・文/南 ゆかり

連載:こじらせ男のひとりごと

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