シャンパンに纏わる私のラブストーリー
ドマーニ読者のみなさま、いかがお過ごしかしら?すっかり涼しくなって秋めいてきたけど、秋になると思い出すのは「去年のハロウィン仮装」と「子供の頃、祖父の山で採った松茸」と「紅葉の京都で出会ったアメリカ人のジョージとの恋」。特にジョージとの恋は切なかったわ。今回は、私のラブストーリーをシャンパンにのせてお届けするわね。興味がないなんて言わないで!シャンパンの勉強にはなるはずよ♡
スッキリな味わいにあとを引くアフター「KRUG グランド キュヴェ」
紅葉が綺麗な秋中に京都で出会ったジョージ。出会って数か月デートを重ねてはみたんだけど、仕事の関係でアメリカに帰国することになったの。彼と最後に行った2人のお気に入りフレンチビストロで、彼がセレクトしたのは「KRUG グランド キュヴェ」だったな。まだ若かった私に、彼はKRUGの歴史を細かく語ってくれたのよね。
「このシャンパンはね、クリュッグを代表するシャンパーニュで、6年から10年に渡る収穫年の異なる120種類以上のワインをブレンドした、力強さと複雑さ、豊かさと清々しさのバランスが素晴らしいシャンパンなんだよ」って。それを聞いた私はプロポーズされたのかと思ったわ。だって、歳月をかけて異なる種類のワインをブレンドするシャンパンだなんて、まるで、ふたりで時間をかけてさまざまな思い出を重ね、ふたりにしか出せない味を作り上げていこうって意味に聞こえちゃってね。KRUG グランド キュヴェの味もちょっとナッティーなフレーバーにコーヒーのような香ばしさがあって大人の味。さらにクリーミーで繊細なバブルにはうっとりしてしまったわ。フルーティーな味わいはスッキリなのに余韻が続く感じ。そう、まるで私とジョージとの恋愛だったの。別れはスッキリ。でも思い出があとを引いて、なかなか次の恋愛に進めなかったわ。
アペロティフにはピッタリな軽めの「Veuve Cliquot イエローラベル」
ジョージと別れた後、まるで未亡人のような気持ちに陥ってしまった私を救ってくれたのは、年下のマイケルだったわ。若いマイケルとは毎週末よくパーティーに繰り出しては、誕生日だったから、昇進したから、時には失恋の景気付けになんて理由をつけては「Veuve Cliquot(ヴーヴ・クリコ)」で乾杯ばかりしていたのよね。彼のお気に入りはイエローラベルで、デザインも彼好みだったみたい。
ヴーヴ・クリコと言えば、未亡人のマダム・クリコが一念発起し築き上げたシャンパーニュ。ジョージと別れたばかりだったし、当時の私と被ったのよね。クリアーなボディに爽やかな口当たり、少し辛口の味わいにフルーティーなフレーバーで、アペリティフにぴったりのシャンパン。ディナーの前に立ち寄ったオイスターバーや、イタリアンバールで軽く一杯。とっても軽い飲み口でフルーティーだからお魚や新鮮な野菜にとってもよく合って、ついつい愛を語り合ったりしたものよ。でもね、30歳を目前にした私は、ヴーヴ・クリコを飲むごとに未亡人のマダム・クリコのような仕事に対する想いや心意気がどんどん体内に吸収されていったのよね。彼女のように家族や会社の従業員を守るために、とっても力強くビジネスを推進していきたいと思うようになったの。マイケルとの恋ももちろん楽しかったんだけど、マダム・クリコのように私はビジネスウーマン(え?ウーマン!?)として仕事を選び、社会で戦って行きたいなんて思ったのよね…。
何にでも合う八方美人な「MOËT & CHANDON アンペリアル」
私が新しいフィールドでキャリアを築き始めた頃に出会ったのが同い年のユウイチロウだったの。同い年ってこともあってか共通点も多く、SPEEDの解散の話なんかで盛り上がったり。2月の彼の誕生日には行きつけのイタリアンに行って「MOËT & CHANDON」で乾杯もしたものよ。
「モエのアンペリアルは、複雑な味で何にでも合うんですよ。青リンゴや洋ナシのようなフルーティーさもあるけど、ちゃんと芳ばしいブリオッシュのような香りも感じれて、瑞々しい中に凛とした力強さもある。それに合わせる料理によって際立つ味が変化する、前菜からデザートまでどんな料理にもマッチするんです」ってソムリエが説明してくれた時には、普段おとなしいのに「何にでも合うなんて、八方美人なシャンパンだね」なんて恥ずかしそうに笑った彼を今でも覚えてるわ。前菜のドライトマトやチーズ、主菜の白味魚のフリットやパスタ、デザートのティラミスにまでシックリくる全能な味がお気にめしたのか「来年もモエでお祝いして欲しいな」なんてほろ酔いで甘えてきたユウイチロウだったけど、八方美人だったのは彼の方だったわ。みんなにいい顔をしまくって、浮気癖があったなんてね。モエのアンペリアルは歴史も実績もあって、世界で最も愛されてるシャンパンと呼ばれているけど、ゲイ能界のモエには到底なれない彼だったわ。
そっと寄り添う繊細な「Ruinart ブラン・ド・ブラン」
そんな傷心の気持ちを和らげてくれたのがグッと年上のMr. APPLE だったの。以前から麻布のバーでよく顔を合わせてはいたものの、会釈程度だったのが、隣の席になった夜から少しずつお互いの話をするように…。時が過ぎ私のお誕生日には「お祝いにはアレだね」なんて言いながらシャンパンを頼んでくれたの。
目の前に出されたのは見たこともないボトル。それが「Ruinart ブラン・ド・ブラン」と初めての出会いだったわ。「シャルドネが好きならこのシャンパンが口に合うと思ってね。シャルドネだけで作られて、シャンパーニュの宝石とも呼ばれている1本なんだよ。シャンパーニュ最古のメゾンのルイナールはね、ナポレオン戦争後のウィーン会議でも愛飲されて、「シャンパーニュのように才気は泡立ってはじけ」なんて名言も生まれたんだよ」と語ってくれたMr. APPLE。少し口に含んだだけで一気に広がるバブルの軽やかさ。ローストされたアーモンドのような深い香りが鼻から抜ける感じ。一口目に少し感じるビターな味わいは癖になり、すいすいと飲めるライトな口当たりなのに、とっても繊細な後味でお料理にそっと寄り添う感じ。「グラスに注いでも細かく長く続く泡立ちは、シャンパンのパールとも言われているんだよ。細かい泡と泡がぶつかってパンと弾けるのにまた次から次と新しい泡が下から上がってくるんだよ」って。「これからの2人に乾杯だね」なんて…。
その後の私とMr. APPLE がどうなったか!?なんて誰も気にならないはずだから教えてあげないわよ♡でもね、シャンパンって銘柄やメゾンごとにそれぞれストーリーがあって、知れば知るほど奥深く、味わう歴史の重みみたいなものがあるの。そして、開けたボトルの数ほどに忘れられない恋愛のストーリーがある。アラフォー女子のお作法として、語れる知識があればさらにおいしく味わえるはず。Bitter-Sweetな思い出を片手にシャンパンを嗜める良い女にみんなもなりなさいよ。チャンチャン(シャンパン)!
Keisui Suzuki
アラフォー独身GAY。とある上陸系バーガーレストランのPRマーケを経て、フリーランスPR・SNSディレクターの傍、こうしてエディター業もこなし、今や年間100日以上は旅をしているデジタルノマド。独G(自)の目線で物事をご紹介していきます。keisui