【目次】
・チャイルドシートの重要性を理解しよう
・着用義務について
・違反するとどうなる?
・こんな場合はどうする?
チャイルドシートの重要性を理解しよう
チャイルドシートは、万が一のときに「子どもの命を守る」ための重要なツールです。使用しない場合には、どんな危険があるのでしょうか?正しい付け方や乗せ方を確認しましょう。
使用しない場合の危険性とは
車に乗っている間はさまざまな危険にさらされており、急ブレーキや衝突をするようなことがあれば、体に大きな負担がかかります。場合によっては、車外に放り出されてしまう危険性があることも。それを防ぐのがシートベルトです。しかし、大人の体格に合わせて作られているため、体の小さい子どもには適していません。そのかわり、子どもの体格に合わせたシートベルトの役割をしてくれるものが、チャイルドシートなのです。
警視庁が発表しているデータによれば、チャイルドシートを使用しないで子どもを車に乗せて事故にあった場合、チャイルドシートを適正に使用している場合に比べて、致死率が11.1倍にもなることが分かっています。万が一の事故のときにケガで済むのか、命までなくすのかは、チャイルドシートによって変わるといっても過言ではありません。
正しい付け方と乗せ方
チャイルドシートの取り付け方は製品によって異なります。必ず取り扱い説明書を確認のうえ、正しく取り付けましょう。子どもは生まれてから1歳頃までは歩行もままならず、体の基礎ができあがっていません。そのため、衝突時の衝撃を減少させるように、チャイルドシートは進行方向に対して後ろ向きに装着します。前向きにする時期は、子どもが1歳(体重10Kg前後)が目安と言われていますが、製品によって基づく基準が違うため、必ず付属の取扱説明書やメーカーに確認しましょう。
なお、チャイルドシートは後部座席に設置するのが基本です。助手席は事故の際エアバッグが作動しますが、エアバッグの強い衝撃が加わると子どもがケガをする可能性があります。また、子どもを乗せるときには、正しい姿勢で乗せ、ベルトを正しく固定することが大切です。ベルトが外れたりしないよう、成長に合わせて長さを調節しながら使用しましょう。
安全基準マークについて
数多くの製品が販売されているチャイルドシートの中から、使用する製品を選ぶ際は「安全基準マーク」をチェックするのがポイントです。
現在、国土交通省の安全基準を満たしたチャイルドシートには「E」マークが付けられています。2006年10月1日から施行された「ECE R44/04」という安全基準で、2012年7月以降は、この基準で認可されたもの以外は販売することができなくなりました。中古やおさがりなどを使う場合、古い安全基準にしか対応できていないケースもあるため注意が必要です。また、安全性が強化された新安全基準「ECE R129」に適合したモデルの販売も始まっています。
着用義務について
チャイルドシートは、道路交通法によって着用義務が定められています。着用義務に関して記載された条文の詳細について紹介しましょう。
着用義務はいつからいつまで?
道路交通法第71条3の第3項によると、チャイルドシートの着用については以下のように定められています。
自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ。)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
(出典:道路交通法)
チャイルドシートは、以前は必須ではありませんでしたが、2000年の道路交通法改正により義務化されました。ここでの「幼児」とは6歳未満の子どもを指します。いつからという記載はないため、生まれてから6歳になるまでは、チャイルドシートを使用しなければならないと覚えておきましょう。
新生児も着用義務がある
前述のとおり、着用義務が決められているのは6歳未満です。つまり、新生児もチャイルドシートを着用する必要があります。赤ちゃんが生まれて退院時に車を使用するなら、そのときに初めてチャイルドシートを使うことになります。退院後に用意すると間に合わないため、早めに準備しておくと安心です。
新生児を乗せられるチャイルドシートは「ベビーシート」と呼ばれ、進行方向に対して後ろ向きに装着できるようになっています。ベビーシートは1歳頃までが対象ですが、長期間使用できるチャイルドシートとの兼用タイプもあるため、状況に合わせて使用しましょう。
身長140cm未満なら着用を
では、法律で着用義務が定められていない6歳以上の子どもは、チャイルドシートが不要なのでしょうか?これについては、法律での定めはありませんが、身長が140cm未満の場合は、チャイルドシートを使用したほうがよいといわれています。
車のシートベルトは身長140cm以上の大人の体格が基準となっています。140cm未満の子どもが使用すると、事故の際に肩ベルトで首が締まったり、腰ベルトでお腹が圧迫されたりする可能性があり、思わぬケガを負うかもしれません。身長が140cmになるまでは、適切な位置でシートベルトを着用できるよう、3~4歳頃から使用できるジュニアシートを使用すると安心です。
違反するとどうなる?
法律で定められている義務を違反した場合、何らかのペナルティが課せられることがあります。では、チャイルドシートの着用義務を果たさなかった場合、どうなるのでしょうか?
罰則や罰金について
チャイルドシートの着用義務というのは、子どもを乗せている車の運転手が負うものです。そのため、チャイルドシートを使用せずに子どもを乗せた場合には、運転手にペナルティが課せられます。違反があると、交通違反の点数1点が加算されるルールです。それ以外の罰則や罰金などはありません。
義務が免除されるケースもある
基本的に6歳未満の子どもはチャイルドシートを着用する義務がありますが、場合によっては免除が適用されます。道路交通法第71条3の第3項にも、疾病などによるケースは免除されると記載がありますが、そのほかの免除要件は、道路交通法施行令第26条の3の2の3項で定められた以下の項目です。
一 その構造上幼児用補助装置を固定して用いることができない座席において幼児を乗車させるとき(当該座席以外の座席において当該幼児に幼児用補助装置を使用させることができる場合を除く。)。
二 運転者席以外の座席の数以上の数の者を乗車させるため乗車させる幼児の数に等しい数の幼児用補助装置のすべてを固定して用いることができない場合において、当該固定して用いることができない幼児用補助装置の数の幼児を乗車させるとき(法第五十七条第一項本文の規定による乗車人員の制限を超えない場合に限る。)。
三 負傷又は障害のため幼児用補助装置を使用させることが療養上又は健康保持上適当でない幼児を乗車させるとき。
四 著しく肥満していることその他の身体の状態により適切に幼児用補助装置を使用させることができない幼児を乗車させるとき。
五 運転者以外の者が授乳その他の日常生活上の世話(幼児用補助装置を使用させたままでは行うことができないものに限る。)を行つている幼児を乗車させるとき。
六 道路運送法第三条第一号に掲げる一般旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者が当該事業に係る旅客である幼児を乗車させるとき。
七 道路運送法第七十八条第二号又は第三号に掲げる場合に該当して人の運送の用に供される自動車(特定の者の需要に応じて運送の用に供されるものを除く。)の運転者が当該運送のため幼児を乗車させるとき。
八 応急の救護のため医療機関、官公署その他の場所へ緊急に搬送する必要がある幼児を当該搬送のため乗車させるとき。
(運転者以外の者を乗車させて大型自動二輪車等を運転することができる者)
(出典:道路交通法施行令)
つまり、子どもの病気やケガでシートベルトをするのが難しい場合や、定員内の乗車にもかかわらず、チャイルドシートを設置することで全員が乗れなくなってしまうケースなどは免除されます。
また、運転手以外の人が授乳やおむつ交換などの世話をする際も免除されますが、その際はできるだけ一時停車して行ったほうが安全です。よく「チャイルドシートに乗せると泣いてしまうから」という理由で抱っこしている人がいますが、これは免除の要件にはなりません。
こんな場合はどうする?
自分の車に子どもを乗せる際には、子どもに合わせたチャイルドシートを用意しておけばOKです。では、友人やタクシーなど、別の人の車に子どもを乗せるときには、どうすればよいのでしょうか?
友人の車に乗せる場合
友人の車に子どもを乗せる場合も、チャイルドシートの着用義務があります。もし使用しなかった場合、子どもの親ではなく、その車を運転していた運転手が違反したことになってしまうため、注意が必要です。また、レンタカーなどを借りて運転する場合にも、免除にはなりません。自分の車以外は免除されると勘違いしやすいケースのため注意しましょう。
タクシーに乗るとき
シートベルトの着用義務の免除要件には、以下の項目が含まれています。
六 道路運送法第三条第一号に掲げる一般旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者が当該事業に係る旅客である幼児を乗車させるとき。
(出典:道路交通法施行令)
つまり、タクシーやバスに乗る場合には、チャイルドシートの着用義務はありません。違反にはなりませんが、親としては子どもの安全が気になります。タクシー会社によっては、チャイルドシートを借りられるケースもあるため、予定が分かっている場合には事前に問い合わせをしてみましょう。最近は、幼児がシートベルトを使用できるように、長さを調節するグッズも販売されています。
小さな赤ちゃん用には、ハンドルが付いていてカゴのように持ち運べるタイプや、対応しているベビーカーにそのまま取り付けられるベビーシートもあります。大切な赤ちゃんの命を守れるよう、十分な準備を整えることが大切です。
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